メイプルウッド・ロード
                     
〜#2.ジャグジールームの甘い霧☆〜

 

(10)

「はぁ〜〜」

 むろん、シャワースペースでも自力で立ってることができず、肩を外された瞬間、へ

な〜っとその場にへたり込む瞬。

「ん…っと。じゃ、出すよ〜☆」

 由美は背伸びをして、シャワーの口に手を伸ばし方向を定め、コックを捻る。

 シャーッ……

「うあぁ…つ…つめてーっ!」

 にわかに頭の上に降り注ぐ冷たい水に、タイルの上、足を投げ出した格好で悲鳴を

上げる瞬。身体をのけ反らせ、降りかかれ水から逃れようとするが、

「あはは…ほらっ、もっと頭出しなよ!」

 なんとも面白そうにはしゃぎながら、由美は瞬の頭に手を伸ばしその身体を引き戻

す。

「う…うああっ!ばっ…や、やめ……ひっ!ひぃぃぃぃ〜〜っ!」

 再び、瞬の情ない悲鳴が響き渡る。だが同時に、冷たい水を浴びたことで身体の自

由が戻り、

 ぱしっ!

 もがきながらも、頭を押さえ付ける由美の手を捉える。

「ばかやろっ…マジ冷てーんだぞ。お前もいっしょに浴びてみろよ!」

「え…あ…きゃぁっ!」

 ぐいっと手を引っ張られ、由美はぬかるんだタイルにたたらを踏み、そのまま瞬の身

体に重なっていく。

 むろん今まで瞬の身体にかかっていた冷水が由美の背中に……

「や…きゃぁ〜〜っ!つ…つめた〜いっ!」

「にひひ……だろ?」

「『だろ?』じゃないっ!あ…つ…つめ……ば、ばかぁっ…カゼひいちゃうでしょ!」

 怒声を上げて掴まれた手首を振り払い、由美はなんとか立ち上がってシャワー温度

調節のツマミを『HOT』の方へ回す。

 ざぁぁぁ〜。

 降り注ぐシャワーの水流に手を差し入れ、水が湯に変わるのを確認し……

「もぉ〜〜」

 頬を膨らませた顔で振り返り、

「あれ……?」

 非難の目線を落としたタイルの上に、だが瞬の姿はない……

 周囲を見回すいとまもあらばこそ。

 ぎゅっ。

「え…あ…ちょ…し…瞬っ?」

 由美は、素早く背後に回った瞬にきつく抱き締められていた。

 そう……冷水を浴びるなど、なんやかやとやってる間に、瞬はちゃっかり湯当たりから

回復していたのだ。

「ふふーん☆」

 余裕の笑みを浮かべ、また造作もなく、もがく由美を後ろから包み込む瞬。

「あ…ああっ…や…ちょ…だ…だめ…」

「ん…?だめ…って、なんで?お前さっき言ってたじゃん……『いーよ』って…」

「え…?あ…い…いや…だってそ…それは…………あ…む……っ!……んんっ…」

 肩越しに、からかうような口調で言ってくる瞬に言い返そうとして、だが由美の口は

振り返り様、そこにあった瞬の唇にあっさり塞がれてしまう。

「ん…んん…っ…」

(……ん…もう〜、だからって、こ…こんなトコで……)

 唇を重ねつつ、臍を噛む由美だが、背後からきつく抱き締められたこんな状態では、

むろん何がどーこーできるわけもなく。

(も…もう〜〜)

 力強く求めてくる熱い想いを背に、由美は半ば諦めたように自分の心をごまかしつ

つ、 瞬に身を任せていく。

「ん…ん…あふ………」

 身を守るように屈めていた背筋を伸ばし、身体を捻って瞬の頭に手を回す由美。

「……」

 それに応じて、瞬は抱き締める力を緩め、やさしく由美の身体をまさぐっていく。

 肌につたい、流れ落ちるシャワーの湯を辿るように……

「あ…や…やだ…瞬………」

 唇を離し、潤んだ瞳で困ったような笑みを見せる由美。

 だが瞬は構わず、離れた身体の隙間に手を差し入れ、由美の背中の蝶結びを解き、

「え……?あ…や…やぁ……」

 ふ…っと浮き立つような解放感を由美が覚えるより先に、その豊かな双丘に瞬の両

手が滑り込んでいく。

 …むにむに……

 背後から回された瞬の手のひらにわしづかみされ……揉みしだかれ……

 解放された由美の左右の乳房が、それぞれにやわらかくその形を変えていく。

「あ…や…あ…はぁぁぁ…ん……」

 由美の口から、立ち込める湯気よりも熱い息が漏れる。

 そんなエコーがかかった甘い喘ぎを聞きながら、瞬は隆起し始めた桜色の突起を指

で弾く。

 びくびくっ!

「ひぁぁっ!…や…ああっ…はぁぁ〜〜ん……」

 胸の中心から刺すように走った感覚にぶるぶるっと身を震わせる由美。足元がおぼ

つかなくなり、ヒザががくがくと震え出す。

 たまらず前のめりになって、前の壁に手を伸ばしふらつく身体を支えるが、それをす

かさず逃さぬように、瞬はその背に再度ぴったりと肌を合わせていく。

 そして、

「……由美……」
                         
うなじ
 濡れて張りつく髪を避け、しずく散りばむ首筋に唇を添える瞬。

「あん…っ☆」

 ぴくんと震える由美の背に舌を這わせ、そのなめらかな肌に流れ落ちる水滴とともに、

背筋に沿って下へ下らせる。

 ぞくぞくぞく〜〜っ!

「やっ!あ、あ、あ………はぁぁぁぁ〜〜………」

 熱い湯を浴びながらも、寒気にも似た痺れるような感覚が駆け巡り、由美の身体が

小刻みに震えだす。

 次いで瞬は、乳房をまさぐる片方の手のひらの動きを止め、撫でるように脇腹を伝わ

せて腰の結び目に……

「あ…ちょ…瞬…」

 ぼーっと白み始めた意識の中、由美は微かに我に返る……が、

 するりっ……

 片方のヒモが解かれ、支えを失ったマリンブルーの布は濡れた肌に引っ掛かりつつ

も、 肌をつたうシャワーの湯に押し流されていき。

(あ……)

 由美の足首に、はらりと落ちた布地の感触。

(…や…ちょ…ま…マジにここで……?)

 覚悟したとはいえ、この初めてのシチュエーションに。またあまりの瞬の手際の良さ

に、戸惑いの色を顕にする由美。

 が、むろん得も知れぬ期待と不安の中、身体は動かず……

 またそのスキに、そろえた両足の隙間を広げるように割って入ってきた瞬の手が。

(……え…?)

 太ももに伝う水滴をすくい上げるように登り詰めてくる彼の指先の感触に……

「あ……、や…はぁぁ〜んっ!」

 由美は肩をすくめて震え上がる。

 また、その間にもどんどん力の抜けていく両足が、瞬の手によって徐々に開かれて

いき……

(あ…ちょ…ちょっとぉ〜)

 前のめりに壁に手を付き、崩れ落ちそうになる身体を支えつつ、まったく無防備にも足

を広げたこの格好……。そんな姿を瞬の前に晒してるかと思うと……

(や…や〜…もう〜……)

 由美の恥ずかしさはピークに達し、訴えかけるような目で背後の瞬を振り返る。

「……し…瞬……」

 潤みきった瞳で見詰めた先、そこには……

 

(11)へつづく。

 

 

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