ハート・オブ・レイン
              
〜第4章 熱夏にあえいで〜Shower Me〜

(21)

 そして二人は……

 身を離し…だが、ぴったりと寄り添って、乱れたシーツの海に横たわり……

 安穏と…そして、やや悶々とした時が、しばし流れていく……。  

 窓の外から、差し込み始めた月光と、淡い室内の照明に照らされる中――― 

「……あふ……

 安堵の笑みをその表情に、しなやかな身体を縮めるようにして寄り添う美沙のかた

わら……

「…………。」

 じっと仰向けに横たわる勇樹は、言葉少な……。

 浴びる淡い光に、いまだそそり立つ分身が、鈍い輝きを放ったまま―――。      

 そんな中…

「……ねえ……」

 耳元で語りかける美沙の声に、勇樹は頭を転がし―――

「…ん?」

「ほんとに…へーきなの……?」

「……え…な…なにが……?」

 かなり心配そうに尋ねる美沙に、そらぞらしくとぼける勇樹。

 美沙はそんな勇樹の態度を、苦い表情で受け流しながら、

「あ…あのさ……」

「……え?」

「やっぱ…あたしが…なんとか…してあげよーか?」

「……えっ?い…いーよ…!ま……まだムリでしょ〜」

 その意を察し、慌てて応える勇樹に、だが美沙は……

「あ…いや……そ…そーじゃなくて。」

 やはり、やや慌てた様子でそれを否定し…また、なにやら言いにくそうに、

「あ…あの…シなくても…何とかする方法……が…あるでしょ?」

「…………え?」

 もじもじと言いつつ、ちらり視線を下げたその美沙の仕草で、勇樹はその意を介し…

 だが、

「え……?だ…だって……い…いやその…で…でも…あの…」

 肯定も否定もできず、ただ戸惑って言葉を濁す。

 また、そんな勇樹に、美沙は小さな微笑を浮かべつつ、気怠い身体を浮かせて……

「…んふっ☆……よいしょ…」

「……え?…ちょ…か…河合さん……?」

 むろん、美沙のしようとしてることがわからぬわけもなく……勇樹はかなり焦って、

その身を起こしかける……が、

「あ…勇樹くんは寝てていーの☆………ちゃんと近くから見てみたいし……」  

 なんだかわけのわからないことを言いつつ、美沙は勇樹を制し、もぞもぞと……

勇樹の下半身にもぐりこんでいく。

「……え…あ…あのっ…で…でも…その………」

 そして、再び横たわった勇樹が、激しい躊躇にどぎまぎする中…

「……ん……っ」

 美沙は、勇樹の太ももを枕にし…ちょうど勇樹の身体と垂直になるように、その身を

横たえ………

「ふぅ〜ん……☆」

 好奇の瞳で『それ』を眺めつつ、興味深げな声を上げる。

「………って、か…河合さん?…ちょ…なんか…は…恥ずかしいんだけど……」

 どこか悲痛な様相で聞こえる勇樹の声に、

「…え……あ。そっか……じゃ、まず…どーすればいーのかな……?」

 美沙は、あたかも忘れていた仕事を思い出したように言う。

(い…いや…そーゆーことじゃなくて……)

 などと思いつつ、

「…………。」

 このかなりの恥ずかしさに勇樹が、言葉を出せずにいる中、

「……ん〜〜?……」

 美沙は、ソレをじっと見つめたまま、立てたひとさし指をゆっくりと近づけていき……

 ……つん。

 ぬらりと輝くソレが微かに左右に揺れ……

「……んぅっ…!」

 低い勇樹の呻きが漏れる。

 また美沙は、それで事を得たように、どこか嬉しそうな笑みを浮かべつつ、

「……あは☆……じゃあ……」

 続いて今度は、軽く目を閉じ…小さく切り結んだその唇で、

「ん…っ」

 ちゅ…

「…んあぁ…っ!」

(……あ…☆…なるほどね〜♪)

