ロフト・イン・サマー・V

Last Night〜長い長い最後の夜☆〜

(4)

 ぎゅぅぅぅぅっ!

「んぐっ!? ぐえっ!」

 まさに踏みつぶされたカエルのような声を上げる剛。

 そう、真子は開かれた両足を急激に閉じ、そこにあった剛の首を締めつけたのであ

る。

「うう…ごほっごほっ! かはっ! て…てめー…なんてことすんだよっ! こ…殺す気

かっ!?」

 真子が力を緩めた瞬間、猛然と抗議の口を開く剛。

 締められていたせいなのか、意識的に声を潜めたのか、咳き込むその声は掠れ

ていた。

「な〜に言ってんのよー? 剛が悪いんじゃない! ……ってそんなことより、

ふふん……大体、今自分の立場分かってる?」

 勢い込んで反論し始めたその口調を緩め、真子は、きゅっきゅっと剛の首筋に当た

る太ももに軽く力を入れて、したり顔で微笑んだ。

「う………」

「へへ……ほら! わかったらそこから出て、こっちに来る! …って、またよけーなこ

と考えたら………蹴るよ……」

「う…あ、ああ…わかったよ」

 両足の戒めから解かれ、首に手を当てながら、むっくりと身体を起こす剛。自分の

股間に射程を合わす真子の足を恨めしげに眺めながら、真子の隣に横たわった。  

  

「へっへー、昔よくやったね、プロレスごっこ☆ ま、あたしが勝つってのもおんなじパタ

ーンだったけど?」

 片肘ついて頬杖し、勝ち誇った笑みを向ける真子。

「ば…ばかやろ……ありゃ、わざと負けてやって……って、おいっ!?」

 憎まれ口を叩く剛の股間には、当然のごとく真子の手が伸びてきていた。

「い…? お…おい…そ…そりゃ、反則……」

「へへへ……大人のプロレスには反則なんてないの……って、あれえ? どーして

こんなになってるの?」

 当然在るべきはずの硬いものがそこになく、代わりに掌にぐにゃりとした感触を覚え、

真子は不思議そうな声を上げた。

「あ…あたりめーだろ。あんだけビビらせられりゃ……こーなっちまうんだよ」

「へぇぇ。そーなんだ。男のコの身体っておもしろいね………」

「あ…おい、そ…そんないじくりまわすなよ」

「えへへ…いーじゃん。ふーん、なんかふにゅふにゅしてて……って、え? きゃっ!」

 男の身体の不思議に感心したような声を上げる真子。と、なおも優しく擦り続けている

うちに、ソレが突然びくんと動いた。

「あ…な…なんか動いたよ?」

「あ…あのな…だから、そーやって、触られ続けりゃ…あ…あたりめーだろ…う…くぅ…」

「そ…そーなんだ……ふーん……………んふ☆」

「う…く…あぁ…ま…真子…」

 どうも、偏った感のある真子の知識に閉口しながらも、剛は、その部分部分を確か

めるようにうごめく真子の手に、次第に身をゆだねていった。

 そして……

「ね…剛……」

「ん……?ああ」

 剛の股間に手を当てたまま、真子はゆっくりと身体を合わせていく。

 潤んだ瞳で見つめられ、優しい笑みを浮かべた剛のまぶたが閉じられた……

「………………………………」

 いろいろとドタバタあったが、今、ようやく二人の時間が訪れたようである。

 ぴったりと身を合わせた二人の間に、しばしゆるやかな時が流れる……

  とくん…とくん……

 剛の胸板に頬を乗せ、目を閉じる真子。徐々に高まる剛の鼓動が耳に届く。

 同時に、

 どくんっ!

