ロフト・イン・サマー・V
Last Night〜長い長い最後の夜☆〜
(6)
「っく……つ…つい……何よ?」 それでも、そんな剛の行動がにわかには信じられず、訝しげな口調で尋ねる真子。 「い…いや、あんま可愛いもんで……つい……」 「……!? ば…ばか! なななな…なに言ってんのよ? こんな時に……ば…ばっかじゃ ないの…」 「ば…ばか…ってこたねーだろ!」 突然の剛の言葉に、慌てふためき、思わず罵倒の言葉を浴びせる真子。 また、それによって、剛も自分の言った言葉が急に恥ずかしくなり、照れ隠しの 怒声を上げた。 「くそ……じゃ、もっかいやっちゃうぞ……」 ふてくされたように、そう言って剛は大きく腰を後ろに引く。 「あ!……ひ………」 恐怖に歪む真子の顔……だが、 「そぉれっ!………なーんて、な」 「え……?」 腰を引いたその動作のまま、剛は真子の中から自分のモノを引き抜き、そのまま、 改めてゆっくりと、優しく身体を重ねた。 「え…え…え? な…何で?」 今一つ状況が飲み込めず、真子は首の後ろ辺りにきた剛の顔に振り返る。 「何で…って、ああ、こーしないとまた動かしたくなっちゃうから…よ。 ………その、ほんとーにごめん…な。つい、また夢中になっちゃて………。 あの…さ…痛くなかったか?」 心底申し訳なさそうに言う剛に、真子はきゅんっ、と胸が切なくなる。 「や…やだ……そ…そんな…謝らないでよ……………そ…それに…い…痛くなんか …なかった…よ」 「そっか………」 気まずそうに言う真子の言葉に、剛は静かに頷き、安堵の息を吐いた。 落ちかけた沈黙。だが、それを嫌うように真子が口を開く。 「で…でも…剛…」 「ん?」 「た…剛は、まだ…なんでしょ?」 「ん…ああ…ま…まあな……けど……」 「いーよ」 「え…? け…けど……」 「ん…ってゆーか、あ…あたしも……また……みたい…なの」 「え……?」 言われて剛は、下の方へと意識を配る。すると、真子のお尻に挟まれた自分の モノが先程と同じように…いや、以前にも増して溢れる真子の熱い蜜で濡らされて いるのが分かった。 「………あ。」 「ね? でも、そのかわり、今度はホントに優しくしてね……あたし…すごい敏感に なって………あ!」 言葉途中で、小さな驚きの悲鳴を上げる真子。 そう、溢れる真子の泉に敏感に反応した剛のモノが、手を添えることもなく、ぴくんっ と起き上がり、 「ん…ああぁっ!」 その勢いのまま、本当に吸い込まれるように、真子の中に没していってしまったのだ。 「え…? あ…っくぅぅぅんっ! た…剛…ちょ…っとぉ」 「え…? はは…入っちゃった……」 「ん…っくぅっ、は…『入っちゃった』…じゃないわよぉ……あ…ん…んんっ……」 とろけるような快感に見舞われながら、真子は首を捩って非難の声を上げる。 「だ…だって、本当に入れようと思ったわけじゃなく、勝手に……う…くっ…な…なんだ? す…すげー気持ちいい……」 「え? な…なに言って……あ…? あぁっ…やだ…あたし…も……す…す…ごいっ… なんなの…こ…れ……あ…あ…ああぁぁ…んっ!」 二人とも、気付くのが遅れたが、それは今までに感じたことのない快感であった。 といっても、激しく突き抜けるような、気がおかしくなるような快感ではない。 文字通り、言葉通り、本当に『気持ちいい』のだ。 表現するのは非常に難しいが、あえて言うなら、暖かい海…ゆったりとたゆたう波 に優しく揉まれているような…… 「う…くはぁぁぁ…ん…あ…はぁぁぁ…た…剛ぇ…い…イイぃぃ〜……」 とろけるような甘い声を上げながら、うっとりと恍惚の表情を浮かべる真子。 腰の動きはほとんどなく、繋がったまま、ただ身体を合わせているだけなのに、 染み込んでいくような快感が、全身に広がっていく。 まるで、包み込んだ『剛』の脈動ひとつひとつまでが鮮明に伝わってくるようであった。 「やぁぁぁ…ど…どうしよ…う…はぁぁぁ…あ…あたし…あ…んっ……な…なんなのぅ… ……これ…ぇ………」 身を捩り、何かを求めるように、前方へ手を伸ばす真子。 一方剛も、この尋常ではない気持ち良さに陶酔し切っていた。 自らの分身が脈打つ度、それに反応しているように、真子の内部の柔肉がうねうね と絡み付いてくるのがはっきりと分かる。 少しでも動いたら、それこそ達してしまいそうだった。 「はぁぁ…わ…わかんねーけど……くぅぅぅ……お…俺…も…もう…やばい…かも…」 剛の震える手が、伸ばした真子の指先に届き、それに気付いた真子が手首を返し てその大きな掌を優しく包み込む。 打ち震えるその暖かい掌からも、剛の思いが流れ込んでくるようだった。 「ん…あ…は……い…いい…よ……あ…あたし…は…いつでも……だ…から…剛の ……好きな…ときに………」 艶っぽい悦びの笑みを浮かべて背後の剛を振り返る真子。 玉の汗を顔中に光らせ、うっすらと紅色に火照るその頬に、乱れた髪が張り付いて いる。 今にも涙が零れ落ちそうな潤んだ瞳で見つめられ、剛は、 「ん…っ!」 理性も感情も弾け飛び、思いのままに真子の唇を奪った。
ひとたび……… ………………………………大きく腰を引いて。 ……………………………………その勢いのまま。 ……突き入れる!
