ハート・オブ・レイン
              
〜第4章 熱夏にあえいで〜Shower Me〜

(20)

 そして―――

「う……うん……」

 おずおずと頷きながら美沙に重なり、股間に差し込んだ手で狙いを定める勇樹……。

 刹那―――

「……んっ」 

 腰だめに引いた勇樹の体が伸び上がるのとともに――――

 ……………ずんっ!

「……っ!?」

 重く…異質な感覚が―――深々と、美沙の身体に、沈んだ。

―――んぐっっ!?」

 その衝撃に、美沙の表情は驚愕に固まり……ひとたび大きく目を見開いて――――

「ん…あ…!はぅぅっ!…はあぁぁぁぁぁぁ〜っっ!!!!!

 次いで、その身を大きく仰け反らせ……悦驚入り混じる美沙の絶叫が、薄闇の中に

散らばる。

 そしてまた、この…まだ動いてもいないのに、駆け上がってくる凄まじいまでの快感に、

「んはぁっ!や…やだ…な…なにコレ…?さ…さっきとちが…あはぁぁぁっ……あ…あたし

っ…か…かんじちゃ…んぁっ!感じすぎちゃ……うくぅぅぅぅぅぅっ……」

 ぶるぶると、小刻みな震えと共に激しく身を捩り、早くも訪れるその絶頂の波に、苦悶する

美沙。

 そう―――おかしな表現だが、快感によってマヒしてた感覚を、また異なる快感で呼び覚

ましてしまったような……強烈な絶頂感に。

 だが言ってみれば、度重なる勇樹の愛撫を受け、またそれで絶頂を重ねたことにより、
                       
コレ
その性感すべてが開いたところでの、挿入である……。この強烈な感覚は、むしろ当然と

言えるかもしれない。

 どうやら…ひとときの絶頂に恍惚とした思考が、それらを一時的にマヒさせていたようだ

が………。

 ともあれ―――このとき、美沙の全身は、そんな度を超えた過敏さに包まれており――

「ん……」

 ず…ずずっ…

 突き入れたまま、その体勢を整えようとする、僅かな勇樹の動きにも―――

「ひ…!? ひあぁっ!だ…ダメっ…ゆ…勇樹く……んっ!! んあああああぁぁぁ〜!!!!」

 美沙は簡単に達してしまい……また、

「んぁ…はぁ…はぁっ……ちょ…だ…だめ……ゆ…勇樹くん……う…動かないで……」

 びくびく…と身体を震わせながら、汗に輝く苦悶の顔で、不可能に過ぎる願いを訴える。

 そして、むろん……

「……え?あ…そ、そんなこと言っても…んっ…く…!…む…むり……」

 上に乗る勇樹は、汗だくの苦しげな困った顔で応えつつ、

「…う…くぅっ!」

 その狂おしいまでに締め付けてくる美沙の内壁に耐え切れず……

 ……ずんっ!ずんっ!

「んっ!? ひああぁっ!! や…っ!だ…だめっ!んあ…っ!ちょ…んあああああぁぁぁぁ……!!」

 その制御不能な勇樹の腰の動きに、美沙は今一度達しながら…狂ったように喘ぎ散ら

し……

「…っく!んっ!…んぅっ!」  

 そんな…ますます、きゅぅ〜っときつくなる美沙の締め付けに、もはや意識とは関係なく

蠢く腰を、勇樹はさらに深く…激しく突き上げていく。

 …ずんずんずんずんずんっ!!

「んんあぁぁ〜〜っ!! ひあ…っ!?だ…だめぇっ!あ…あたし…こ…壊れちゃうぅぅ―――っ!!」

 ピーンっと反り伸ばした美沙の両足が、その爪先で白いシーツを引き掻き……

 ひしがれた弓のごとくのけぞらせた全身を、びくんびくんっ、と震わせ、またも激しく美沙は

達していき……

「はぁぁぁぁ…」

 ずんずんずんっ!!

「―――あぁ…っ!?や…んぅぅ……っ!」

 ……だがやはり、安穏のひとときは未だ訪れない。
             
まどろ
 言うまでもなく、達し微睡もうとする意識を――いまだ中にいる勇樹の蠢きと、それを上回

る快感が、その白濁の直前で繋ぎとめてしまうのだ。
                           
ループ
 まさにそんな、歓喜と絶頂の狭間を無限に行き来するような、この快感の地獄に―――、

「――――ひ…っ……!…」

 美沙は得も知れぬ恐怖さえ覚えて……

 そんな中―――

 ………ぐいっ!

 刹那、その完全に力の抜けきった美沙の両腕が力強く引っ張られ、

「……うっ……。」

 次いで来るだろう激しい感覚を、ムダとは知りつつ…身を硬くして耐える準備をする美沙。

 ――――だが、

 ふわ…っ。

 次に来たのは、不意に身体が浮き上がるような感覚……いや、快感による錯覚ではなく、

本当に……。

 その細腰を浮かせて、美沙の身体は、前方に起き上がり……

(………え?……あ……。)

 気付けば美沙は、勇樹の上に跨り、馬乗りに腰掛けるような格好になっていた。

 またその間…今の動きで、勇樹のモノが、ひとたび深く刺し込んだようで……、

「………んっ…あくぅぅ……っ!」

 また一度、美沙は軽く達してしまったが、それ以後、勇樹に動きはなく―――新たな刺激

は来ない……。

(…………え…?)

