メイプルウッド・ロード
                     
〜#4.ワーフの夜は青天の霹靂〜

(9)

 そして―――

 体の様々な部分から襲い来る刺激に、もはや自分がどんな格好になっているのかもわから

なくなり……

「ああ…んっ…はぁぁぁ……んっ…やっ…ん…っ…んんぅ……ん……っ」

 熱っぽい嬌声を口に身を震わせ、目をぎゅっと閉じて喘ぎ悶える由美……。

 せつなげに捩る身体は、今や瞬の愛撫をより深く感じようとするモーションに傾いていた。

 そんな中……ほんの少しだけ、瞬の愛撫の手が緩んだとき、

(―――んぅ……?)

 由美はふと、自分がどんな格好になっているのかが気になり、次々来る快感の僅かな間を縫っ

て、薄目を開ける……。

「……ん………」

 気だるげに瞼を開き、最初に由美の目に入ったのは、さきほどシャワー後の自分が腰掛けた

隣りのベッド。

 天井ではなく、それが最初に目に入ったということで、由美はまず、自分が横向きになっている

ことがわかった。

 また、見えているのはベッド足元の部分…そして、遠巻きに部屋入口のドアが見えている位置

関係から……どうやら、自分の身体がベッド上で180度回転したということ。加えて、耐えがたい

快感から逃れるためとはいえ、相当もがいたらしいことを知る。

(……………。)

 なんだかさらに恥ずかしさの上乗せをしたような思いを胸に、続いて由美は、肝心の瞬の所在

、動向へと意識を移す―――と、同時に自身の太ももに重みを感じ、視線を落としてみれば……

「……?」

 瞬は、その太ももを枕にするように横向きに頭を乗せ、身体をやや『くの字』に湾曲させて、足を

こちら側に投げ出した格好で横たわって、なにやらもぞもぞ動いている……つまりは、自分の体と

大体反対になっているということで……

「…んぁ…あ…ん…っ…」

 視覚と共に訪れた、瞬のタッチの感覚に、由美は軽くよがりながら、おそらく瞬も、もがく自分

の動きに対応しているうちに、自然とこの体勢になったのだろうコトを知り、ぼーっとした思考の中、

おおまかに現在の状況を把握した……が、

(………って、太ももに頭……? ……ってゆーことは……)

 顔の横下、やや遠巻きに投げ出された瞬のスネ毛混じりのヒザ下を見やりつつ、由美は頭の

片隅で、ぼんやりと次に瞬がしようとしていることを推察し……だが、いまひとつハッキリしない

思考のまま…なんとはなしに、その手を瞬の足に伸ばした。

 特に意味のない仕草、本当になんとなくの動作だったのだが、

「……っ……?」

 由美の手の感触を感じた瞬は、刹那ぴくっと身を固め……また、ソレを何かのサインとでも

受け取ったのだろうか、その湾曲していた身体を、どこかためらいが感じられる動きで伸ばし

ていき―――

「………え…?」

 その動きに驚く由美の目の前、瞬の足がずりずりと…スネからヒザ…そして股間と動いていく。

(あ…や……そ…そーゆー意味じゃないんだけどな……)

 そんな光景を眺めながら、由美は、こういうときだけ迷惑なほど察しがいい瞬に、苦心する。

 だがまあ、これはさすがにそう誤解されても仕方のないこと。

 由美は困惑しつつも、

(……。も……もぉ……しょ…しょーがないわね……)  

 刹那の逡巡ののち…眼前で屹立する瞬のソレにそっと手を添えていった……。

「………。」 

 しばし、手を添えたソレをじっと見つめる由美……。

 こんな間近で見るのは初めてだが、未だ脳がマヒしかかってるのか、不思議と嫌悪さは感じ

ない、逆に手に伝わる脈動が、なにやら胸の高鳴りにつながって来るような…奇妙な感覚。

 また、先日葉月からの教授を受けた際には、『さすがにソコまではしない!』と思ったものだが、

こうしてみると、先に進まぬ方がどこか不自然に思えてくる……。

 ともあれ、そんな様々な思い、ためらいを経て……

 由美は、うろ覚えの葉月の教えを思い出しつつ……そろりそろりと、握る瞬の分身に唇を近づ

けていき………

(……んと…じゃ、さいしょは……)

 ちゅ…。

 その先端に軽くキス。

 すると、

「……うっ!」

 下のほうから、呻くような瞬の声。

(……あ。こんなんでもイイんだ……☆)

 由美の心に、どこか妙な安堵感…次いでいつものイタズラ心に火が点る。

 そして、今度は軽く食むようなキスで、

「……あむ……はむっ…ん……」

 ちゅ…ちゅっ……

「んっ!?…くうっ!」

 先ほどにも増した瞬の嗚咽、また手を添えている横向きの瞬の足が、自らの行為に連動して

びくびくっと震える様に、由美は…

(くっ……くふふふふふっ♪ お…おもしろ〜いっ!)

