ロフト・イン・サマー・V

Last Night〜長い長い最後の夜☆〜

(3)

「ん…? なに……どした? こんなに鳥肌立てて……」

 ぐったりと覆い被さったまま、小刻みに身体を震わせる真子の背筋に、再びなぞるよう

に指を這わす剛。

「ひっ……ちょ…だ…だめっ! い…いやぁっ! ん…くっ…はぁぁぁぁぁっ!」

 たまらず、真子は剛の身体から離れようともがくが、もう片方の剛の手でがっちりと押

さえ込まれ、逃げられない。

 一方、指先のわずかな動きで、ぶるぶると身体を震わせ身悶えする真子の反応が、

がぜん面白くなった剛は五指を広げ、掻くように、だがその力は極弱く…肌に触れるか

触れないかの距離を取って、さらに真子の背中に指を走らせる。

「あ…やっ…はぅっ! ひああああ……ん……くぅぅぅ…ん」

 剛の指が動く度、まるで微弱の電流を身体に流されているように、びくびくと身体を震

わせる真子。

「はぁぁぁ…っ……や…やぁ…ぁぁだぁぁ……も…もう……や…め…てぇ……」

 得も知れぬこの感覚に、真子は何とか身体を揺すって何度も逃れようとするが、押さ

え付けられている上、身体の力はどんどん抜けていき、どうにもならない。

「ん……」

 またそこへ、強引に顔を向けられての、とどめの剛の濃厚なキス。

「ん…む…んんんん……んんぅ……」

 舌と舌とが絡み合い、痺れるような感覚と甘い安堵の快感とが真子の頭の中で入り

交じる。

 やがて、

「ん……んはぁぁぁぁぁぁ……」

 強烈な脱力感と共に、剛の唇の戒めから解かれたとき、いつのまにか真子は身体を

入れ替えられ、仰向けにされていた。

「え…? あ………」

 同時に剛の姿がないことに気付き、見れば、胸元まで覆い被さっているタオルケットが

異様な人型を象り、こんもりと膨らんでいる……。

「へ……? ちょ…剛…?」

 そして、驚く間もなく、タオルケットの中から伸びてきた姿の見えない剛の両手が真子

のタンクトップの中に潜り込んできた。

「あ……やっ……」

 もぞもぞと乳房の上に乗ってくる剛の掌の感触に、真子は身を捩ってかわそうとす

るも、先程の余韻からか、身体が旨く動かない。

 また、そんな抵抗ままならない真子の様子を知ってか知らずか、ぐっ、力を込めた

剛の両手がブラジャー を下から捲り上げ、直にその両乳房をまさぐり始める。

「あっ! や…はぁぁぁん……んんっ! くぅぅぅ…ん……」

 戒めを解かれ、ぷるんっ、とこぼれ落ちた真子の乳房。剛は両手の指をこね回す

ように蠢かせ、その柔らかな肉の塊をいいように弄んだ。

「はぁぁぁぁ……んんっ……た…た…けぇ……んぁぁぁ…ふ…ぅぅ…ん」

 柔らかな生地のタンクトップの布が剛の手の甲で様々な形に変形し、真子は熱く甘い

息を漏らし始めた。

 ………と、そのとき。

 きし……きしっ……

 踏み板がきしむわずかな音が近づいてくるのを、二人はすっかり聞き逃していた。

 …ぎしっ……

 そして………

「……まこおねーちゃん……」

 ドキィィィィィッ!!

