メイプルウッド・ロード
〜#4.ワーフの夜は青天の霹靂〜
(5)
………………いや別に――― 夢のような素晴らしいシチュエーションで、生涯忘れられないとろけるようなひとことを、 期待していたわけでは、むろんない。 遅かれ早かれいつかは聞くことだろうし、幼い頃には、対する相手も不明のまま、来たるべき その時に備えて、己のリアクションをあれこれ想像してみたこともあった………。 月並みな思いだが、どんな言葉だろうと、気持ちさえこもっていればそれでいいと、思っていた。 思ってはいたが―――― モノには限度と言うものがある。 タイミングで――――――――― 『うっかり口すべらしちゃいました。でもってまあいいか言っちゃたモンはしょーがないし…』然と した形で、ソレを耳にしようとは………夢にも……………………………… 「……って、ば、ばかあぁぁぁぁっ!!」 「……え?」 「『い……言っちまった』ぢゃないでしょぉぉぉぉ!どぉぉすんのよコレぇぇぇっ!!」 「え…あ……いやその……ご……ごめん…」 「あやまるなああああああ〜っ!!!!」 「い……いやでも……その……」 「うわぁぁぁぁ〜っ!うるさい!うるさい!うるさああああいっ!」 ……………まさにこの、あまりといえばあまりの事態に、むろんもちろん至極当然、まったくもって あたりまえと言うしかないが、烈火のごとく泣き叫び業火のごとく激怒し猛火のごとく荒れ狂う由美。 またそれを、なんとか宥めようとして、さらに火に油を注ぐお約束通りの瞬。 そんないつもの定例行事のような…といっては、さすがに今回ばかりは由美に対して気の毒な気 がするが……そんなやりとりとゆーか攻防が、しばらく続き………………… ………その後……… そろそろホテル側から苦情の電話が鳴りそうになるその直前で、二人の大騒ぎは、とりあえず鎮静 の途をたどっていった………。 そして―――――― 何もかもどっかにすっ飛ばされ、ところどころ下のマットレスが見え隠れする、くしゃくしゃに乱れた シーツの上には―――― 「……………」 「……………」 ひざを抱えて頭を伏した由美と、またやっちまった然とした表情を俯かせ、ちんまり座する瞬の姿。 そんな、真空の宇宙空間を思わせる沈黙が支配する室内で―――――― 互いに、現在のこの状況を打開する手立てはなく、しばし押し黙ったままの二人だったが…… 「………………で…?」 「………………え…?」 どーにかこーにか、怒りをひと段落させ、抱えたひざの間から目だけを覗かせる由美に、瞬が顔を 向ける。 そして…… 「……どーするつもりよ……この始末……」 低く押し殺したような声で問う由美に、 「い…いや、どーするっていわれても……。じゃ…じゃあ今回は聞かなかったことに……」 「ムリに決まってんでしょ。そんなもん……」 とりつくしまも何も、四方断崖絶壁の態度で、瞬の言葉をばっさり切り捨てる由美。 またここで、由美はようやくその頭を重そうに起こし、折り曲げていた両足を投げ出して…… ぼふっ。 憤然としたまま、仰向けにベッドに横たわる。 ふぁさっと、なびく黒髪が無造作に白いシーツに広がり、甘いシャンプーの香りが周囲に舞い散る。 それを見下ろす瞬の眼下、白い長Tの中で、ゆさっと重そうに双つのふくらみが揺れるが…… むろん今はそんな場合ではない。 「…………。」 ともあれ仕方なく、おずおずと、やや距離を置いて自らもその隣に身を横たえる瞬。 ―――しばし、二人並んで宙を仰いだまま、沈黙の状態が続き――― 「………ねえ……」 先に口を開いたのは由美。 「……ん…?」 いまだ天井を見上げ、無表情のまま発した由美の声に、瞬が力ない声で聞き返せば、 「……自信あんの?」 ぼそっと、呟くように言った由美の言葉に……瞬は、半身を起こし、即座にその表情を真剣 なものに変え、 「え?