ハート・オブ・レイン
              スコール
〜第2章 はじめての甘熱雨〜

 

(5)

 ざぁぁぁぁ〜。

 窓の外、本降りになった梅雨時の雨が、ベランダのフェンスを激しく叩く……

「……んっ…はぁぁぁ…あぁ…」

「はあ…はあ…はあ……」

 だが、そんな雨音さえも気化してしまうのではないかと思えるほど、今や室内は熱く甘

い熱気に覆われていた。

 その熱源はむろん、幼くも、甘く…熱く燃え上がろうとしている二人。

 せつなく乱れる二人の吐息のほかは何も聞こえない、しっとりとまとわりつくような静

寂に支配された空間にて…………………。

  

 もはや荒い息遣いを隠そうともせず、ただひたすらに美沙の乳房をまさぐる勇樹。

「はあ…はあ…はあ………」

 だが、その一方で、勇樹は自らの行為に思いあぐね始めていた。

 そう、当然のことながら、時間が経つにつれ、間に入る布の感触がだんだん煩わしく

思えてきたのだ。

 ――直に触れてみたい……。

 募る思いが膨らみ……確かな形となって心に浮かび始めた頃……

「あ…そ…それも外して……いいんだよ……」

 またも勇樹の心を見透かしたように言う美沙。 

「え…?あ…う…うん…………」

 だが、そう言われても、勇樹は困ってしまう。

 確かに、どーやったらそれが外れるかくらいは、分かっているのだが、先程、ブラウス

のボタンを外すだけで、あんなに手間取ったのだ。

 この興奮している状況で、初めて触れるそんなものが、果たして容易に外せるだろう

か……。

 答えはもちろん否…とまではいわないが、かなりの確率で、手間取って、またなんやか

やと美沙に言われそうな気がする……

 せっかくどーにかこーにかここまでこれたというのに……

「………☆」

 そしてしばしの困惑ののち、勇樹は少々乱暴なテを思い立った。

(そだ☆よーするに、捲りあげちゃえばいーんだろ……)

 などと。

 ともあれ、方針(?)も定まり、勇樹はややためらいつつも、乳房の下、ワイヤーの入

ったストラップ部に指を差し込み、一気に……

「ああっ!? ちょっ…ま…待って!」

 捲り上げようと指先に力を込めたとき、そのつもりがわかった美沙の声に制された。

「ちょ…ちょっと…や…ダメぇ。こわれちゃうよ……そんなことしたら……」

「え…?え…?」

「もぉ……しょーがないなぁ……」

 やや呆れた様子で、苦笑を浮かべつつ美沙は背中に手を回し……

 ぷちん……ぷちん……

 乳房の上、しめつける力が緩んだブラがふっと浮き上がる。

「ほら……いーよ☆」

 そう言ってイタズラっぽく笑い、両手を上に掲げる。

「あ…う…うん……」

 勇樹は、震える指先を浮いた隙間に差し込み……ゆっくりと捲り上げていく。

 そして………

「あ……」

 よけいなものをすべて取り払われ、現れた美沙の乳房……。

 白くなめらかな肌の上、ふっくらと丸い豊かなふくらみ……そして、その頂点に鎮座

する小さな薄紅色の果実に………

(○▲□☆!!!)

 勇樹は完全に言葉を失った。

 唐突に、

(止まらないで……前に進んで……)

 先程の美沙の言葉が頭に巡る。

(あ…そ…そっか……)

 勇樹は、ぼぉっ、と痺れる思考を振り払いつつ、ふくらみに添えた手のひらにゆっくりと、

力を込めていく。

「あ…ンッ!は…ぁぁぁ…

「え…?」

 明らかにトーンの変わった甘い美沙の吐息に、やや驚いて振り仰ぐ勇樹。

 一応、言いつけ通り、揉みほぐすような手の動きは止めていなかったが……

「こ…こらぁ…そんないちいちびっくりしないの。ん…あんっ…しょ…正気に返されるのも

…は…はずかしいんだから……あ…ん……」

 驚いた顔のままのそんな勇樹の手の動きに、眉をしかめ敏感に反応しながら、言い咎

める美沙。

「あ…ご…ごめん……」

 そして、そんな美沙に戸惑いつつも、たどたどしい勇樹の愛撫は徐々に大胆になって

いく……。

(…これは……?)

