メイプルウッド・ロード
〜#3.嵐のI−5〜
(5)
それはちょうど、夕方のもの哀しさに似ていただろうか… それまで遊んでいた友達が、ひとりまたひとりと、家路につき… 街並みの灯りのついた家々からはショウユの焦げる匂いがしてきて… やがて…街角にぽつんと、ひとり残された自分を見るような…… 「…………っ!」 …と、このまま黙っていると、どんどん妙な哀愁に包まれていきそうになり… そこで、瞬は首をぶんぶか振って我に返った。 そしてともあれ、質問の真意と、どこか…やや沈んだよーな由美の表情に、いまだ理 解は及ばないものの、いーかげんこの黄昏時の寂しさに似た雰囲気に耐え切れなくな ったのだろう……。 い…。 「な…なあ…なんか腹へらね?」 実質的なことと、嫌なムードを払拭する両方の意味合いを兼ねて、発した瞬の言葉 に、 「……え…?あ、ああ…そ、そーだねっ!な……なんか食べよっか…」 由美もまた、同じような気分だったのだろうか、やや慌てた様子で向き直り、 「……んっと………」 傍らの…お菓子の入ったコンビニの袋に手を伸ばす……が、 すかっ。 『大量に』という形容が誠にもって適応していたはずのその袋の中身は…… …空っぽ。 「あ…あれ〜〜っ?」 よもや…とゆー思いを胸に、周囲に散らばっていたポテチの袋やチョコレート等の箱を 片っ端から手に取るが、どれもこれも…… すか…っ。ぱふ…っ。からからからからからから……。 「………をい……。」 ジト目を向けた瞬の視線に―――だが由美はそれに構わず、 「……。」 なにやらにわかに青ざめ…悲壮感すら漂わせた表情をぎぎぃっ、と瞬に向け、 「ど…どーしよぉ〜〜!ぜ、ぜんぶ食べちゃったああああああ〜〜!」 「をぅい……」 怒りとも呆れとも取れる表情で発した瞬の言葉に、だがしかし、 「ま…またふとるぅぅぅぅぅぅぅぅ〜〜っ!!!!!!」 「……っておい、そっちかい!…じゃなくて、あんなとんでもない量の菓子ふたりで全部 食っちまったのかよ?…つーか俺らの分は……」 「や…やぁだあぁ!じょーだんぢゃないわよぉ!どぉおしてくれんのよぉぉぉ〜〜!!!」 ツッコミ、疑問、驚き、様々な感情を混じえて尋ねる瞬の言葉など、むろんまるで取 り合わず…『ムンクの叫び』もかくやといったといった様相で、両頬を押さえ付け絶叫 を発する由美。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛〜〜!!!もぉ〜いぃぃぃやぁぁぁぁ〜〜!!!!…………」 「ああっ!?ば…ばか…せめーんだから、こんなとこで暴れんな……っておいっ!」 突如乱心召された由美に、慌てふためき瞬が制止をかけるも、むろん収まらず、 どんどん!…どすどすっ…ぼふっ…ばふばふっ!………。 「やだやだやだやぁ〜だぁぁあぁあ〜〜〜〜…………」 しばし。 手足ばたばた、空き袋を投げ投げ…ほとんど半泣き状態の、由美の大暴れが続く こと数分―――。 まあ……それでも、ひとしきりおーさわぎしたのち、 「………………。」 むろん気がすんだ…ワケはないだろうが、由美は、ヒザを抱えて頭を落とし…おとな しくなった。 その一方、とりつくしまもない状態が落ち着いたのを見計らい、 「……え…え〜と……」 がっくりとうなだれる由美に、瞬はおそるおそる、 「…………い、いやまあ……なんつーかその…しょーがねーんじゃん?食っちまった もんは……。そ…それにお前、ほら…こっち来てから『10kg』くれー太ったって言って たじゃん?もーいまさら『1キロ2キロ』気にしたところで…たいして変わんねーって。 …それに…胸が減んなきゃ、俺的には全然オッケーだし。『ぷにゅぷにゅ』してんのも 好きだしよ……。」 ちなみに。 慰めてるつもりの瞬の言葉が、逐一由美の怒りのボルテージを再燃、及び飛躍的に 上昇させていってることは、まったくもって言うまでもない。 逆鱗に触れる、とはまさにこの事である……。 そして、 ………ぎんっ!! ゆらり頭を起こした由美の瞳に宿るは、鋭い猛禽の輝き。獲物を見付け闇夜に舞い 「う゛っ……!?」 わけはわからずとも(笑)、肌で感じる恐怖と殺気に、ごくりと息を飲みビビる瞬。 刹那にも満たない一瞬の沈黙の後…… がばぁっっ!! まさに『ケェーッ!』とかいう奇声が聞こえてきそーな勢いで、身を翻し、瞬に伸し掛か っていく由美。 ごっ!ごんっ!ごちっ!ごりりっ! 「うぁあっ!い…いててっ!」 そしてひとしきり―――狭い車中になにやらイタそーな音が響き渡り…… 「せっ…責任とんなさいよっ瞬(アンタ)〜〜っ!」 瞬に馬乗り組み敷いて、息を荒げて真っ赤な顔で見下ろす由美に、 「うぁっ!?…え…?あ…い、いや……で…でも…責任とか言われても……おもいっきり じごーじとくっつーか……ぜんぜん俺のせーじゃないよーな気も……」 だが…それでもなおかつ、おどおどしながら、さらに火に油を注ぐよーなことを口にす る瞬。 そしてむろんのこと。 ぶちっ。 …………限界点突破……。 「う…うるさいうるさいうるさ〜〜い!とにかく今すぐこの増えた体重ぅ減〜ら〜せぇぇ ぇ〜〜!」 「い…いや……いますぐって、それはム…んぐっ…ちょ…やめ……あがっ!い…いてぇ っ!…いてーってマジでっ!」 ばかぼこぼこばこぼこっ! マウントポジションから降り下ろされる、由美のぐーぱんちの雨嵐。まあ…とはいえ、 やけくそやつあたり100パーセントのその攻撃は、狙いもへったくれもなく……めくら めっぽうに打ち出されたその拳の大半は、ここ数ヶ月の付き合いで身につけた 見事なウィーピング、ヘッドスリップでかわす瞬の耳元、首の脇のシートにコミカルな 音を立てて突き刺さり…… まあ、ときどきかわしきれない数発がみごと命中したりもするのだが、 「…い…いてっ…ちょ…おい由美っ、も…もーいかげんに…うぐっ!」 …このてーどのもの。 とはいえ…… ばこばこばこ……… 「……こんの無責任男っ!鈍感っ…バカぁ…っ!」 「…って、お…おい…っ…」 「あんたなんか○×▲で…■☆※の…えっと…∇§◆のくせにぃ〜〜!!」 だがそれでも、しつこく続くぱんちの雨と、聞くに耐えない罵声怒声のオンパレードに いーかげん…… 「わ…わーったわーった!わーったから、ちょ…やめろってまじでっ!」 がしっがしっ! 振り上げかけた由美の両手を掴みあげ、 「じゃ…じゃあよぉ、責任でもなんでも取ってやっから、具体的にどーすりゃいーのか言 えよ!てっとりばやく外出てぐちゃぐちゃどろどろになりながらジョギングでもホ○ケン サイズでもすっか?『れぇっつがりがり☆』とか言って!それともこ〜〜んの狭い車ン中 で腹筋腕立てスクワットでもすっか?フルセットでもなんでもっ!つきあったるぞいくら でもっ!」 逆ギレヤケクソ混じりに吐き捨てる瞬。 そして二人は両手を取り合ったまま…… 「……う゛〜〜……」 「……ぬ゛〜〜……」 おバカな睨み合いが続くこと、これまたしばし……。 やがて―――ふたりともあまりの不毛さかげんに気付いた頃だろうか、 「………ふうぅ……」 どちらともなく、深い溜め息がひとつ。 そして… 「ん………んじゃまぁ…前向きに努力してみっか……ちょっとでも……」 「え…?」 