「……………………………あ……………………………っ!!」
水を注ぎ、膨れ上がった風船が弾けたときのように、 二人の頭の中に、真っ白な闇が広がった……………………………
数分後、 荒い息をようやく整えた二人。安らかな余韻に浸りながら、ちょうど、互いの布団の 間のところで、身を寄せ合っていた。 あまり、寝ごこちのいい場所とは言えなかったが、『何か』あったとき、この場所なら、 言い訳がしやすいためである。 「……ね?」 剛の腕に包まれ、その広い胸板を指先で弄んでいた真子が、何か思い出したように、 顔を上げた。 どこか不安げな面持ちである。 「ん?」 「う…うん。あ、あのさ、あたし…変…なのかな?」 「え?」 「さ…さっき、剛言ってたじゃない。あ…あたしの声…どっから出るのー? とか…… あたし、今日もやっぱりいっぱい声出しちゃって……」 「へ…………?……………ああ…あはは」 一瞬何のことだか分からなかった剛だが、直ぐに思い出し、くすっと軽い笑みを浮か べた。 「えっ! やっぱり変? あたし?」 がばっと身を起こす真子。 「あはは……いや、へんじゃねー……と思うぞ」 「思う? 思う…ってのは、何よ? 不安じゃない。そんなの……」 「でも、ンなこと言われてもわかんねーよ。俺、お前以外とこんなことしたことねーもん」 「……………あ。」 あっけらかんと言う剛の言葉に、頬を染めて絶句する真子。顔を伏せたその表情が、 見る間に安心したような笑みに変わる。 「けど、やっぱヘンってことはねーんじゃねーか? AVなんかじゃもっと……」 対して、そんな真子の様子にまったく気付かず、話を続ける剛。 真子にとっては、今聞いた言葉で十分で、そんな事はもうどうでも良くなっていたの だが………… 「え…ちょ…ア…AVといっしょにしないでよ!」 さすがにその例えが聞き捨てならなかったか、憤然と言い返す。 「へ……? あ、ああそっか、ごめん……」 「……もう…………あ。でも……」 失言に気づき、素直に謝る剛に真子は、頬を膨らませそっぽを向くが、すぐに何かに 気付いたように、再度こちらに顔を向けた。 「でもでもー、剛はそんなに声出さないじゃん……?」 「ば…ばーか。それこそ男があーあー声出したら気持ち悪ぃだろが!」 「えー? そうなの? でも、こないだ見たビデオ……外人の男の人はもっと…… ……………あ。」 気づいたときには、もう遅い。じとっとした目で剛がこちらを見ていた。 「………ふーん? お前、そんなビデオどこで見てんだ?」 「え…あ…あの…えっと……と、友達のウチ……で、そ…その、お兄さん……の……」 引き寄せたタオルケットで顔を半分隠しながら言う真子。 「ったく、しょーがねーな、もう。女子高はこれだから……」 「き、嫌いになった……?」 剛の手に添えられた真子の手がその指先辺りをぎゅっとつかむ。 「ばか、なるかよ。ンなことで。ま、別に見ちゃいけねーっていう法律は…… あるじゃねーか……い…いや、ま、とにかく、ほどほどにしとけよ。あんま女の見るもん じゃねーし……」 「うん☆」 えらそうに説教する剛になぜか真子は嬉しそうに頷いた。 ………と、このままフェードアウトすれば、それこそ真子の望んだ『この旅行 最後の夜』とやらにふさわしいエンディングを迎えることができたのだが……… 「ところで…さ…」 「なあに?」 一通り話に区切りをつけたところで、妙にその言葉の調子を落とし、口ごもりつつ 言う剛に、真子は、幸せそうな笑みのまま、問い返す。 今度は、何を言ってくれるんだろう……☆ そんな淡い期待を胸に抱いて。 しかし。 「その……外人のビデオ、今度借りてきてくんねーか?」 「うん、いー……って、ばっ!? バカもう知らないっ!」 にこやかな笑みを瞬時に怒りに染め上げ、ごろんっ!と剛に背を向ける真子。 平謝りに謝る剛が、真子の機嫌を直すのに、それからさらに数時間を費やした のは、もはや言うまでもないだろう。 剛と真子、屋根裏部屋での長い長い最後の夜…は、こうして更けていった…… |
(7)へつづく。(もうすこしお付き合いください(^^;)