 突然聞こえた枕元からの声に、真子、そしてタオルケットの中の剛は肝を潰した。

 当然、ある程度予想はしていたこと。そのために策も講じてはいた………

 だが、やはり どこか油断していたのだろう。

 二人の頭は今完全にパニック状態に陥った。

「まこおねーちゃん…?」

「………!?」

 再度聞こえた問いただすような声に、何とか我に返る真子。むろん、宙に浮かび

上がるような快感はすべて吹き飛んでいた。

 ともあれしかし、動揺している場合ではない。特に姿の見えない剛はともかく、矢面

に立たされた真子は、『声』に応じる準備を整えなければならないのだ。

「……だ…だ…れ…?」

 真子は目を見開いたまま、おそるおそる枕元の方へ首を反らせる。

 そして、逆さまになった真子の視界に入ってきたのは、薄闇の中、心配そうな表情で

自分を覗き込む幼い少女の姿であった。

「え……え…え? あ…あ…めめめめめ恵美ちゃん? どど…どどーしたの?」

 動揺を隠し切れず、激しく吃りながら尋ねる真子。だが、恵美と呼ばれた少女はそん

な真子の問いには答えず、

「あ…の……まこねーちゃん、どっか痛いの……?」

「え…え……な…なんで?」

 さらに不安な面持ちになって尋ねてくる。また、いまだ動揺冷めやらぬ真子は、彼女

の言葉の真意が掴めず、問い返した。

 すると……

「だって……なんか、くるしそ−に、うんうん言ってたから……」

「え…………? あ…ああ、そ…それは……えーと……そうそう、怖い夢見ちゃっ

たのよ」

「コワイ夢…?」

「そう…、そうよ。どーもありがとうメグちゃん。メグちゃんのおかげで、目覚ますことが

できたわ……あーコワかった。ホントありがとね☆」

 一瞬、躊躇するも、咄嗟に浮かんだ旨い言い訳で、なんとかその場を凌ぐ真子。

(………ふー、やれやれ……)

 そして、タオルケットの闇の中では、そんな二人のやり取りをじっと息を潜めて聞いて

いた剛がほっと胸を撫で下ろしていた。

 むにゅ。

(ん?)

 緊張が解け、剛は頬が心地好い弾力にぶつかっているのを感じる。

 今までは動揺のため、また暗闇のため、自分がどんな格好をしてるかすら気付かな

かったが、どうやら、真子の太ももの間に顔を乗せ、うつぶせに横たわっているようで

ある。

「ふ〜ん、でもコワイ夢って、どんなぁ?」

「え…? ああ、えっとね、それは……」

(…………)

 少女と真子、いまだ二人のやり取りが続く一方、緊張が解けるに連れ、剛は、次第に

じっとしているのが苦痛になってきた。息苦しいし、特に不自然な格好で曲げられた首

がつらい……。

 しかし、

「へぇ、それでそれで…?」

「うん、それでね、黒いとげとげの狼みたいのが……」

 なにやら、『上』では二人の会話が弾んでいた。

 少女にせがまれ、仕方なくしどろもどろに見てもいない夢の話を始めた真子だったの

だが、どうやら、その『ストーリー』の方向性が定まったらしい。かなりノッた口調で舌を

滑らせている。

(……そういや、コイツ、こーいうの、得意だったっけ)

 微動だにできない苦しい格好ながらも、剛は、過去に子供達を集め即興で作り上げた

話を子供達に聞かせていた真子の姿を思い出していた。

 が………

(うぅ…んぐぅ…ふ…ぅぅ…)

 今はそんな事をしみじみ思い出している場合ではない。

 ただでさえ密閉されているような空間で、息を押し殺しているのである。酸欠気味にな

った剛の頭は朦朧とし始めていた。

(はぁーっ…はぁっ…、お…おいおい、もうかんべんしてくれよ……)

 とはいうものの、この状況では何をできるわけでもなく、せいぜいその場しのぎに乾い

た唇をなめることぐらい……

 苦痛に顔を歪め、小さく突き出した舌で唇を濡らす剛。

 ぺろ……

「…そしたら、逃げるあたしの後ろに影が迫ってきて……」

(おぅい……いつまで続くんだよぉ……)

 ぺろ……

 と、何度となくそんな前進性のない行為を繰り返すうち、やや突き出した過ぎた舌が真

子の太ももに触れてしまった。

 ぺろ…………ぴと。

「でね、あたしの前でその大きな牙が………ひゃぁぅっ!?」

(あ! いけね……)

 股間近くに走ったぬるっとした感覚に、思わず奇声を発する真子と、それに驚き、

慌てて舌を引っ込め、再び息を潜める剛。

「あっ、ど…どーしたの、まこおねーちゃんっ?」

「え…あ、ううん、な…なんでもないよ!」

 苦笑いで取り繕いつつ、真子はタオルケットの中に手を伸ばして剛の頬をつねる。

 ぎゅ!