なにやら思い付いたか、疲れたように頭をかきつつ言う瞬に、きょとんと目を丸くする 由美。 「…っしょっと……」 「あ…ちょ…な、なに?」 両肘をついて、瞬はむっくりと半身を起こしつつ、 「いや…だから、要は短時間で大量にカロリーを消費すればいーってことだろ?」 するする…っ… 言いつつ、ヒザの上の由美の腰辺りに手を添え、柔らかな肌触りのセーターを捲り上 げ …… 「……え…?や…ちょ…待っ……」 突然の瞬の行動にあっけに取られ、一瞬わけがわからず、身をくねらせ、頬を染め ―――だがほどなく、由美は我に返り、 「な…なにしてんのよあんたわ〜〜!」 「え…?だって、ダイエットにはえっちがいちばん効果的☆って……」 「だっ…誰が言ったのよ!そんなことっ!」 こともなげに発した瞬のアヤしい説に、激しく反発する由美……だが、 「俺のクラスの…ほら…お前も知ってんだろ………友美サン。」 友美サン…瞬のクラスにいる、三つ年上のスラッと背の高い…艶のある美人。 日頃由美たちに、美容等に関していろいろアドバイスしてくれる人で、その助言は、 なかなかにマトを得たものが多い。 またちなみに、由美のひそかな憧れ――『三年後、あたしもあーなるんだ〜〜☆』的 女性であることも手伝って、 「……え。そ…そーなの?………う…う〜〜ん…だったら……」 信憑性の程はいまだ定かではないが……いやでも友美さんの言うことだし事実だと すればちょっと試してみたい気も……などと、イロイロ考えを交錯させることとなり… そんなこんなで、由美はしばし硬直。 またその一方、そんな好機をむろん瞬が見逃すはずも無く…… …しゅるしゅる…… インナーシャツの裾を、スカートから引っぱり出し… 「…え゛?……あ…や……ぢゃなくて、い…いや、だからって…こ…こらあ!」 だがやはりナニかがどこか違うよーなことに気付き、慌てて抵抗しかける由美だが、 例によって(?)豹変モードに入った瞬の動きは素早く手際良く☆。 また、いまひとつ残る迷いが動きを鈍らせ、 「へ…?あ……」 アセる由美とは裏腹に、瞬は極冷静な動きで、再び仰向けに寝転びつつ、ぐいっと 腰を浮かせて、馬乗りになっている由美の身体をぐらつかせ、 「や…きゃっ!」 ぎゅっ。 それにつられて前倒しに倒れ込む由美の背に、小魚を捕まえたイソギンチャクばりの 動きで、左右から伸ばした手を絡ませ抱き締めて、自らの身体の上に押さえ付ける。 むにゅ。 互いの服の厚みを通してなお、瞬の胸に伝わる豊かな乳房の潰れる感触……安堵 さえ覚える柔らかで温かく柔らかな感触を、文字通り胸に納めつつ、 「あ…んむっ……」 間断なく、眼前に迫った由美の唇を奪い、先の動きで、あらかじめスカートから引き出 しておいたインナーシャツの裾から手を差し入れ…… つぅ〜〜っ♪ 立てた指先で、背筋をなぞる。 「んっ!…んふっ…ぅ……」 重なる由美の唇から、漏れる熱い吐息。 そしてすかさず、由美の身体の抵抗の力が一段階抜けたところを見計らい、舌を差し 込む瞬。 「んぁ…んんぅ……」 じゅん。 由美の身体の中で、何か熱いものが下がっていく感覚。 「くぅぅ…んっ!」 次いでやってくるぼーっと陶酔していく感覚に押し流されまいと、身を捩って抵抗する 由美だが……むろん言うに及ばず、きつく抱き締める瞬の手がそれを許さず。 由美の身体をがっちりとホールドしつつ、まこと瞬の指先は、その一本一本が、由美 の感じるポイントを正確に記憶しているかのように背中からお尻へ……滑らかな曲線を 辿ってまさぐり下りていく。 