 美沙は不審に思い―――とりあえず、今の余韻が落ち着つくのをまってから、

「ん…っ」

 勇樹の胸に両手をついて、ふらつく身体を支えつつ……

「はぁ…はぁ……あ…ど…どしたの…?……勇樹くん……」

 紅潮しきった弱々しい笑みで、勇樹を見下ろす。

 …と、そこには、なにやらちょっとばつ悪そうに、美沙を見上げる勇樹の顔が待っていた。

 そして勇樹は、

「……え…あ…ああ…なんか…ちょっと…ヤバいかな…って思って…」

 心配げに、困ったような苦笑を浮かべつつ……また、ちらり一瞬、いまだ繋がる腰あたり

に目をやって……

「……で、こーやって河合さんに押さえてもらえば、止まるかな…って思ってさ……」

「……え?」

「あ…ああ、だから…んっ…だ…ダメなんだよ…ヤバいって思っても…ん…っ…こ、腰…

勝手に動いちゃうから…んくっ…」

 聞き返す美沙に、どこか苦しげな笑みを交えつつ言う勇樹。

(……?……)

 そんな勇樹に、美沙は、ふと思いを巡らせ……またすぐに、何かに気付いたように、

「……あ。え…えと…でも、それじゃ……勇樹くん……ガマンしてんじゃないの…?」

 それに勇樹は、やや慌てたように首を振りつつ、

「え……?あ…う…ううん!………ん〜…ま…ちょっとだけね。あ…でも…このままでも、

じゅーぶん気持ちいーから……俺………」

 この…ヘビの生殺し以外何物でもないこの状況を、見え透きまくったウソで取り繕う。

 ……が、むろんもちろんこんなものは、誰の目から見ても100%ウソ丸分かりである。

 もはや、証拠を示すまでもないが、

「んっ…く…」

 時折示すその苦悶の表情と、その傍ら…拳をぎゅっと握り締め、自らの腰を挟み込ん

でいる、その両腕の震えが、それを如実に物語っており――――だが、

「あ…あはは…き、気にしないでいーよ、河合さんは。ただ…ちょっとだけこのままでいて

くれれば、だいじょぶだか…ら…」

 いまだ引きつった笑みを浮かべて言う勇樹のやせがまんに……

「…………」

 美沙は、やや悲痛な思いで、しばし瞑目―――

 またその後、見下ろすその表情を、ふっ…と優しい笑みに変えて、

「んふ……んっ…んんぅ…っ!」

 ずっ…ずっ……

 勇樹の腰の上、美沙はにわかに、その下半身を擦り付けるようにスライドさせ始め……

「……え!?…ああっ!や…やめ…だ…だめだよ…河合さんっ!んくっ!」

 驚き、苦鳴混じりに非難する勇樹に、

「んくっ!な…なにが…?ぁっ…はぅっ!ひ…人を…んぅ…ブンチン代わりにして…んっ

んあっ…そ…そんな人の…んうっ…言うことは……き、聞かないもん……んあぁっ!」

 美沙は、途切れ途切れの軽口を交えて、この耐えがたい感覚に自ら身を浸していく。

 確かに、この狂おしいまでの快感がこれ以上続いたら……ホントにどーにかなってし

まいそうだった……。

 だが、勇樹となら……勇樹なら……そのすべてさえ受け止めてくれそうな気がして…。

「ん…んんっ……んぁ……んんん…っ!」

 美沙は、徐々に……残り少ない理性のリミッターを外していった…。

 じゅ…じゅぷっ……。

 その前後の動きに、繋がる二人の部分から、淫らな水音が湧き立ち……

「んあぁっ…あ…あふっ……い…イイよ……勇樹く…ん……あはぁ…ぁぁっ……」

 美沙は吐き出す嬌声に悦笑を交えて、そのくびれた腰を執拗にくねらせる。

 きしっ…きしっ…

 微かに軋む床板の悲鳴と共に、たゆたう美沙の豊かな乳房が妖しく揺れ―――

 そんな淫靡な情景を苦しげな瞳で見つめつつ、勇樹は……、

「んっ…んあっ…!だ…だめだよっ…河合さ……そ…そんなことしたら…ま、マジがまん

できなく…うくぅ……っ!」

 未だ耐えがたい快感を必死で堪え、震える手を虚空に伸ばす。

 一方美沙は、そんな勇樹の手をそっと両手で捉えつつ、

「ん…んふ…いーの……あ…はぁんっ…が…ガマンしないで……ほら……んんっ!」

 ……むにゅっ。

 勇樹の手を乳房に導き……また、その手の上に自らの掌を重ね、ふくらみをこねまわ

すように……

 むにゅむにゅむにゅう……

「ん…んんぅ…っ!」

 さらに、跨ぐ腰の重心を落とし、いっそう奥深くまで勇樹のモノを飲み込んで……

 ずっ…ずっ……ずずっ……

 美沙は、ストローク幅の長い前後運動で、さらに深い快感を勇樹に与えていく。

 そして、さしもの勇樹も、

「……う…っ!? んあぁっ!か…わいさん…っ!?」

 この、腰から下をどこかへ持っていかれそうな快感に、もはやまったく耐え切れなくな

り……

「んっ…くっ!…か…かわいさんっ…ご…ごめんっ!!!」

 持ち上げるようにまさぐっていた手のひらに力を込め、その乳房をもみくちゃにしつつ…

 ずんずんずんずんずんっ!!