あ…ああ!ぜったい幸せにす……」 だが勢い込んで言った瞬のことばを遮り、由美は、 「ばーか。あたりまえでしょ。んなこと」 「……?」 「そーじゃなくて、その前よ……」 そう言う由美の口調は静かで、まこと冗談やシャレを許さぬ重いものだった。 「その前?」 静かな口調の中、どこか寂しさを感じさせるような由美の言葉に、昨晩の車内での会話が思い出 される。 そう、昨夜は、うやむやのうち話が途切れてしまったが―――――― 「………………。」 押し黙り、自分の反応を待つ由美の様子から、さすがの瞬も今回はきちんと答えねばならない だろうことを察し…… 「んーあ〜、その話か……」 周囲にわだかまりだした―――あまり得意ではない、もの哀しい空気を嫌うように、瞬は頭を わしわしかきつつ、 「ん〜……まあ、俺もちらっと考えたんだけどよ……」 苦い表情になりながらも重い口を開いていく。 「……でも……結局な……お前が―――なに言いてーのかわかんなか………」 ぼかっ! 場の空気を完全にムシしたような瞬の言葉を皆まで言わさず、由美のぐーパンチが、瞬のテンプル に突き刺さる。 「んあっ!?ってーな!なにすんだよっ!」 「ばかぁっ!ナニスンダヨぢゃない!あんたいーかげんにしなさいよっ!ナニ?その天然パーマの 中身はやっぱ天然ぱーしかはいってないわけっ!?」 もっともすぎる怒りをぶちまける由美だが、対する瞬も今回ばかりは怯まず、 「……って、ばかやろっ!まだ話の途中だろがよ!最後まで聞けって!」 「……ん〜、なによ?」 眉間にしわ寄せ、睨みつけて聞く由美に、瞬はややキレ気味に続ける。 「だからよー、帰ったらどーする、どーなるっつーことで、なんでお前がさびしそーになる意味が 俺にはイマイチよくわかんねーんだよっ……」 「……はぁ……?」 なんだか根本からわかっていないような瞬の言葉に、一時怒りを忘れ、本気でその中身の具合 を心配しかける由美だが……、 むろん瞬は気にも止めず、やや気持ちを落ちつかせながら、 「つーかよ…日本に帰ってから…ってゆー話なら、俺はやっぱ、お前とドコ行こーかな…とか、 もーちょっと東京のメインスポットのこととか調べとかなきゃいけーねーかな…とか、東京タワーの ライトアップ、消えるまで見る――とか言いだしそうだから、ソレどーしよーとか―――― とりあえずそーゆ―コトしか思いつかねーんだけど……?」 「…………はぁ〜〜?」 ベクトルが全く違う瞬の話に、すっとんきょうな声を上げる由美。……がその反面、そんな瞬の 楽天的な内容(特に後半)を想像し、ちょっと心惹かれたりもするが、慌てて思考を戻し…… 「い……いや……そーじゃなくてっ、帰ったら、今みたいに毎日会えるわけじゃなくなるんだよ? そういうこと、気になんないの? 静岡⇔東京ったら、一応旅行のキョリだし……」 「……ん〜、まー言われてみっと、そりゃそーだな……」 「でしょ?」 「んでも、それが?」 この、これ以上ないと思われる重大ゴトをさらりと流し、こともなげに聞き返してくる瞬に、 由美は再びまなじりを吊り上げ、 「……っ? そ、それが?…って、瞬…あんたねー、あたしら今、それこそ毎日一緒で…家族みたい な生活してるんだよっ。そ…それが……急…に、はなれ…ばな…れに…なっ……」 途中、巡る想いが頭の中であらわになって、言葉に詰まる由美。 だが今は、それをぐっとこらえて持ち直し、 「……不安にならないの?」 「不安って……何の不安だよ?」 「だからっ!状況も環境も何もかも変わっちゃっても…あたしたち、今までどおり付き合っていけるの か…っていう話よ!」 屹然とした態度で言う由美に、だがなぜか瞬は眉をひそめ、困ったような顔になっており――― 「あぁ〜?んだよ…結局おめーも前の智也みたいなコト言い出すのかよ?」 