 胸中、ぴょんぴょんと跳ね回りたくなるような喜びを覚える……が、しかし、

 ぬ゛る……っ。

(……え…?)

 にわかに、下半身の…その局部に熱いぬめりのようなものを感じたかと思うと、

「んぁっ…ひゃうぅぅっ!」

 それが自らの中に侵入ってきた瞬の舌だと理解る前に、由美の口から驚き混じりの嬌声が漏

れる。

 そう…由美は今さらながらに思い出す。この体勢は、反撃もたやすく、自らの行為が容易に

はね返ってくるということに……。

 だが由美は、そんな浅はかな自分に臍を噛みつつも…

(ふ…ふ〜ん……そーくる?じゃ…こっちだって…!)

 イタズラ心に加え、生来の負けず嫌いにも完全に火が点いたようで……

「あむ…っ!」

 今度は、迷いもためらいもせずに大きく口を開け、収まりきらぬ瞬のソレを口内いっぱいに

ほおばっていく。

「……んむぅ…っ?」

 深く口の中に入った瞬間、ソレはまた少し大きく脹らんだような気がしたが、由美は構わず、

「んむっ!…んっ……んんん…っ!」

 …ちゅっ…ちゅぱ…くちゅっ……

 口内で巧みに舌を動かし、『瞬』をねぶりまわす。

「んあぁっ!? くはぁっ…!ゆ…ゆみっ!」

 どこか遠くのほうで言ってるような瞬の苦しげな声を聞きつつ、由美はさらに、

(んで………吸うといいんだっけ?…確か……)

 などと、なにやら思い出しつつ、頬がこけるほどソレを吸い込み……

 ちゅぅ〜〜〜っ。

「◎×◆△●…っ!?」

 この、まさに腰が抜けかねない快感に、瞬はたまらず、

「…うあぁぁっ!!」

 絶叫を口に、大きくその身を仰け反らせる。

 むろん、由美への愛撫は中断を余儀なくされ……

(ふっふ〜ん♪ あたしの勝ち〜☆)

 胸内で勝ち誇る由美。

 さらに、余計な快感のジャマ(?)がなくなった由美は、そのスキを逃さず、なおも『瞬』を咥え

込んだまま、頭を前後に動かし―――

 じゅ…じゅぷっ……じゅぽ……っ……

 響く淫らな水音をはばかることなく、執拗に瞬をいたぶっていく。

「んあぁ…んくぅ…!…ん…んっ!…くはぁ……はぁ…はぁ……」

 先ほどの手でされた感覚をさらに超えるこの快感に、瞬は身を震わせ荒い吐息を吐いて、

ただじっと耐えるのみとなり……

(……で、ココもこーすると…いいんだっけ…?) 

 また由美は、よく聞いていなかった割には、けっこう鮮明に思い出す葉月の教えを頼りに、

『口撃』の傍ら、その下に鎮座するふたつの小袋に指先を添え、

 さわさわ…やわやわ……

 その小袋を、触れるか触れないかの絶妙な指使いで、優しく撫で上げていく。

 すると、

 びくびくびくっ!

「……っ!? くあぁぁっ?…ゆ、由美っ!だ…ダメ…だ…っ…そっ…それっ…!」

 瞬の反応がさらに鋭く、激しくなり、咥える口内での『瞬』の脈動が、より顕著になる。

(くすくす……)

 そんな瞬の狂おしいまでの反応を、まさに全身で感じ、瞬を完全に手玉に取ったという優越感

に浸りつつ、ほくそえむ由美。

 だがそんな中、

(……ん〜?)

 由美はふと、なにやら強い力で自らのお尻がぐいぐい押されていることに気付く。

「ん…なに…?」

 すでに力の抜けきった瞬の下半身から、顔を起こして振り返れば、そこにはやはり苦痛な表情

で顔を起こしている瞬の真っ赤な顔。そして……

「ちょ……ゆ、由美ぃ…!…お…俺もう……が…ガマンできね…っ……」

 せつなげな口調で哀願する瞬。

 そんな瞬の様相に、由美の優越感はさらに高まり…またその余裕からか、妙に憐れむような

気持ちも芽生え、

(くふふっ☆ あーあ……しょうがないなぁ……♪)

 などと思いつつ、由美は体勢を入れ替えるべく、身体を浮かすように力を抜いた。

 が。その瞬間。

 ぐいっ!

