甘い欧州旅行

      インキュバス
第八章「牡夢魔
〜エーゲ海に捧いじゃって…

 

(2)

「ん…はぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜…あ……あ…え………?」

 一際長く尾を引く熱い吐息を漏らしつつ、目覚めた美恵さん。
              
まさ
 とりあえず驚きの方が勝ったか、慌てて振り返って、

「え…?ああっ!?…な…なに?…も…基…明…く…ん?…」

「んん…っ…あ…おきた?」

「…や…あぁ…んあっ…!お…起きた?…じゃないわよ…な…なによこれっ…んあっ」

 抗議の声を上げつつも、ここへきていきなり身体の感覚が繋がったのだろう、深々と

差し込まれた俺のものを感じ、狂おしく身を捩る美恵さん。

「んんあぁ…や…やだ…な…なにこれ……すごい……かんじちゃ…あぁぁ〜っ!」

 うん…まあそれはそうだろう……身体はすっかり出来上がってたからな……

 などと思いつつ、さらに深く腰を埋めようとした俺に、

「んはぁっ!…ちょ…基明く…だ…だめっ……あ…明日早い……って……」

 ん…?ああ、そーいや、なんか朝早くから船乗ってエーゲ海の島巡りとかするって言っ

てたな…

 でも…それならなおさら好都合……。どーせギリシアなんて…こんなんだし……。

 俺は期待外れだった今日の観光を思い出しつつ、

「ん…?大丈夫、大丈夫☆だったら船の中でいっぱい寝てればいーじゃん」

「や…やぁよ…あ…あたしはちゃんと観光したい…あっ…や…あああ〜〜っ」

 なにやら文句を言いつつ、逃げようとする美恵さんだが、寝起きであることに加え、

込み上げる快感にうまく身体が動かないようで、抱きすくめる俺の手から逃れることは

できない。

 …と、だが俺も、そんなに余裕を持てるほどではなかった。

「ん…くっ……」

 きゅっと閉じられたお尻にやわらかく挟まれる感覚はもちろん、美恵さんの目覚めと

同時に、彼女の中は活発に収縮しだし、ぎゅうぎゅうと俺を締め付け始めたからだ。

 …うあ……こ、このままじゃやばいな……

「んぅ…っ」

 とにもかくにも、動きのままならないこの体勢では不利だと悟り、俺は体重を掛けて、

そのまま美恵さんをうつぶせにして重なっていき……

「んあ…っ?ちょ…も…基明…くんっ……あぁっ…」

「んん…っ!」

 一瞬、外に全部出してしまうくらい腰を引き込んで、再び打ち付けるように沈み込ま

せた。

「ああっ!! んああぁぁぅぅぅぅ〜〜っ!」

 背中に伸し掛かる俺がいるため、身を起こせず、首だけをのけ反らせて、両手に握

ったシーツをかきむしる美恵さん。

 絶叫に近い、甘い歓喜の声が室内に響き渡る。

 また、すぐさま揺さぶり始めた俺の腰の動きに、

「んぁぁっ!あはぁっ!!や…いやぁぁっ……なにこれっ!す…すご…すごい気持ちい

いっ!」

 俺の身体の下、陸に打ち上げられた魚のように、押さえ付けられ動けぬ身体をびくび

くと震わせ身悶える美恵さん。

 そして、俺はそんな美恵さんの反応をひとしきり楽しんだ後、

「んっ…」

 前のめりに両手をベッドについて、半身を浮かせ、さらに激しく腰を打ち付ける。

「や…やだ…あ…ああああぁぁぁ〜〜っ!ど…どうしよ…あ…あたし…あ…あ…あああ

ああああああ〜〜!」

 歓喜と動揺入り交じる声で泣き叫ぶ美恵さん。また、背中が軽くなったことで、肘で上

半身を起こし、ほふく前進をするように前に逃れようとする。

 が…むろん、そんなものを許すはずもなく、

 俺は、いったん打ち付ける動きを止め、両手で彼女の腰を固定させると、

 ぐぐぅ…っ!