 手のひらにあまる豊かな乳房をまさぐりつつ、おぼつかない動きながらも、勇樹は、指

先でその中心の突起を弾いてみる。

「や…んっ…はぁぁ…っ」

 ピクッ、と身体を震わせ敏感に反応する美沙の喘ぎを聞き。

「…………っ」

 勇樹の額から鼻先へとつたう一筋の汗が、滴となって美沙の乳房へと落ちていく。

 ぽと。

 また、それに導かれるように……

 ちゅっ……

 勇樹は、薄紅色に染まるその突起にくちづけていった。

「あ…あンッ!!」

 びくんっ、と美沙の身体が跳ね上がる。

「え…?あ…ごめ…」

 またもそんな鋭い反応に驚いて、唇を放しかける勇樹。

「んぁっ…こ…こらァ…またぁ……あ…あぁ…え…?…ん…っ……」

 そして同じように美沙の叱咤が飛ぶ……が、さすがに二度目の跌は踏まず。

 美沙が文句を言い始める前に、勇樹はより強くその突起に吸い付いていった。

 ちゅぅ〜〜……

「ん…はぁっ……あ…あ…ふ……」

 ごまかしついでにやったこの行為だが、思いのほか変化を生じた美沙の反応に、

勇樹の戸惑いや躊躇は薄らいでいき、

「あ…やっ…こ…こら…聞きなさいよ…ひとのはな…あぅっ…ああっ!はぁぁぁ…んっ!」

 じたばたともがく美沙を、その動きで圧することができるほど、勇樹の愛撫はより本格

的なものになっていった。

 勇樹の手によって揉みしだかれ、様々な形にやわらかく変形する美沙の乳房。また、

赤ん坊のように吸い付く唇の中で、その突起がいいようになぶられる。

「あああ〜〜〜〜っ…くぅぅぅっ!……ゆ…ゆう…き…勇樹くぅんっ!」

 執拗に両の乳房を弄ばれ、たまらず両手を伸ばして勇樹の頭を抱き抱える美沙。

「ん…んむっ!?」

(え…えと…つ…次は…下…も…触った方がいいのかな……?)

 押し付けられた柔らかなふくらみを頬で感じつつ次の行為への模索を始める勇樹。

「………」

 目線を上げて美沙の様子を伺う。

「あ…はぁ…はぁ…はぁぁ…」

 が…この位置からでは、首を反らせて熱い吐息を漏らす美沙の声が聞こえるだけで、

その表情までを伺い知ることはできない。

(………。…き…聞ーたら、また怒られる…よな? よ…よーし……)

 などと考え、意を決した勇樹は、再度緊張で震え始めた指先を、美沙の肌の上に這わ

せていった。

「ん…はぁぁ…ん……」

 くすぐったいように漏らす美沙の吐息を耳で捉えながら、

(………あ。)

 指先をなめらかな下腹の肌につーっ、と走らせ、辿り着いた布の感触。

「………っ」

 勇樹は、爆発しそうな胸の鼓動をこらえつつ、指先を布地に沿うようにさらに下へと潜

り込ませていく。

 ぴと。

「あ!」

 やや湿り気を含んだ布の感触を指先が捕らえた瞬間、美沙の口から喘ぎとは違う驚

きの声。

(や…やば! ま…まだ早かった?)

 あせった勇樹は、ともあれ美沙が非難の言葉を発するのを止めようと、

「っ!」

 一番手っ取り早い方法を選んだ。

「あ…ちょ…勇樹く……あむっ…んんんっ!」

 二重の驚きで、勇樹の唇に塞がれながら、目を白黒させる美沙。

 またそれに伴って、

 きゅっ。

 両足を強く閉じてしまったため、はさまれた勇樹の手はその部分に手を添えたまま、

身動きできなくなってしまった。

「……っ!?」

 むろん力を込めて引き抜こうとすれば、抜けるだろうが………

「………ん……」

 その状況に一瞬躊躇する勇樹だが、とりあえず指先だけは動くことを確認すると、じた

ばたさせるように、布の上からその部分を引っ掻いてみる。

「〜〜〜〜っ!? ん…んはぁっ………も…もう〜〜!」

 たまらず唇を離し、困ったような表情で恨みがましい目を勇樹に向ける美沙。

(くぅ〜〜〜っ!か…可愛いっ☆)