「え?」 どこかイラついたような口調で言う瞬の声に、驚き向き直る由美。 また瞬は、何かを思い出すように語調を和らげ、 「あーそっか、そん時お前いなかったっけ?」 「なんの話よ?」 よくわからない瞬の言葉に、由美が聞き返すと、瞬は、なんだかうんざりしたような顔になり、 「いや…だからー、コッチで仲良くなってカレシカノジョの仲になったって、そんなもんはニセモノ… …つーか、このシチュエーションだから成り立つ関係で……よーするに、こんなトコロで芽生えた 恋愛感情なんて酔っぱらったトキの錯覚みてーなもんだから、現実(日本)に帰ったら、酔いが 醒めるみてーに、その気持ちも冷めちまうのがオチ……っつーよーな話だよ」 そんな吐き捨てるように話す瞬の言葉を聞きながら、由美は、 (…う〜ん…夢も希望もないとゆーか、さすが智也とゆーか…でも…一理あるな〜……) などと思いつつ、 「ふーん……智也…そんなコト言ったんだ……」 「ああ…でも、そんトキは俺もマジギレしちまって、どー言い返したかも覚えてねーんだけどよ…… けど……冷静になって、よく考えてもやっぱ俺はそーとばかりは思えねーんだ」 「え…?」 言葉の後半、どこか凛としたはっきりとした意志を示すような瞬の語調に、少し驚き気味に由美 は問い返す。 すると瞬は、またしても髪をがしがしやりつつ、 「ん〜、だってよ、こんな短時間でお互いのコトを知り合えるなんて、そーそーねーだろ?」 「ん?……うん…?」 なんだかまた、よくわからないポイントから導入する瞬の切り口上に、首を傾げつつ、先を促す 由美。 瞬は続ける。 「だから―――付き合う前から…それこそお前の言うみたいに家族同然で寝食ともに、なんてのを 結構しててよ………その間、お互い…カッコつけたりするヒマもあんまなかったろ?」 「……?……」 だが、やはり瞬が何を言いたいのかよくわからず首を傾げる由美。 そんな様子を見やりつつ、瞬は自らの説明下手を悔やむように顔をゆがめながら、さらに掘り下げ て、 「あー、だからつまりだな……………今日やらかしちまったコトをフォローしたり、次会うときは こうこうしようとか…カッコつける間もなくまた次の日が来てよ、また会って…またなんかやらかして ……フォローする間もなく、また次の日…ってゆー繰り返しだったろ?」 「あ…。まあ……言われてみれば……」 その内容に一応得心したか、うなずく由美に、 「だろ?しかも慣れねー外国で……日本での付き合いだったらさらさなくてもいい恥も、お互いさらし合 たコトもあんべ…?」 「……う。ま、まあね……」 苦笑を浮かべて言う瞬に、思い当たるフシが2、3…いや、それ以上に見つかり、やはり苦い表情 を浮かべて頷く由美。 瞬はそんな由美の頭を、『おたがいさま。おたがいさま』というように、ぽんぽんと軽く叩き、 「だから……そーゆーカッコつけてねー状態で、芽生えた感情ってのがよ、酔っぱらった錯覚? とかとは、ちょっと違うんじゃねーかって思うんだよ。俺は。」 と、そこまで言って瞬は一息入れ、両手を頭の後ろで組んで、天井を見上げつつ、 「けどまあ…智也が言ってたことも全くわかんねーってワケでもないんだけどよ、けど…すくなくとも このシチュエーションじゃなきゃ成り立たねー関係…つーのは、俺たちには当てはまんねーって思うん だよ。 結局どんなシチュエーションだったとしても、俺はその………お前に…ホレてたと思う…し、よ」 隣から感じる、じぃっ…と注がれる由美の視線と、自ら発する言葉にテレて、鼻の頭をぽりぽり掻き ながら、頬を染める瞬。 またそんなテレを払うように、瞬はさらに続ける。 「んでまあ…お前の言ってた不安っつー話だけどな……でも、不安不安つーけど、そんなん言い出す んなら、二ヶ月先とかそんな先の話じゃなくて、今日…今このあとすぐにでも不安だぜ…俺は…」 「ん…?