メイプルウッド・ロード
                     
〜#3.嵐のI−5〜

(7)

「ん…あ…あふっ…ど…どう…?気持ちいい…?」

 瞬の腹の上に両手をつき、なまめかしく腰を前後する由美。

 もっとも、恥ずかしさで遠慮がちなその動きそのものは、緩慢さを積み重ねるだけ

であるが……

「ん…んくぅ…っ…あ…んぅ……やぁ…っ……」

 いろんな感情と戦いつつ、快感に溺れそうになる自分を押さえ込むような由美の

様子は、瞬の扇情をさらにかき立て、燃え上がらせていく。

 どくんっ!

「ん…うっ!」

 じれったさと、気持ちよさの合間で、思わず漏れた瞬の呻きに…

「あ…んっ……んふっ…もっと気持ちよくしてあげるね…☆」

 快感に表情を歪めつつ、由美は前後する腰をひとひねり。

 くいっ。

「んっ…?…んあぁっ!」

 柔らかく包まれたモノにねじり上げられたような快感がひた走り、思わず仰け反る瞬。

 また、その反応に淫悦な笑みを浮かべつつ、

「はぅんっ…ど…どう……ガマンできる…?…ん…ぁ……だ…ダメだからね………

…まだイッちゃ…☆」

 脈打つように膨れ上がる瞬のモノを敏感に感じながら、由美は二度三度と、同じ動き

を繰り返す。

 くいっ…くいっ…

「ん…うっ!」

 たまらず…瞬は震える両手を伸ばし、いまだグレーの布に包まれたままの揺れる

乳房をわしづかみにする。

 やわやわと揉みつぶすその動きで、手にはおさまりきらない、その二つの肉の塊は、

やわらかく変形し、

「あ…んあぁ……ん……」

 イタズラっぽい笑みをこぼしながら、甘ったるい声を漏らす由美。

「……く…っ!」

 また、そんな表情で見下ろされ、なんとなく悔しさを覚えた瞬は、その柔軟性により
              
  スポーツブラ
いつもより自由の利く、グレーの布の下に手を差し入れ、

 ぐいっ。

 伸縮自在な布地が胸元まで捲り上げられ―――こぼれ落ちる両の乳房がぷるん、と

揺れる。

 さらに、胸元に巻きついたように締め付けるグレーの生地が、その乳房の大きさを

より強調させ、またルームライトに照らされる陰影と相まって…なんとも淫艶な情景を

作り上げた。

「…………。」

 そんな魅惑的な由美の肢体に、手を添えたまま…しばし見とれそうになる瞬だが…

 むろん今は、そんな場合ではない。

「……っ…」

 想いを振り切り、ためらいつつも、揉みほぐす手のひらの中心…ころころと尖った

その両の突起を、中指・薬指で軽く挟み込み、

 きゅっ…きゅっ…。

「ひぁ…あぁ〜ん…

 びくびくっと刺激に震えつつ…だが、それでも崩れぬ由美の表情……。

 ここへきて、瞬のじれったさと悔しさに拍車がかかり、

 ずんずんずんずんっ!

 先ほどから溜め込んでいたムズムズ感を吐き出すように、荒々しく腰を突き上げる。  

 その一方、堰を切ったように激しく動き始めた瞬の腰の動きに、

「んああっ!いいっ……す…すごいよ…!瞬…あ…あ…あたし……っ!」

 長い髪を、左右に振り乱し、狂おしく喘ぐ由美。

 擦り付けるようだった腰の動きが、いつのまにか激しい上下運動に変わり……、

「ひぁっ!…はあぁっ!!やっ…だ、だめっ…す…スゴ…い…これ……んあぁっ!い…

…イイッ…はあぁ〜っ!!」

 まさに、何かが弾けたように乱れる由美。

 加えて、極短い間隔で襲いくる、絶頂を超えた快感に、

「あ…はうぅっ!い…イヤッ!…だめっ…い…いくっ…や…はぁぁ…いっちゃう…イッち

ゃう!…んくっ…んはぁあぁっ!!」

 いつもの自分が引き剥がされ……

「あ…はぁぁ…お…おねがい……ほ…ホントに……も…もうダメ………ね……ひぁ…?

……え…?や…だめ…ダメ……っ」

 身体の奥底から自分の知らない『女』が現れ出てくるような感覚に驚き、怯え……

 びくびくっ!

「や…はあはあはあはあ……だ、だめ…しゅ…瞬っ!これ以上……あ…んくぅっ!」

 息も絶え絶え言う由美だが、むろんここまできたら、瞬も止まれない。

 それに…、

「はあはあ…だ、ダメ…って言ったって、んくぅ…お…お前だって動いてんじゃん…腰…」

「はぁはぁ…え?…あ…や…ちが……コレは……勝手に……」

 ぐんっ!