「……え?」

 思いもよらぬ力がお尻にかかったかと思うと、瞬時に体が上向きにスライド!

「え?ええっ?」

 さらに、腰をつかまれ抱きかかえられたかと思うやいなや、瞬に背を向けたまま、瞬の下腹辺り

に座らされたような格好になり…… 

「や…ちょ…瞬っ?」

 そんな刹那の体勢の変化に由美が驚く暇もあらばこそ。

 ぬる…っ………。

 文字通り、やわらかく濡れたもの同士が触れ合ったような感触…。

「ひぁ…んっ?…や…やだ…ちょ……」

 その直後、

 ずぷ…っ。

 まさにそのタイミングを推し量ったかのように、腰を浮かせた瞬の動きにより、瞬のソレは、

深々と由美の中へと沈んでいった。

「ひ……やっ…あ…あぁぁぁ―――ッ!」

 この意外なインサートに、むろん由美は高らかな嬌声を上げ、

 ずんっ…ずんっ!

「やっ!ちょっ…んくぅぅっ!んはぁぁっ!」

 また、休む間もなく腰をバウンドさせ始めた瞬に振り返り、

「んあ…っ!ちょ…ちょっとぉ…あっ……も、もっと…ちゃ…ちゃんと…あっ…し、してよぉっ!」

 片目を開けた苦しげな表情で、嗚咽交じりに抗議する由美。

 だが、それに対して瞬は、仰向けのままやはり苦しげな表情で、

「ばっ…ばか…!しょ…しょーがねーだろっ!んぅっ…も、もぉ…マジで…ガマンでき…くうっ!

できなかったんだからっ!」

 荒い吐息に言葉を詰まらせながら、至極もっともな反論を返し―――

 同時に、さらに腰を突き上げ…

 ずんずんっ!

「んっ…やっ!だ…だからって、こ…こんな……あぁっ!?や…やだ…すご…いっ!」

 下から突き上がってくる衝撃に、さらに抗議しつつも、急激な勢いで込み上がってくる凄まじい

感覚に、由美は前のめりに瞬のヒザに手をついて、驚疑の喘ぎを漏らし…身悶える。 

 そして瞬は、もはや自らでは律することのできない腰を、さらに激しく躍動させ、

「だ…だいた…い、んっ…お前が…っ…あ、あんな…カゲキなコトばっか…す…すっから…んっ!」

「んああっ!?ちょ…し、瞬ッ!そ…そんな激しく動かないでっ!あ…あぁ…んっ!だ…ダメッ!!」

「ん…っ!? く…っ!む…ムリ…!い…今…ガマンしてやるヨユーなんか…ねぇ…っ!んんんっ!!」

 言って瞬は、ベッドのスプリングをも用いて、ますます腰をバウンドさせ、

 ずんずんずんっ!!

「ひあぅっ!?や…だ…ダメぇぇぇっ!あ…んくぅぅっ!! そ…そんなにされたら…あっあああぁっ!!

 あたしすぐっ…い…イッちゃ……んああ〜っ!!」

 こらえきれぬ快感に、絶叫を伴わせて喘ぐ由美。

 両腕に挟まれた由美の乳房が、妖しくも上下に激しく揺さぶられ……振り乱す黒髪から、汗の

雫が左右に舞い散る……。

 かくして……瞬と由美は、互いに息を途切らせ、喘ぎながらの会話(?)を交わしつつ、急速に

高まっていき……

 やがて―――

「んあぁぁっ!! あああぁ〜っ!! だ…ダメっ瞬ッ!あ…あたし…あたし……もぉっ!!あっあああぁっ!!」

「…っ!?…ちょ…待っ……お…俺も……」

 感極まった由美の反応に、瞬も慌ててついていき……

「……え…?あ…ああっ!…い…いーよ来てっ!…あ・あ・あ・あ・ああああああっ!!瞬―――ッ!!!!」

「んぐぅっ!! ゆ…由美ぃ…っ!」

 ………どくん…っ!

 凄まじい勢いのまま、二人は全くの同時に果て―――

 刹那の硬直……そして、糸が切れた人形のように、由美の身体が後方に崩れ落ち……

 ふたりは仰向けのまま重なり合った……。             

(10)へつづく。

   

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