 顕著な反応を見せる勇樹に、美沙はなにやらいっそう得心して、いつものイタズラっ

ぽい笑みを浮かべつつ―――

 ……ぎゅ…

 今度は、開いた手で、ソレをやさしく握り………だが、

「……………あ………。」

 そこで、ふと何かに気付いたように、勇樹の顔を振り仰ぎ、

「…………い…言っとくけど――――」 

「……え?」

「あ…あたし、こんなことするの、勇樹くんが初めてなんだからね!」

 やや赤らんだ顔で、キッ!と睨みつけながら、戸惑い混じりの怒ったような口調で念

を押す。

「え…?あ……う…うん…」

 対して勇樹は、そんな心情まるでわからずとも、おずおずと頷き…… 

「……ん……」

 そして美沙は、今一度ためらいつつ、それを握りなおし……おずおずと小さく舌を

出して……

 ぺろ…

 その先端を、軽くひと舐め。

 ――――――?――――

 刹那―――ほのかに『自分の味』がしたような気がするが、構わず。……次いで、

意を決したように、その唇を大きく開いて……

「……あ…あむっ……」 

 …ちゅぷっ。

 微かな水音と共に、いきり立った勇樹のソレを一気に口に含んだ――――。

 一方、

 未だ経験したことのない、その…ぬめっ、とした独特の感覚に……

「―――っ!?…んあぁっ!!」

 むろんたまらず、その身を大きく仰け反らせる勇樹。

 またさらに、

 ―――あむあむ…っ……ちゅ…くちゅ……。

 つたない動きながらも、やさしく…口内で『勇樹』を弄ぶ、美沙の唇の愛撫に…

「んっ…くふうぅ…っ!」

 勇樹は、両目をぎゅっと閉じ…拳を硬く握って、歓喜の嗚咽を漏らす。

 そんな勇樹の著しい反応に、美沙は刹那口を離して…だが添えた手で軽くまさぐり

ながら……

「ん……き…気持ちいい?」

「う…はぁ…んぅっ…う…うん……す…すごい…っ…」   

 尋ねる美沙に、勇樹はぎゅっと目を閉じ、天井に顔を向けたまま答え……

 また美沙は、それに安堵したかのように小さく微笑みながら、

「じゃ…もっとしてあげるね……

 ―――あむ…っ……。

 そして……

 ちゅぱっ……くちゅ……ちゅぷっ……  

 美沙の口の動きは、徐々に熱を帯びていき――――

「……んあ…む……勇樹くん……ココは…?」

 ……れろっ。     

「…んっ!うっ…くはあぁッ!」

「あ…☆んふふ…じゃあ…こう…?……んむっ…」

 ぢゅ………ぷっ…

「う…うあぁっ!…か…河合さ…んっ…そ…それだめ……んあぁっ!」

 その恥ずかしさと快感に喘ぐ勇樹の反応を確かめながら……

「……ん?ダメ…?何が?……ん…んっ!んっ…!んんっ!」

 ちゅぷっ…ちゅぷっ…ちゅぷっ……

 美沙は、より大胆に、その淫らな水音をかき立て、咥えたまま頭を上下し……さらに

激しく勇樹を責め立てていった……。

「くぅっ…!?…ちょ…河合さ…んっ!……うぁぁぁっ!」

 かくて―――勇樹は急速に高められていき……

「はぁっ……はぁっ…はぁっ…はぁっ……」

 ほどなく…その感覚が、耐えがたいところまで差し掛かり―――

(…っ?……や…やば!)

「……あっ!…ちょ…か…河合さん…も…もう…やめ……や…ヤバい…から…っ!」

 激しく身を捩り―――それまでとはちょっと違う勇樹の苦悶の声に……

「……ん?」

 美沙は、ソレを咥えたまま…一時動きを止めて、やや訝ったような目線で勇樹を

見上げ……

 対して勇樹は、そんな美沙の表情にどこか臆したようにしながらも……苦しげに、

「……あ…。や…、だ…だからその、お…俺……もう……」

 だが…そんな勇樹の訴えを、美沙は蔑んだような見上げつつ…

「…ん…」

 ちゅぷっ。

 一時、唇を離し…代わりにその小さな手で、てらてらと輝くソレを握り締め、

「……だ〜〜め☆」

「……え…?あ…あの…」

 苦悶の表情で戸惑う勇樹に、さらに涼しい笑みを浮かべて、

「だって…あたしのトキは、やめて…って言っても、ぜんぜんやめてくんなかったで

しょ〜♪」

(……え?そ、そーだっけ…?)