 股間に当てている手に、大きな脈動。

 にわかに隆起する剛のモノに、中指辺りが小さくびくんっ、と跳ね上げられた。

「………あ」

 反射的に顔を起こし、真子は剛の顔を仰ぎ見る……が、剛は目を閉じたまま、動く

素振りは見せなかった。

(ふーん、好きにしろってことね……)

 剛の無言の答えをそう解釈し、真子は突き出した舌をゆっくりと剛の胸の上に這わ

せていった。

「んっ……」

 軽い刺激に、一瞬顔をしかめ、さらに堅く眼を閉じる剛。

 そんな剛の様子に、真子は軽く微笑んだ後、つーっと舌をスライドさせ、小さくとが

った突起の回りを舐め回す。

「う…はぁっ…ま…真子……」

 吐く息と共に、剛は手をくしゃりと真子の髪の上に乗せる。

 髪を撫で付けられる感触に、くすぐったそうな笑みを浮かべ、剛を仰ぎ見る真子。

「ここ……気持ちいいの?」

「ああ……」

「んふふ…じゃ…もっとしたげるね……ん……ん…」

 陶酔しているような剛の声に、真子は不思議な喜びを感じ、さらに大胆に舌を這わ

せていった。

 ちゅ…れろ…ちゅ…ちゅ…

「ん…く……ぁ…」

「んふふ…さーて……」

 剛の反応に満足そうに微笑み、真子はトランクスの中に手を差し入れる。

(あ…)

 すると、そこにはさきほどのぐにゃりとした感触はなく、すでに良く知ってる固さを取

り戻しつつある剛の分身があった。

(す…すごーい! もうこんなになっちゃうの…?)

 握り締め、剛の熱い脈動を掌に感じる真子。横向きに身体をずらし、沸き上がる

興奮と共に唇をゆっくりと胸板から腹へと下ろしていった。

 流れ落ちた真子の髪が、剛の身体を下へ下へとくすぐりながら下っていく……

「あ…」

 むろん剛にはすぐに、真子が何をしようとしてるのか、分かった。

 するするとトランクスが下げられていく中、今更ながらだが、なんとなく恥ずかしい

ような、ためらわれるような妙な気持ちに覆われる。

(いーのか? させちゃって……)

 だがしかし、結局それを上回る大きな期待感が、動こうとする剛の身体をぐっと押

し止めた。

 もっとも、照れと妙な罪の意識で、さすがに真子が『そう』するところを見る気にまで

はなれず、剛は目を閉じて、じっと、その時を待つ。

 ぬる…っ

 なんとも言えない温かなものに包まれる感触。

 強烈な快感が剛の脳髄を直撃した。

「うっ…! くぅ…」

 たまらず、首を捻ったまま、薄目を開けて下方を伺う……と、そこには、

(う…うぉ!? な…なんだ?)