なんでよ?」 問う由美に、瞬は愚問中の愚問を答えるように、眉をひそめながら、 「いつなんどき…お前に愛想尽かされんじゃないかって……それこそ、毎日ハラハラドキドキの連続 だよ」 「……ばか。」 心底あきれ返ったように返しつつ、由美はごろりと頭を転がし、一時瞬から視線を外す。 対して瞬は、そんな由美の様子に、多少困ったような笑みを見せつつも、 「はは……だからまー、結局のところ帰国してはなればなれになるだとか、今みたいなのとは違う シチュエーションになるだとか、俺にはあんましよくわかんねーんだよ。 そんなの結局、実際そーなってみないとどう心配すりゃいいかもわかんないしな。 大体よー、東京⇔静岡が旅行のキョリとか言ってたけど、んなこというなら、このヴィクトリア⇔サン フランシスコなんて、ほとんど本州縦断とおなじキョリだぞ。それこそお前、こんなの二泊三日の距離 じゃねーだろ?」 最後の方はどこか問題が違うような気もするが……ともあれ、瞬の言わんとしている事がわかり、 由美は、 「ん〜まあ……そー言われると……」 とりあえず、納得したような態度を見せる由美に、 「だろ?だから、結局行き着くトコは―――」 「『やってみなきゃわかんない』?」 「……う。そ…そーだよ。……つーか、なんでお前俺のセリフ取るわけ?」 シメの言葉を取られ、恨みがましい目を向ける瞬。 そんなに、そのセリフでキメたかったのだろうか………。 また、由美はそんな瞬の非難を微塵も気にせず、軽快な笑みを見せて、 「いやだって…なんか、ヘンなタメ入れてるから、絶対そこで言うのわかったもん。 瞬の代名詞?みたいなもんでしょ…ソレ。 つか、こんだけあんたと付き合ってて…そんくらいわかんないでどーすんの……」 (……あ……。) 言って由美は気付く―――自分が思ってた以上に、瞬への理解が深くなっていることに―――。 そして、短い時間ながらも、彼との間に築いた絆は、なまなかな距離や環境の変化などでどうこう できるほど弱いものではない、と思えてしまってることに。 また同時に、ここ最近、胸内にわだかまっていた薄霧のような不安が、ウソのように消えていくのを 感じ…… (……そっか……そーなんだ………) そして由美は想う…… 悩みを、こうやって吹き飛ばしてくれるんだろうな……などと。 (……ま…飛ばさなくていいモノまで、いっしょくたに吹っ飛ばされそうな気もするけどね……) 心中、そんな悪態を付け加えながらも、由美の頬はうっすらと紅く染まるのであった。 また、はからずもそれは、先ほど聞いた瞬のプロポーズ(?)に、そっとうなずいた瞬間でもあり―― (………………………………。) ―――がしかし……そう考えると、やはりアレはないだろう? 室内に満ち始めた穏やかな空気の中、由美は、なんとなく腹立たしさを思い出し…… 「瞬……」 ふいにつぶやく由美の声に、 「ん?」 両手を頭の後ろで組んだまま、向き直る瞬。 すると由美は、その瞬の手を引っ張りほどかせて、半ば強引に腕枕をセッティングさせると、 ごろごろと転がって、瞬の腕の中に入っていき、 「あのさ…さっきのアレ……やっぱ聞かなかったことにしてあげるからさ……」 「…え?」 「……もっかい…ちゃんと言い直してくれる?」 にんまり笑みで言う由美の言葉に、むろん瞬は慌てふためき、 「え゛?………い……いいいいいい今……?」 「うん☆」 「え…あ…い…いいいいや…今は…む…ムリだって……」 「えーなんで〜?」 「い…いや……なんでって言われてもその……だから……え…えっと……その……」 (くくくくく……♪) 面白いくらいに予想通りのリアクションを示す瞬に、ほくそ笑む由美。 