(え…? あ…痛っ! な…なんだよっ? わざとじゃねーよ!)

 あまりといえばあまりの、理不尽な仕打ちに、闇の中、抗議の視線を上げる剛。

 すると、そこには、真子の手が入り込んできたことによって出来た隙間から僅かに

光が差し込み、真子の股間がくっきりと映し出されていた。

(お…☆)

 丁度、真下から見上げている格好なので、少し捲れ上がったショートパンツの隙間

から、白い布地に覆われたソノ部分がはっきりと見て取れた。

 淡い陰りを見せていることから、どうやら先程の情事でやや湿っているようである。

(……………………………)

 なんとも刺激的なこの光景に、剛の欲望と戯謔心が猛烈に掻き立てられたのは言う

までもない。

(ったく、こっちの気も知らねーでよ………へっへっへ……でもそーかよ。そっちがそう

いう気なら、どこまでそのお得意の言い訳でごまかせるか、試してやるよ……)

 口元を妖しく歪め、今度ははばかることなく、剛は長く押し出した舌で、真子の柔ら

かな太ももを舐めつけた。

 れろんっ!

「あ!…ゃぁ…く…ぅぅぅ!」

 太ももを這いずる生暖かい感触に、大きく身震いし顔を歪める真子。

「あぁっ!? まこおねーちゃんっ!?」

「え…あ、な…んでも…ないの。ん…ぁ…く……」

 先程と同じように驚く少女に、真子は苦痛を帯びた笑顔で答え、また同様に差し込

んだ手で剛の行為を止めようとしたが……

(おっと、そうはいかねーよ☆)

 顔近くに伸びてきた手をひょいとかわし、剛はその手首を握り締め押さえ付けた。

 そして、真子のこの行動は、剛の行為にさらに火を付けてしまう。

(さあて……)

 にやり、と笑みを浮かべ、剛は舌先を太ももから股間へ、つーっ、と滑らせていく。

 ぞくそくぞくっ…!

「はぁ…ぁ…ぁ…ぁ…ぁーあ…ぅ…」

 思わず漏れてしまう甘い吐息を、あくびに似せて、下半身に起こっている異常を少女

に悟られぬよう、表情を崩さぬことに努める真子。

 だがむろん、剛の悪戯はまだまだ終わらない。

(ほぉ、さーすが。んじゃ、これはっと……)

 さらに剛は、ショートパンツの裾を捲り上げ、鼻先からその部分へ突っ込み、尖らせた

舌をあてがっていく。

 ちゅくっ……

 舌先に感じるざらっとした布の感触。だがそれは、唾液とわずかな刺激で内側から

溢れ出してきた真子の蜜が絡み合い、すぐにぬめぬめとした感触に変わっていった。

 同時に、むせ返るような真子の…女の匂いが強くなっていく………

(…んっ……んんん…)