 意識が逸れたその瞬間を狙い、大きく突き上げる瞬。

「ひっ!?…ひあああああっ!」

 由美の中で、遠のく意識がまたひとつ。

 そして、

「……も…もっと……」

「……ん?」

 喘ぎの合間…思わず漏らした由美のかぼそい声に、目線で聞き返す瞬。

「え…?や…ちが……ひ…あ…っ!」

 慌ててごまかす由美に、だが瞬は、追及する代わりに今一度、大きく腰を突き上げ

る。

 ずんっ!

「!?んくぅぅっ!あ…っ!…んぅっ!…い…いやぁっ…はあっ!ほ…ホントに……

お…おかしくなっちゃ……あぅっ!」

 さらに、

 ずんずんずん…っ!

「んうっ!あっ!あっ!はぁっ!はあぁぁっ!!」

 体の奥底でまたひとつ大きく開く歓喜の花に…

「やぁ…あっ…ひっ…あつぅぅいっ…ぃぃ…い…イイっ!しゅ…瞬っ…もっとぉっ!」

 自らも激しく腰を上下し、身体を揺さぶり求める由美の喘ぐ様に、瞬の興奮も極度に

高まる。

 …が、まだイカせない。

「……んっ!」

 由美の動きを封じる意味も兼ねて、瞬は身体を起こし、向かい合わせに抱っこする形

で、由美を抱きしめて、

 ……ちゅうぅぅ〜〜☆

 ふくよかに揺れる乳房の上、ツンと尖った突端に吸い付く。

「え…?あ…や…やあぁん…あぁぁぁぁ〜〜っ!」

 口の中で激しく甚振りながら、腰を動かし、

「ひ…あ…あああああ〜〜っ!!や…瞬……そ、それっ!……もっとぉっ!」

 止められぬ甘美な振動が、さらに由美を狂わせ……やがて、

「んああああああ〜〜っ!瞬っ!あっ…あたし…はぁぁ…お…おねがい……ほ…ホント

に……も…もうダメ……い…いっちゃう…イッちゃう!…ひぁ?…やっ…だ…だめ…

あ…あ…あ…あ…………っぅ――――――っ!!!」

「ん…くぅぅっ!」

 固く繋がりあったままの二人の身体が狂おしく震え……

『………………っは………ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………』

 互いの耳元で吐き出した歓喜の吐息が重なり……

 刹那、真っ白な硬直……。

 そして、

 ………どさっ……。

 押し寄せる愉悦の余韻に身をまかせ、二人の身体はシートに崩れ落ち――――

 と、そのとき……

 がごんっ! 

 唐突に車が揺れた。

「はあはあ………え?」

「な……なに……?」

 息も絶え絶え……驚く二人が、顔を見合わせるいとまもあらばこそ。

 がたんっ…がたがたがたがたがたがたがた……

 振動が振動を呼び…車体の揺れは加速度的に激しくなり……

 …ごとんっっ!

 一際大きな揺れと共に車が何かを乗り越えたような感覚…、

「え…あ…?ちょ…こ…これって……?」

 次いで、急激に車体が斜めになったかと思うと……

 ずる…っ……ぐらららららららら〜〜〜っ!

 斜面を滑り降りていく…陸のクジラを思わせる、メタリックブルーのシボレーアストロ。

 ちなみに、さきほどなんとかリカバーしようとしてたせーで、ギヤはニュートラルのま

ま…。

 加えてむろん、

「や…やべっ!さ、サイド引いてねえっ…!」

 気付いて瞬は、這いずるように運転席に行こうとするが、半脱ぎ状態のスゥエットが足

に絡まり…また、激しく揺れる車内では思うようには動けず…

 ついには――――――

 がたがたがたがた…ぐあぁぁぁぁ〜っ……

 激しい地響きと共に、青い車体は先ほど上から見ていた間道に踊り出し、

 ばっしゃぁぁぁ〜んっ!

 嵐の名残でその場にできていた大きな水たまりに突っ込み、水しぶきを盛大に撒き散

らせ……

 ……ず…ずずっ…ん……

 クルマは間道のど真ん中で停止した。

   

「……ん…うぅ〜ん……あたた…」

「い…いてて…ゆ、由美…?……でーじょぶか?」

 頭や身体をあちこちにぶつけたものの、とりあえず二人は無事を確認し…

「……って、あ!」

 今度は、車体の無事を確かめるべく、急ぎ服を調え、車外に踊り出る瞬。

「…ん〜……。」

 車体からやや離れて、慎重に……フロントからテールへ…また足回り等の無事を

確認し―――と、まあ…あたりが暗いこともあって、正確な確認はできないが、とりあ

えず大きなヘコみや、走行に支障をきたすような破損はない模様。

 さらに再び、瞬は車体に戻り、運転席側のドアを開け放ち、エンジンをかけてみるが、

 きゅるる……ヴヴンッ…!