 目の前に現れた『白い柱』に驚く剛。良く見れば、それは身体を逆向きにし、剛の顔

の横辺りで膝を折り曲げた真子の太ももであった。

「え…? え……?」

 周囲の薄暗さも手伝って、瞬間、自分が『どう』なってるのか分からなくなり、驚きと

困惑に包まれる剛。

 また、その拍子に一瞬股間の感触が遠のいたのだが……

 ちゅばっ…ぴちゃっ……

「んっ…んむっ…んふっ……」

「……っ!?」

 身体の下の方から聞こえてくる弾くような水音と真子の呻き声で、剛は我に返り、

同時にとろけるような快感が鮮烈に甦ってきた。

「あ…! くぅぅぅ…」

 再度ぼーっとなった思考の中、目の前の白い肌に沿って、ゆっくりと目線を上げて

いく剛。

 そこには柔らかな生地に包まれた真子のお尻が、上半身の動きに合わせてゆら

ゆらと揺れていた。

「………」

 沸き上がる欲望の波が関を切ったように溢れ出し、剛はあたかもそれが自然の

行動であるかのように、ゆっくりと手を伸ばしていった。

 ぐっ。

 真子の腰辺り、ショートパンツのゴムのところに剛の指が引っ掛かる。

「え……? あ、や…だ…ダメッ!」

 腰に入り込もうとする指の感触から、瞬時に真子は剛の狙いが分かり、お尻を振っ

て逃れようとする……が、一瞬遅かった。

「あ…………」

 というより、かえって逃れようとしたその動きが仇となり、腰のゴムだけが頼りだった

ショートパンツは、あろうことかその中身のショーツもろともするりと引き下ろされてし

まった。

 薄闇の中、形の良い真子の白いヒップが剛の眼前に露になる。

「や…やぁぁぁ…んっ! た…剛ぇ…………え?」

 紅潮する頬をさらに赤く染め、下方の剛に訴えるような目線を送る真子。

 しかし、そこには驚くほど優しい笑みを浮かべた剛の顔があった。

「え……? あ……」

 躊躇する真子の足に剛の手が掛かる。

「………」

「あ………。う…うん……」

 自分に向けられた優しい瞳に、真子はなぜか逆らうことができず、太ももに感じるわ

ずかな手の動きに促されるまま、おずおずと片足を上げ、剛の顔を跨ぐように体勢を

変えた。

「あ…や…やっぱり……は…はずかしい…よぅ……」

 剛の眼前に自分のすべてを晒し、また自らそうした自分へのどうしようもない恥ずか

しさに包まれる真子。

 だが、弱々しい声でそう訴えるも、股越しから覗く真子は怪訝な表情のまま、目だけ

は剛のすることをじっと見入っていた。

 そして………

「……んっ」

 首を持ち上げた剛の長く伸ばした舌がそこに届いた。

「あっ!! んん…っ!」

 例えていうなら、何か鋭いものでくすぐられたような感覚。

 びくんっ、と大きく身体を震わせ、真子は首をすくめた。

 むろん、これはほんの序章。すぐさま蠢き始めた剛の舌に、真子は……

「あ…くっ! ん…くふぅぅぅ……んっ…んっ…あ…! ああぁ……っ」

 すでに滴るほど潤っていた真子のその部分。這い回る剛の舌が、特に敏感な部分

に当たる度、真子の身体が小さく跳ね上がる。

 ……あられもない格好で、その部分を弄ばれている……それも大好きな……剛に。

 真子は恥ずかしさで気が狂いそうだった……が、同時に、

(…あ…でも…や…ヤダ…なんなの……これ……この感じ……?)

 もう一人の自分が、そうされることを心底待っていたことを知る。

「ん…んああっ…く…ふぅっ! や…っ…やだ…はずか…しいっ……で…でも……」

「……でも?」

 思いがそのまま口に出てしまった真子。そしてそれを目敏く聞き付けた剛が動きを

止め、聞き返す。

 先程の優しい笑みとはうって変わって、首をすくめ、股ぐらの向こうから覗き込む剛の

顔には意地悪い笑みが浮かんでいた。

「……!!」

 それを見た瞬間、真子の中で、沸き上がり形を成そうとしていたもう一人の自分が、

なりを潜め、代わりに、戻る理性と共に猛烈な恥ずかしさが込み上げてくる。

「…………っ!」

 これまでになく、かーっ、と赤く染まった顔で剛を睨み付ける真子。

 だが、こんな状況でそんな顔をしても、それはただ男の欲情を煽るだけである。

「ふふん……なんだよ、その顔? んー?」

 むろん剛もそんな男の一人。真子の態度を面白そうに眺め、再度舌を突き出し、

先程にも増して、そこにむしゃぶりついていった。

「あ…ああっ!? や…はうっ!! んくぁぁぁっ!」

「んっ、んっ、ほら、どーした? もっかい今みたいな顔してみ?」

(あ…っく……悔しいぃぃ……み…見てなさいよ!)

 間隙を縫って、さらに意地悪く言ってくる剛に、真子は心の中でそう舌打ちし、

下半身からくる刺激に片目をつぶって耐えながら、握り締めている剛のものへ

目を移した。

 苦痛に歪む真子の表情が、一瞬、妖しい笑みに変わる。

 獲物を狙う獣の眼光携えて。

 小さく突き出された赤い舌が、彼女の薄い唇に淫らな輝きを生む。

 にっ、と開いた口元がなまめかしい笑みの形に歪んだ。

「ん……あむぅっ!」

 首を寄せたか、引き寄せたか、真子はためらうことなくそれにかぶりついていった。

 

 

(5)へつづく。

 

 

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