 そんな無言の真子の要求に応じるように、内から湧き上がる興奮を余すことなく舌先

に伝えていく剛。

 とはいえ、むろん、ばれてしまっては元も子もないので、剛はある程度加減はしていた。

……がしかし、そのもどかしいとさえ思える剛の舌の動きは、逆に真子にどうしようもな

い快感をもたらしていくのであった。

「んん……く…ふぅ…ぅ…ぅ」

「ま…まこねーちゃん、大丈夫?」

「…ぁ……く。……ん? な…なにが…? 」

 あきらかにおかしい真子の様子に、再度、神妙な声で尋ねてくる少女。対して真子は

あくまで平静を装い問い返す。

「う…うん。なんか、やっぱり苦しそうだから……」

「え……? ぜ…全然…んんっ…へ…平気よ……ぁ……」

「そ…そう?」

「うん。あっ! ……で…でも、……っく! そ…それより、もう寝ようよ? 明日も早

いんだし……」

 これ以上は限界……。そう感じた真子は、何とか話題の転換、そして少女を引き離す

ことを試みる。

「えーっ!? おはなしのつづきはぁ?」

 予想通り、不満げな声を上げる少女。

 なんとか、彼女の気をそらすことは、うまくいったようだ。次は……

「んっ! そ…それは……く…ぁ」

 なおも続いている剛の悪戯に、玉の汗を額に光らせ、真子は説得に入る。

「あ…明日……んっ…してあっ…げるよ……ね?」

「ええー? やだぁ……」

「でも…あっ…でもさ、このあとはすっごく怖くなるんだよ? んんっ…あ…メグちゃん

眠れなくなっちゃうかもよ。それでもいい…?」
                                            

 押し寄せる快感に身をゆだねそうになってしまうのを必死で堪え、少女を退かせるた

め、声色を変えて意味深な笑みを作る真子。

「…………」 

 すると、少女はすこし考え込み、

「うう……、わ…わかった。あしたにする」

 まだ不満気味の表情ではあったが、それでもどうにか最後の真子の表情が効いた様

子で、少女はの真子の頭上からおずおずと離れていった。

「………ふう」

 ほっと安堵の息を漏らす真子。

 そのとき、自分の寝床に戻りかけた少女が突然振り返った。

「あ…そーいえば、剛にーちゃんは?」

「…えっ?!」

(……!!)

 真子はもちろんだが、『タオルケットの中』もかなり驚いたらしく、しばしその動きを

止め、なにやら硬直した様子。

 ……舌でも噛んだのだろうか。ざまみろ。

「え…?…あ…あ、ああ…とととトイレじゃないかな?」

 だがむろん、そんな剛の身を案じている場合ではない。完全に裏返った声で、なんと

か切り返す真子。

 「ふーん、そっか。じゃ、おやすみなさ〜い」

 我ながら、かなり不自然な反応に思えたが、どうやら少女はさして気にも留めなかった

らしい、おもしろくもなさそうな声を上げ、そのまま布団の海に没していった。

「お…おやすみ〜。また明日ね……」

 やっとの思いで声を絞り出し、真子は引きつった笑みを固めたまま、それを見送った。

 そして、少女の影が完全に動かなくなるのを確認すると………

「………はあ。」

 今度こそ。真子は深い安堵の息を吐いた。

 なにやらかなりの疲労感に見舞われているが、今は、まず……… 

 がばっ!!

「なぁぁぁんてことすんのよっ!? あんたはっ!!」

 タオルケットを捲り上げ、むろん潜めた声だが、激しい口調で真子は中に潜む不貞の

輩を怒鳴りつけた。

 だが……

 ちゅぅぅぅぅ……っ

 答える代わりに、剛は真子の太ももを軽く掲げると、ショートパンツの隙間から押し込

んだ唇をソノ部分に押し付け、強く吸い付いた。

「ひィッ!? アッ!! ちょ…待っ…あむぅっ…んんんんんんんんんーーーっ!」

 突然来た刺すような凄まじい感覚に、慌てて口を手で覆う真子。

 ブルルッ、と震える快感に耐えながら、首を傾け先程の少女が寝ている辺りに目を

やる。 

 ………………。

 影は動いていない。もう眠ってしまったのか、ともあれ気付かれてはいないようだ。

 ほっと息を着く……が、それも束の間。

 完全に調子に乗った剛の舌が容赦なく蠢き始めていた。

「んんっ! くふぅっ! んんんぅぅぅっ! ん…ん…んんん〜ッ!!」

 抵抗することもままならず、口を手で覆ったまま、頭を左右に振ってもがく真子。

 それでも何度か片手を伸ばして剛の頭を押さえ付けようと試みるが、断続的に来る

刺激に、いかんせん力が入らず、その度に振り払われてしまう。

(も…もう、手も足も出ないじゃない………って、足…?)

 もがきながら、ある事に閃いた真子は、即座にそれを実行に移した。

 

 

(4)へつづく。

 

 

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