 幸いこちらも、全く異常なし。

「……ふう。」 

 ようやく、緊張の糸を緩め、ほっと息つく瞬。

 シートの下にばらばらになって落ちてしまったタバコの一本を手に取り、

「ふ〜。」

 ともあれ一服。

 青いボディを背に、昏いオレゴンの夜空に安堵の紫煙を吐き出した……そのとき、

 ぴかっ…!

「んぁ…っ!?」

 突如、彼方より走り来る車のアッパーライトに照らされ、一瞬目をくらませる瞬。

 そして……

 がうんっ!

 唸るような排気音と、逆光に照らされたそのシルエットに目を凝らせば……

 なにやら大柄な…だが車高の低い………トラック…?…いや……

「…?……あ☆」

 いまだ視界のおぼつかぬ瞬の、前方約10mほどに停止したそのクルマは、待ち望ん

でいたレッカー車だった。

 またほどなく、

 がちゃんっ。 

 荒々しく助手席側のドアが開いたかと思うと、

「おー、瞬…イケるか〜?」

「や☆」

 急ぎ、心配げな顔でこちらに駆け寄ってくる武史と…またその後に続き、しゅたっと

クルマより降り立つ晶子の姿。 

 それを見た、瞬の安堵はより深いものとなり…

「お〜☆」

 大きく手を振り、二人を迎える瞬の口から、一際濃い紫煙の塊が吐き出された。

  

 エピローグ。 

 そして………

「ふ〜〜〜〜ん……?」

 がちゃこんぎぃぃ…と、セカンドシートのスライドドアを引き開けた、武史のジト目が

瞬に突き刺さる。

 むろん、いまだ車内に残る独特の『匂い』に、めざとく気付いて…。

「え…えっと……あの…これわ……」

 きまずい口調で、苦しいイイワケをしよーとする瞬に、武史は、ふぅ…と大きな息をつ

き、

「……ま、えーけど…。リカバーできた説明は、自分があっちのおっちゃんにしてな?

ちなみに、仮眠してたとこ、無理言ってきてもらったんや……相当きげん悪いで」

 冷めた口調でそう言い、頭かきつつクルマに乗り込む武史。

「え…いやあの…ちょ……」

 慌てて追いすがる瞬だが、武史はむろん振り返りもせず。

 そして、背後から、

 バタムッ!!

 がんじょーそーなドアを荒々しく閉める音が響き渡り……

「Hey! What's u〜p!?」

 野太い声でがなりつつ、のっしのっしとこちらに歩み寄ってくる、これまたがんじょー
                  レッカー車のドライバー
そうな作業服姿の白人中年男性――。

 巨大な冷蔵庫に丸太の手足をつけたよーな体躯に、ひげもじゃの顔。

 襟元、袖口からは溢れるように胸毛腕毛がはみ出しており……

「…………。」
                       
グリズリー
 そんな、『その辺の木立に佇んでりゃ灰色熊と間違えること請け合い』然とした容

貌に、向き直ったまま立ち尽くす瞬の背筋に戦慄が迸る。

 ………英語どころか、人間の言葉が通じるのだろうか……

 だがしかし、そんな瞬の恐怖と不安をよそに、レッカー親父は瞬の眼前で立ち止ま

り……

「……Hi……」

「…え?あ……え…えっと…えっと…へ…Hello...?」

 大柄であるはずの自分の身長を上回るその巨体を見上げつつ、完全にビビった様

子で、とりあえず引きつった声を出す瞬…。

 その一方、レッカー親父は、怯えて震える瞬の両肩にがしっと手を置き、真意の読

めぬ不気味な笑みにその口ヒゲを歪めつつ、

「Are〜You〜O〜K〜?」

 頭上からの絞り出すような野太い声に、

「…………いいいいいい……いえす……。」

 捕われた小鳩のよーにちぢこまりながら、どーにかこーにか応える瞬。

  

 ―――嵐収まり、白々と明けはじめたI-5にて――――――。

   

 さあ果たして今後の瞬の運命は……?

   

 次回、メイプルウッドロード#4〜恐怖!オレゴン山中の激闘。瞬VSレッカー親父〜

 括目して待て!

 …いや、そーゆー話じゃなく。

 ともあれ、目的地、サンフランシスコまでの道のりは、まだまだ長い…よーである。

「……And then?」

「……そ…So……but,we……」

 そして、

 全く前進性のない二人の問答はまだまだ続いていた…………。

    

メイプルウッドロード#3〜嵐のI-5〜 完。
May.21,2003

    メイプルウッド・ロード#4〜ワーフの夜は青天の霹靂〜につづく

  

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