 そんな美沙の態度に心の芯まで痺れさせられ、勇樹は改めて『その部分』をまさぐる

指先に力を込めようとする……が、

「…あ…ちょ…ゆ…勇樹くん…ま…待って…」

「……え?」

「…え…えっと…その…あ…あたし…下着の替え…ないから……、あ…あの…そ…

その…ぬ…脱がせてからに…して…くれない…?……」

 なにやら珍しく、もじもじしながら言う美沙に、勇樹もさすがにその『意味』に気付いて、

「……え? あ…ああ、そっか…ごめん……」

「うう…。あーもー!そっか…とか言わないでよ……はずかしーんだからね!」

「う…うん…ごめん……」

 ……などとやりつつ、手を引き抜き、残ったものを脱がそうと、身を屈める勇樹。

 だが……

「あーっ?だ…だ〜めぇ〜!見るなぁ!このまま脱がせて!」

 言いつつ、美沙は身を屈めようとした勇樹に首にしがみついてくる。

「へ…?」

(ま…また…ムチャなことを……)

 思わず眉をひそめる勇樹。

(ただでさえ緊張してうまくできるかどーかわかんないのに……)

 とはいえ、きつくしがみついている美沙は、そう簡単に許してくれそうにない。

「……っと……」

 仕方なく、勇樹は伸ばした片手を美沙の腰の脇にあてがい、手探りでショーツの隙間

に指を差し込む。

(えと……)

 そして、ここから下へと下げていくわけだが……むろんこの体勢のままでは、ヒザ上く

らいまでしか下ろせないので、

「……っく……」

 脇腹がつりそうになるのをこらえつつ、勇樹は身体を捻り必死に手を伸ばしていく…。

 …………。

 まあそれでも途中、気を利かせた美沙が身体を折り曲げてくれたおかげで、勇樹はな

んとかこの大変な作業を終えることができた。

「はぁ…はぁ…」

「んふ…勇樹くん?」

 『ひと仕事』終え、額に汗する勇樹の顔を覗き込む美沙。

「はぁ…はぁ……え?」

「うふふ……おつかれのところ悪いんだけどさ……ってゆーか、キミも…まだ服……。

これで終りじゃないでしょ……?」

「え…あ…そっか……」

 言われて、自分だけまだ服を着ていることに気付く勇樹。やや慌てて身体を浮かし…

「あ〜〜、ほら…なんか大変なことになってるし……そこ…」

「え…ちょ…あっ…み…見んなよ……い…いま脱ぐから」

 我ながら、おかしな事を言ってるような気もするが……ともあれ、勇樹は美沙に背を向

け、がばっと捲り上げたTシャツを頭から抜き、かちゃかちゃと慌てた音を立てながら、

ジーンズのベルトを外し……

「にへへへへへ☆手伝ってあげよっか?」

「い…いーよぅ!」

 途中、ちょっかいを掛けてくる美沙の手をかわしつつ、急ぎ身に着けていたものを取り

去っていった。

「…………」

 が、いざこの『格好』になってみると、改めてもう一度美沙に向き直るのは意外に……

(な…なんかやっぱはずかしーな……)

 などと、勇樹がためらっていると、

「こぉら、なーに恥ずかしがってんのよ〜」

 美沙は勇樹の背中にぴと…と張り付き、後ろから勇樹の顔を覗き込んでくる。

(う…うあ……!)

 これは強烈だった。

 初めての素肌と素肌の密着感、そして当然、背中にはふたつの柔らかなものが潰れ

る感触……。

 下がりかけていた勇樹の体温が一気に上昇し、思考がくらくらと昏迷する。高まる興

奮はもちろん沸騰寸前。

「えへへ…ね…ハトムネじゃないでしょ……?」

 そんなことは露知らず…いやそれとも狙ってやったのか、それは定かではないが、そ

んなもう十分すぎるほど分かっていることを勇樹の耳元で囁く美沙。

 ぶちん!

 勇樹の頭の中で何かが弾け飛んだのは、もはや言うまでもなく……

  

(6)へつづく。

 

 

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