しようね☆]〜すぺしゃるばーすでぃ☆〜
(1)
がちゃ。
玄関のドアが開き―――。
「………☆」
足元の乱雑に脱ぎ捨てられた俺の靴を見て、嬉しそうに顔を上げるらいか。
部屋の奥まで届くよーな元気のいい声を張り上げ…
「たっだいま〜☆」
と同時に、
「おっかえり〜☆あ〜んど、おっめでと〜っ☆」
ぱん☆ぱーん☆
待ち構えてた俺の声とクラッカーの音が玄関に鳴り響いた。
そう…ここは、らいかのマンション。そして今日はらいかの誕生日なのである☆
またむろん、らいかもそれを忘れてたわけではないのだろーが、このいきなりな俺の挨拶に……
「……!?」
クラッカーから吹き出た細い紙ヒモを、ひと房頭に乗せ、目を丸くし、
「………え?あ……そ…その………あ…ありがと………」
少々…いや、かなり面食らった様子で俺を仰ぎ見る。
…くすくす☆まずは第一弾大成功☆ってとこかな。
ま…それはともかく、
「さて…それじゃいこうか」
俺は、どこぞのTV番組のプロデューサーのような口調で、いまだぽかんとしてるらいかの手を引き、
いつもよりいっそう力を入れ、作り上げた数々の料理が並ぶ美味しそうな匂いが漂ってくるリビングへ―――
は向かわず、一路、風呂場へ…
…いやほら…だって…俺ンときもしてもらったし、まずはそのお返しをしないと……☆
などと、律儀な思い(笑)を胸に、俺は、まだぽかんとしてるらいかを従え、洗面所のドアを開け……
「…はい…ばんざ〜い☆」
「う…うん……ばんざ…」
ジャケットを脱がし、インナーシャツを捲り上げたとき、らいかは気付く。
「ば…ばかぁ!なにしてんのよぉ〜!?」
「え…だからほら、俺のときもしてくれたから………そのお返し…とゆーか…プレゼントの一環として」
優しく微笑みながら言う俺に、だがらいかは、せっかく捲り上げたシャツを元に戻し、
「え……?あ…そ…そんなの…いいってば……」
胸のあたりをガードしながら、戸惑い気味の表情を見せる。
「え…でも、アレ…嬉しかったし……すっごく気持ちよかったぞ…俺は。」
きょとんっ、とした顔で言う俺に、
「!?そ…そんなのいらないっ!も…も〜っ!ひ…ひとりで入るから……ちょ…でていきなさ〜い!」
なぜからいかは真っ赤な顔になり、渾身の力を込めて俺の胸をぐいぐい押し…
ばたんっ!
荒々しくドアが閉められ、俺は洗面所から追い出されてしまった。
……ふ〜む…なにがきにいらなかったのだろーか……?
などと首を傾げつつ、リビングに戻る俺。
…と、その途中で、
がちゃ。
「ね…ねー」
不意に再び洗面所のドアが開き、肩を露出したらいかの顔が覗く。
「…ん?」
振り返る俺にらいかはおずおずと…
「あ…あのさ……パジャマとし…下着……」
……あはは☆なるほどね…☆
「おー。わかった。持って来といてやるよ」
「う…うん…お願い…あるところはわかってるよね?……でも、あんまりえっちなのはもってきちゃダメだよ…」
カルく答える俺に、らいかはやや顔を赤らめ、そう言って再びドアを閉める。
……う〜ん…でも…えっちなのは…って、その辺の基準はどこにあるんだろ…?
さらに聞いてみたいとこだったが、すでに浴室からは軽やかな水音が響き出していた。
……ま、俺のシュミでいけばいーよな☆
などと思いつつ、今まででいちばん『せくしぃ☆』だったのはどれだったかを頭に巡らし、
「え〜と……」
俺は寝室のタンスの前に向かい立ち…と、そこで…
「あ…そーいえば☆」
とあることを思い出した。
それは、先日――
例のらいかの後輩…スチャラカ3人娘が俺の働く店に来たときのことである。
『…もーすぐ、らいか先輩のお誕生日ですよね〜。コレ…あたしたちから…って渡してくれます?
たぶん…たけあきさんから、先輩に渡してもらったほうがいいと思いますから…』
そう言って意味深に笑った彼女たちの様子から、手渡された紙袋の中身は容易に想像できた。
そう…たぶん、今一番役に立つものだろう。
含む思いを胸に、俺はタンスからパジャマだけを取り出すと、リビングに戻り、
「お…そうそう、これこれ…☆」
持ってきていたカバンから、託された紙袋を取り出した。
……とはいえ……う〜ん…
小さな不安が頭をよぎる。
そう…あの彼女たちのこと…。妙なところがクリアになってる奴とか、過度に利便性を求めて不思議なところが開閉式になってる奴とか…あまりシャレにならんもんでも困る…。
一応、確認したいところだが………
などと思いつつ、俺は、手に持った紙袋に目を移し……
「お…☆」
幸い紙袋はテープ止めされておらず、そっと中を覗けば、それはクリアなセロファンに包まれたラッピングをされていた。
お☆これなら…
俺は、紙袋のフォームを崩さぬようにソレを取り出すと、
……ほほ〜☆なるほど〜☆
どーやら彼女たち、今回はウケ狙いは避けたようである。
十字に赤いリボンがかけられたセロファンの中身は……
全体にあしらわれたその上品なバラの模様と、派手過ぎないフリルのついたシースルー……
程よいいやらしさと可愛らしさを兼ね備えたパールピンクの……。
そう、いわゆる華美にデザインの凝った、高級らんじぇりーだった。
「〜☆」
おもわず、ソレを身に付けたらいかの姿が頭に巡り顔が緩んでしまうが、
ともあれ今は、セッティングを先行させたほうがいいだろう。
俺は、そそくさと洗面所に向かい、それとパジャマを洗濯機の上に置き、リビングに戻った。