 さらに深いところへ沈み込ませる。

「い…いやっ……あはぅっ…!………っっ!」

 両目を見開き、ひと度声をとぎらせ……

「…んっ、んあああああ〜〜っ!!」

 次いであられもない絶叫を上げる美恵さん。

 凄まじい感覚に両手の力も抜けてしまったようで、無残にも再びベッドに突っ伏して

しまう。

「あ…はぁ…ああぁ〜〜!や…やだ…も…基明…くん…お願…い…」

 何のお願いかは知らないが(笑)

 うるうると瞳潤ませ、苦悶の表情で振り返る美恵さんに、俺は優しく微笑み。

 つつぅ〜〜☆

 脇腹に伸ばした両手の指先を立て、引き締まったウエストへとなぞるように引き戻す。

「や…ひぁぁっ!」

 ぞわぞわ〜っ、とした感覚が全身に駆け巡ったのだろう。

「……んはぁぁぁぁぁぁぁ…………」

 ぶるぶるっと身体を震わせのけぞり…次いで、へなへな〜っと崩れ落ちる美恵さん。

 そしてもちろん、一瞬感覚が抜けたその虚を突いて、俺はすかさず深く腰を沈み込ま

せる。

「ひぁっ…! あっ…あっ…あっ…あぁあああああ〜〜!」

 またさらに、俺は美恵さんの背に腹這いに密着して押さえ込み、『の』の字を描くよう

に腰を回転させ、そのまま中を掻き回す。

「あはぁぁぁ〜〜! い…いやっ…だ…だめっ! も…もうあたし…さっきからイキっぱ

なしで……あ…あ…ああ……またっ!」

 へ…?……あ。そーだったんだ。

 でも…男と違ってはっきりとした形にならないから、こう激しくしてるとよくわからないん

だよな…。

 そんなことを思いつつ、だがむろん動きを止めるわけでもなく、密着させた腰をさらに

ぐいぐいと押し付ける俺。

 むにゅむにゅとした美恵さんのお尻の感触が俺の股間回りに伝わり、たまらない感覚。

(ん…くぅぅぅ〜〜☆)

 そんな至極満悦に浸る俺の下で、

「くっ…はぁぁぁっ!あはぁっ!はあはあ…あ…あ…あ………や…やぁっ…

も…もうだめ…あ…はぁぁぁ…んっ

 絶頂に達しつつ、だが安堵という麓に降りることなく、美恵さんはさらに幾度目かの快

楽の高みへ登りつめていく。

 そしてまた、俺もそんな彼女の過敏な反応に急速に高まっていく。

 …もっと深く…もっと奥へ……

 そんな思いが、考えるより先に身体を動かし、さらなる欲求を満たすべく体勢に移って

いった。

 身を起こし、美恵さんを横向きにさせ……

 二人の両足を互い違いに交差させるように組み替え……、

 そう…いわゆる、二つの松葉を交わらせ引きちぎるようにする、あの格好である。

「あ…え…?や…やぁ…これ…んぐっ…!す…すごい奥に……んあぁっ!!」

 苦悶の表情あらわに、激しく身悶える美恵さんの言葉通り、

 二人の股間と股間の間には何も隔てるものがなくなり、俺はこれ以上ない美恵さんの

奥深くへと沈み込む。

 ずず…っ!