そう、あるいは背中側の脇腹… 「ひ…ひぁ…」 あるいは腰骨の上辺り… 「ん…んくぅ…っ」 そしてお尻の起伏の頂点…。 「あ…あ…ぁ……はあぁ…ん……」 さらには、その曲線のおしまい辺り…太ももとの境目から、くすぐるようにヒザの裏側 に辿り着き…再び、じったりと駆け上がるように再び太ももの裏側をなぞる。 「ひぁ…!はぁ…んっ…はあぁぁぁぁ…ん…っ……」 たまらず、瞬の両側のシートに手を付いて、身をのけぞらす由美。 刹那、二人の身体の間に隙間ができ――― 「……☆」 そしてむろん、瞬はそのタイミングを逃さず、セーター及びインナーシャツを一気にたく しあげ…… (え…?あ…そ、そーいえば……?) 快感に流されかけた由美が、それに気付いたのはそのときだった。 (し…しまったぁぁぁ〜〜!) 悔恨の想いで臍をかむ由美。 そう……そのまま寝るかもしれないからなるべく楽なように…と身に着けてきたグレー のスポーツブラが裏目に。 「へー?」 「え…?あ…や…やぁんっ!」 嘲笑混じりの瞬の声に、由美の頬が真っ赤に染まる。 なぜなら… すなわち、その柔らかな生地は、時すでに顕著になっていた突起の位置を正確に表わ し…ぴっちりと丸みを帯びたその頂点を、これでもか、と言うほどに、ぷっくり…その変 化をあらわにしていたのだった。 「くす…」 「……(かーっ)。」 漏らした瞬の微かな笑みが、由美の恥ずかしさをさらに極増させる。 そんな由美の心情を知ってか知らずか、瞬は――― はむ。 ぷくっと膨らみを帯びた突起を布地ごとくわえこみ――― びくぅっっ! 「や…っ!……んく…ぅ…っ!」 びりり…と疾った刺激に身をいっそうのけぞらす由美。刹那、すぅ〜っと抜けるような 感覚に、支える腕の力が失われ、瞬の頭を胸に抱え込むように突っ伏してしまう。 むぎゅ。 しかし、むろんこれも瞬の予想の範疇。 眼前に降ってきた柔らかな乳房に包まれつつ、片手で由美の脇腹を支え、もう片方の 手を捲り上げたインナ−シャツの裾に差し込み、その上のセーターごとそのままするす ると上にずらしていき、由美の頭から引き抜いた。 そして、 「んあ…っ」 ちょうど、短めのタンクトップ姿のような格好になった由美。 スポーツブラゆえ、セクシーさというものにはやや欠けるものの、頬を染め高揚しつつ 恥ずかしがる…といったその由美の仕草とあいまって、なんとも言えぬ可愛らしさを引き 出していた。 に幾度も吸い付き、 ちゅ〜〜っ☆…ちゅ…ちゅ…ちゅ……… ことごとく、その唇の痕跡を残していく。 「…んっ…あ…や……だ、だめ……」 突起にされるよりかは幾分鈍い刺激…だが、緩慢ながらもどこか狂おしさを覚える感 覚に、すこしずつ…だが確実に由美の理性は殺ぎ落とされていき、 「んあっ…あっ…あっ…あっ……」 両手を突いて四つん這いに…瞬に被さるようなカッコになりながら、うつむきかげんに …由美はうわずった嗚咽を漏らしていく。 また一方、 両手をシートに突っ張らせ、小刻みに震えつつ、込み上げる何かを耐え忍ぶ由美に、 瞬は唇の動きを止めぬまま、するりと両手を下へと伸ばし…… 途中、捲れ上がったフレアスカートは……めんどくさいのでそのまま。ショーツのみを 脱がしにかかる。 「んぁ…はぁ……や…やぁ…ん…」 もはや煽情にしかならぬ、うわずった吐息混じりの由美の抵抗の言葉。 そんな由美の反応に煽られながら、瞬は片手で由美の身体を浮かせ、するりするり とショーツを下ろしつつ…やや無理な体勢になりながらも、するっと足首から引き抜い た。 (6)へつづく。 |