 堪えていた思いをすべて吐き出すように、激しく美沙を貫き上げた!

「……んくうぅぅぅっっ!?」 

 突き上がって来る夥しい快感に、美沙は固く目を閉じ、身をすくめて激しく震え……

 びくんびくんびくんっ!!

 だが―――美沙はあえてその感覚を開いて、駆け上がってくるすべての快感を素直

に受け止めるように……、

「んぅっ……んあぁっ…はぁぁぁんっ…や…い…イイっ……ゆ…勇樹くんっ…あ…ああ

ぁっ…あっ…あたし……あたしっ…んっ…くぅ…い…いく……イッちゃ…んくぅぅぅっ!」

 喜悦の嬌声を口に、歓喜に瞳を潤ませ……また、やがて……

「……んっ…んっ!……え?…河合さ………」

「は…はあぁぁぁぁぁぁぁっ!!……ひ…ひあああぁぁぁ!!…あ…ああぁぁぁ〜っ!!!!」

 その動きの中で幾度も達しながら……さらに高く、熱い…一際大きな絶頂を迎え――

「……っ――――――はあぁぁぁぁぁぁ………」

 美沙は果てていった……。

 そして――――その余韻に震える美沙を、下から見送りながら……

「………あ……。」

 勇樹は、ほんの間際のところで取り残されていた……。

「………うぅ…っ……」

 やや…いや、かなりやるせない思いに包まれる勇樹だが……

「……あ……は…ぁぁぁ……

 だがそれでも……その甘美な余韻に酔いしれ、本当に気持ちよさそうな美沙の表情に、

「………あ…あはは……。」

 勇樹はちょっと引きつった笑みを見せつつ、腰の動きを止め……崩れてくる美沙を

受け入れようと両手を開く……

「は…ぁぁぁ………あ…?」

 だが美沙は、その胸に倒れこむ直前…未だ勇樹が達していないことに気付いて――

 ぐっ!

 残る力を振り絞って、勇樹の胸に両手をつき…その小さな身体を支え起こし……

「…え?…河合さん?」

「…あ…あは…☆…」

 驚く勇樹に、疲れきった弱々しい笑みで応えながら、美沙は…余韻に痺れるその腰

を突き出し、再度……

「……ん…っ!」

 ずっ…ずずっ…!

「あ…っ…あぅっ!…んく…っ…か…かはっ……ひ…!う…くぅぅっ……」

 咳き込んだ吐息混じりの掠れた声で喘ぎつつ、弱々しくも必死に腰を揺さぶり始める。

 また、そんな美沙の姿に、勇樹は……

「………っ!」

 がしっ…がしっ!

「……はぁっ………え……?」

 もはや美沙自身、どう動いているのかわからぬ腰の…その両脇を突然、力強い手の

ひらが握り締め……その動きを止めた。

「はぁ…はぁ……え…?」

 その動きを止められ……変わらぬ荒い息つき、懐疑の表情で見下ろす美沙に、

「はぁっ…はぁっ…はぁ……ちょ…か…河合さん…も…もういーよ……」

 やはり荒い息を整えつつ…勇樹は、その両腕に力を込めながら、悲痛な表情を浮かべ

ていた……。

「……え?……」

 対して美沙は、その憔悴しきった様相の中、にわかに顔を曇らせ、

「え…き…気持ちよくない?」

 すると、勇樹はしんそこ困ったように、

「え…い…いや…それはもちろん、よすぎるくらい気持ちいーよ……でもさ……」

「え…?…でも…?」

 さらに不安げに尋ね返す美沙に、
         
    ツラ
「河合さん……マジ辛そうだから……」

「え……そ…そんなこと…ないよ……」

 慌てて、自らを取り繕う美沙に、勇樹は、困りきったように笑みを浮かべて、

「いや…そんなことあるってば……ってゆーかさ……俺だって、このままガマンして寝ち

ゃうってのはムリだよ……」

 正直に、自分の状況を告げつつ、

「うん…?」

 訝る美沙に、優しい笑みを浮かべて…

「だから…ちょっとだけ、休も…?」

「……え…………?」

 美沙はきょとんとしたまま、しばし戸惑ったように固まり……だが、

 ぎゅ…

 やさしく差し伸べられた勇樹の手に誘われるまま……

「…う…うん……」

 おずおずと頷き、やがて勇樹の胸に沈んでいった。

 久しい―――安堵の笑みを浮かべて……。

  

(21)へつづく。

   

 

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