「くぅっ!」

 上げた声は俺のものだった。熱く柔らかいものに締め付けられる感触が腰を中心に

全身に広がり、

「んあぁっ…」

 その想像を絶する快感に絶え切れず、仰向けに倒れ込む俺。

 体勢ゆえ、激しく動くことはままならなくなったが、それを差し引いても、先程までの

快感を遥かに上回るものであった。

「んぁっ!……っ…!…かはぁっ……ひぃ…っ!」

 と、これは美恵さん。両目を見開き口をぱくぱくさせて、もはや声も満足に出せない状

態である。

 また、そんな荒く乱れつく呼気と共に、彼女の中はビクビクと激しく収縮し、俺のもの

に強烈な締め付けを与える。

「……んあっ!」

 苦悶の呻きを上げる俺。

 く…ぅ…ぁ……。こ、これは……ま…まじで…き…効く…ぅ………

「んあ…は…ぁ…す…すご……すごい…よ……もとあ…くん……あ…あたし…ほんとに

……も…もうだめ…ぇ……い……い…いく……」

 か細く…だが歓喜の色濃い美恵さんの声が足元のほうから聞こえてくる。

 …え…?あ………よ…よし……

 遠ざかる意識を引き止め、俺は寝かしてた身体を再び起こし、

「んっ!」

 肩にぐいっと美恵さんの片足を掲げ、これ以上ないと思われたところから、さらに奥深

くへと捩じ込んでいく。

「ひぃ…あぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁ〜〜っ!!」

 高く…まさに引きちぎられんばかりの絶叫を響かせ、最上部位での絶頂を迎える美恵

さん。

「ひ…ぃ…あ…あ……あ…………あ……

 また俺は、ぐったりと、糸の切れた人形のように動かなくなってしまった彼女の身体を

そのまま貫き続け……

「んくぅ…っ!」

 ついに、熱き欲望の塊を吐き出した。

         

 かくて……

 熱く激しいアテネの夜は……

 だが未だ二人に安堵を許さなかった。

 そう……ひとたびこの凄まじいまでの感覚を味わってしまった俺たちは、その後も火照

る身体を鎮めることはできず……

「ああぁぁぁ……☆」

 ややもしないうちに互いの身体を求め合い、また幾度も、何かに取り憑かれたように

交わり続けた…………。

 ついには、熱き欲情の果てに肉体が限界を迎えるまで……。

 やがて…

「………ん……あむ………」

 閉じかけた俺の瞼に最後に映ったのは、白み始めた窓の外…神々しい朝日に照らさ

れたアテネの風景だった。

 いや……なんか、神話の都にて、ちょっとアレなスゴい夜を過ごしてしまったよーな気

がするが……

 まあ…ギリシアの神様はみんなえっちだったって話だし、かの至高神ゼウスも好色絶

倫だったって聞くし……これはこれで相応しいといえば相応しいのではないかと………。

 ……そんなばちあたりなことを考えつつ、

「……………………ぐぅ……。」

 俺はわずかな眠りに落ちていった。

   

 そして、数時間後、

 ざぁぁぁ…ん。
 
みなも
 水面を駆る波音が耳に届く……。

「………………。」

 え〜、どこをどーして何をどーやってその時間まで過ごしたのかは、まったく分からな

いのだが……。

 ともかく、絶対的な睡眠不足で、もーろーとなったまま、俺はいつのまにか船上の人と

なっていた。

 本日の行程…サロニコス湾の1日クルーズである。

「………。」   

 冬晴れの空は青くどこまでも澄みわたり、
                    
みなも
 波頭白く輝く葡萄色のエーゲの水面。

 まさに青の基調で美しい色彩にまとめあげられた風景の中、

 イドラ・エギナ・ポロス………真っ白な壁を連ねるたたずまいを乗せた島々が浮かぶ。

 そう…俺の望んでいたギリシアの真の姿がそこにあった。

 だがしかし………

 ぼーっ。

 こなたより彼方へ…海上に響く船の汽笛と同じ擬音で、俺の頭は霞みがかかったよ

うに………。

 そして…夢にまで見たこの素晴らしい風景の中にいて、考えることはただひとつ。

 ………あー、え〜と…あと…どんくらいでホテル帰れるんだっけ……?

 真冬とは思えぬ輝きを放ち、燦々と降り注ぐ陽光を全身に浴びながら……

 その半開きの眼で、ただじっと、たゆたう葡萄色のエーゲを見つめつつ。

  …………ねむ……。

第八章 エーゲ海に捧いじゃって…完。

    

第九章「タイトル未定(^^;」に続く…。

 

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