ロフト・イン・サマー・U
〜月明かりのテラスにて〜

(3)

 

「お…おい……だいじょぶか?」

「ひ…あぁぁ………ふ………だ…だいじょぶ…じゃ…ないよぉ……」

 さすがに心配になった剛が声を掛けると、真子は視線を宙に泳がせ、酔っ払った

ようにやや呂律の回らない口調で答えた。

「ご…ごめん……ちょっと調子に乗り過ぎた」

「……もぉう…ばか」

 素直にあやまる剛に、真子は『ばか』の部分を強調して言い、上目遣いに睨んだ。

「……う」

「ぷ…くふふふふふ!」

 思わず絶句する剛に、堪え切れずに吹き出す真子。

 調子に乗って何かをやりすぎ、それを咎める真子に剛が絶句する……

 幼い頃から変わらぬこのパターンが、今の真子には、やたらおかしく、また妙に嬉

しかった。

 そして、

「剛……」

 誘うような流し目を残し、その場にごろりと寝転ぶ真子。

 それがなにを意味するのか、むろん剛には即座に理解できたが、先程の負い目を

感じてしまい、やや戸惑い気味に躊躇してしまう。

「え…? ま…真子……いいのか?」

「いい…って、何がぁ? あたしはただ疲れて横になっただけよ……別に、剛に隣に

きて欲しいとかー、そんなこと言ってないよ」

 とぼけた口調でそう言って、頭を転がし、そっぽをむく真子。

「真子……」

 そんな真子に、剛は苦笑を漏らし、そっと寄り添うように身体を横たえた。

「な…なによ……来て欲しいなん…て……んむっ…んんんっ!」

 こちらを向いた真子が拗ねたような口調で言葉を発する前に、剛は真子の唇を奪

う。

「んん……あ……あふ……ん……」

 一時冷めかけていた二人の身体に再び火が着いた。

 申し合わせたように、互いの身体をまさぐり始める剛と真子。

「はぁっ、はぁっ…ま…真子……」

「んふぁっ…はぁぁぁんっ……剛……剛ェッ!」

 未熟ながらも、考え得る限りすべての動きを以て、互いの身体を求め、絡み合う剛

と真子。燻っていた思いが…身体が、一気に燃え上がる……

 そして、二人が我慢の限界に達するまでに、そう時間は掛からなかった。

「はぁっ…ま…まこ……お…おれ……おれ……」

 汗だくで上気しきった顔を上げ、真子をじっと見詰める剛。

 言葉に出さずとも、真子にはその剛の瞳がはっきりと自分を求めているのがわか

った。

「はぁ……ん…ん…? ん……いい…よ……き…来て……」

 胸中で入り交じる喜びと不安に、火照った顔をさらに紅く染め、真子は精一杯優し

く微笑んだ。

「ま…真子っ……」

 改めて、がばっ、と真子に覆い被さる剛。 

 もうひとときも高ぶる興奮を押さえ切れないのか、息を荒げて、握り締めた熱いこ

わばりを荒々しくやみくもに真子の股間でさまよわせる。

「…んっ……こ…ここ…よ」

 見兼ねた真子が、すっ、と手を差し入れ、剛を導いた。

 そして……

 …ぬる……

 熱く、ぬめるように潤った真子の秘芯…その柔らかすぎる感触が剛の先端に伝わ

る。

「……あ。そ…そこ…。………で…でも…やさしく…よ……剛……」

 同時に最も敏感なその部分で、荒ぶる剛の心中を感じ取ったのか、真子はやや怯

えるような表情を浮かべ告げた。

「……あ。」

 そんな真子の一言、表情が、もはやどうしようもないほど猛っていた剛の心を和ら

げる。

「ご…ごめん。………怖いか?」

「…ん。少し……でも…今は平気……剛…笑ってくれたから……」

 真子の言葉通り、強張っていた剛の表情から険が取れ、うっすらと優しい笑みが

浮かんでいた。

「あ…ああ……。それ…じゃ……いくぞ…ん…っ」

 やがて、剛は早る気持ちを精一杯押さえて、できる限りゆっくりと真子の中に侵入

っていった。

 

 …ず……!

 

 感触的には、丸い頭を持った棒が入ってくる感じ……

 何かに塞がれたような妙な息苦しさは感じるものの、『なんだ、こんなもんなの?』

……そう思った瞬間、

「…ッ!? あぐ…っ! はぁあぅぁぁぁあーッ!!」

 股間から頭の天辺まで、一直線に突き抜けるような凄まじい衝撃が真子の身体を

駆け抜けた。

 たまらず、身体をえびぞりに反らせ、絶叫を上げる真子。

 痛い…とは聞いていた。また、こればっかりは例えようのないものだ、とも……

 あまりの凄まじい感覚に、切り離された別の意識の中で、かつて友人から聞いた

体験談が真子の頭を巡る。

「ハッ…ハッ…ハァッ! かはぁッ…!」

「あ…! ご…ごめん…、真子……」

 一方、あまりの真子の反応に驚いて、慌てて腰を引こうとする剛。

 だが……

「あ…くっ、ん…だ…大丈夫……、剛…、つ…続けて…。少し…良くなって…アァ…ッ

き…きた…から………ん…っ」

 真子は無理に笑みを作って、剛を引き止めた。

 もちろん発した言葉はうそである。

 正直言って、この身体が軋むような痛みは耐え難く、もうやめて…と言ってしまいた

かった。そうすれば、むろん剛はやめてくれるだろう……。

 だが、今その言葉を発してしまえば、そのまま剛がどこか遠くへ行ってしまうような

気がして………

(離したくない。このひとと、ひとつになりたい………)

 想いが痛みに打ち勝ち、真子は震える手を剛の背に回した。

「真子……」

「あ…あぁぁ…た…剛…だ…だいじょ…うぶ…だから……おねがい……」

 未だ躊躇する剛に、再び笑みを作ってみせる真子。

 また不思議と、無理にでもその笑みを作った瞬間から、真子は徐々に痛みが奇妙

な感覚に変わっていくのを知った。

 それは女だけが知る、一生に一度だけの最初の歓びだったのかもしれない……

「あ…ああ、でも、我慢できなかったら…言うんだぞ」

 そして、ようやく意を決する剛。それでも、真子の身体を気遣うように、よりいっそ

う、ゆっくりと腰を沈めていった。

 …ず…ずず…っ……

「あ…ん…んん…んっ…!」 

 再び来た異物の挿入感に、眉をしかめる真子。

 その目尻に、涙のしずくがキラリと光る……

「あ…お…おい、だ…だいじょぶか…?」

「あ…へ…平気…よ、あ…あは…剛…や…さし…い☆」

 だが、剛の心配をよそに、その表情は悦びに満ちていた。

「ああん…た…タケ、お…お願い……き…キスして……」

「ん……」

 身体を震わせ目をぎゅっと閉じる真子に、求められるまま唇を重ねる剛。

 二人は今、心も身体もひとつになった………

 

(4)へつづく。

 

 

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