このままとことんまで追い込もうとも思ったが…… (んーまあ…先は長いみたいだし、今、ムリに言わせるよりも、コトあるごとに思い出させて、 こーやってからかう方があとあと長く楽しめるかなー☆ なんかねだるときも便利そうだしね♪) …などとして、とりあえず今回はケリがついたとしてあげることにする。 その一方、そんな悪魔のごとき企みを立てられてるともツユ知らず、瞬は、相変わらず目を 白黒させてしどろもどろ。 「え…い…いや…あ…あの…でも…ま…マジ…ちょ…待っ………」 「ん〜、わかったわかった、じゃあソレはまた今度…瞬の心の準備が出来たときに…ってことに してあげるよ」 あきれたようにそう言って、どうしようかと本気で苦心している瞬を、解放してやる由美。 「え…あ…お、おう…」 結構あっさり引き下がった由美を多少訝りつつも、瞬はとりあえず、ほっと安堵の息を漏らす。 だがむろん、これだけで済みそうに無いのは明らかで…… 「んじゃ、まあ…その代わりにって言っちゃなんだけどー」 いつものイタズラっぽい笑みを浮かべて言う由美に、 (ほら来た。) などと思いつつ、瞬は身構える。 だが……………………、 「瞬……」 つぶやくように呼びかけた由美は、 「…………」 瞬の腕の中……顔をこちらに向けたまま、その大きな瞳を閉じていた。 一方、今度はどんな難問・要求が来るのかと待ち構えていた瞬だったが、そんな由美の仕草で、 その意図がわかり―――むろん、そーゆーことなら望むトコロ…とばかりに、由美の肩にそっと手 を添えるも……… 「………。」 どうやら、今までの経験から、トラップを警戒しているようだが………… 「……(ん?)…」 うっすら目を開け、こちらの様子を伺う由美の様子から、どうやらワナや引っ掛けの類いではない だろうことを確認し、 「ん…っ…」 瞬は優しく唇を重ねていった…………。 ヒーターの温風が、ベッド上の二人の身体をやさしく撫で……重なり合ったふたつの手のひらが 堅く握り締められる……。 「ん……んん……っ」 「ん…っ…んむ…っ…んっ…んっ」 何にもはばかることなく、二人は……長く――ゆったりと……甘いくちづけを重ね合い…… やがて、 「んふ……っ☆」 「な……なんだよ……?」 唇を離し、さあこれからという段になって、意味ありげに笑みを漏らした由美に、躊躇する瞬。 「くふふっ☆……いや、あたしたち…こーやってフツーの流れでにえっちに入ってくの初めてじゃ ないかな〜ってさ……」 なんだかテレてるような、それでいてどこかはしゃいだような口調で言う由美に、 「え゛?…い…いや、そんなコトわ……」 困惑しつつ、過去へと思いをめぐらせる瞬の頭の中に……思い当たるフシがいくつもよみがえる。 -------湯当たりしてヒドイ目にあったジャグジーでのあの時…… ----そして、昨夜の車中………etc…と、確かに、パッと思い浮かぶ中でもフツーのシチュエー ションと思えるものは皆無で…… 「あーいや……そ、その……なんだ……なんでもふつーがいいとは限んないし……」 なんだか困った風に言いよどむ瞬に、 「くすくす……瞬、なんかムリヤリまとめよーとしてるでしょ?」 「う…うるせ…んじゃ、こっからフツーじゃないようにすっか?」 「んふふ〜ん☆ できるの〜?」 からかわれ、ムキになる瞬に、由美はさらに挑発的な笑みを浮かべる。 むろん、そういう態度がさらに瞬に火をつけることになるのは承知の上で。 そしてまた、それを知ってか知らずか…いや、むろん知らないだろうけど。 ともあれ、まんまとそんな安い挑発に乗っかり、瞬は…… 「おー!知ってんだろ?俺のもーいっこの代名詞(?)」 「え……?あ…ひょうへ……んんっ!? ん……んぅ…っ……」 何をか言いかけた由美の唇に、再び…瞬の唇が荒々しく重なっていった……。 |
(6)へつづく。