 などと思いつつ…、

「……え…?い…いやその…それは……」  

 刹那、状況さえ忘れて口ごもる勇樹の言葉を遮り、美沙は……、

「……イクとこ見せてね

 にんまり笑ってそう言って、握り締めるその手を激しい上下運動に―――。

 りゅっ…りゅっ…りゅっ……

 そして、言うまでもなく――――

「……っ!? う…うあああぁ〜っ!!」 

 もはや今わの際の…キワまで来ていた勇樹のソレに、その動きとそんな美沙の表情

は、まったく致命的で――――

「んふ……イッて…

 イタズラっぽい笑みで見上げつつ、さらにそのスピードを高める美沙の指の動きの

前に……

 どくん…っ!!

「んっ!!!…う………ぁ………………………っ!!」

 声にならぬ悲鳴と共に、勇樹の身体が跳ね上がり――――――

「……きゃ……☆」

 美沙の小さな驚嘆……そして――――――

「――――――っ!……………」

 熱い迸りが、勇樹の腹の上に散らばった………。

    

「……………………」

 しばし……勇樹の思考は白濁とまどろみ……

 またやがて、刹那の後……緩慢に戻り来る感覚が捉えるのは、

「…………ぅ………。」

 ぬるり―――とした下腹の妙な温もりと……そして、

「――――へえぇ〜?」

 驚きと好奇が入り混じった美沙の、感嘆の声。

 どーやら、すべて果てきったソレを興味深げに見つめているようで………

(………うぅ…………)

 残る余韻の中…耐えがたい恥ずかしさを覚えた勇樹は……

「…………っ……。」

 だが、力の抜けきったこの身体では、何もできないことを知り……ただ、折り曲げ

た腕で、その恥辱にまみれた顔を隠す。

 またそんな中、ややもしないうちに………

 しゅる…しゅる…

 勇樹の下腹に、何かやわらかなもの―――が擦れる感覚。

「……?…」

 その感触を訝り、勇樹は被せた腕をどけて、おそるおそる目線を下げ……

 すると、そこでは―――

「……………」

 優しげな笑みさえ浮かべて…美沙が、ティッシュ片手に―――その…後始末

をしてくれていた。

 さすがに勇樹は、慌てて半身を起こし……

「あっ!ちょ…か、河合さん…い、いーよっ…そ…そんなことしなくて……!」

 だが美沙は、平然と…またにこやかにそんな勇樹を一瞥しつつ……

「えへ…いーのコレ…あたしのせい……みたいなもんでしょ? それに―――

なんか……うれしかったもん…

 言葉どおり、どこか楽しげとさえ見えるそんな美沙の様相に、

 勇樹は抗ずることができず、

「……え……あ……そ…そぉ………なの………?…」

 ただ、間抜けに頷いて……ゆるゆると、起こしかけた身体を再び横たえた。 

 またそんな風に、勇樹が気を抜いたその刹那―――

「はい…☆じゃあ、ココはおしまいっと……でもって、つぎは……」

 あたかも…とゆーか、そのままとゆーか……拭きソージの場所を変えるように言う、

美沙の言葉と共に、

 しゅるしゅる…

 新たに引き出されたティッシュの触感が、勇樹の股間のソノ部分を柔らかく包み…

 そのやわらかな薄紙を通して、さわさわと…まさぐる美沙の指の感触に、

(…ん…ふわぁ……)

 勇樹は心地よく身をゆだね……………ぢゃなくて――――! 

「……え…ええッ?…あっ!ちょ…か…河合さん、そ…そこはいーよっ!」

 安穏とする思いを振り切り、さすがに勇樹は飛び起きて、慌てふためき訴える。

 …が、そんな勇樹の態度すら意外そうに、美沙はきょとんとした顔で、

「……え?だって、ココもキレイにしなきゃ…でしょ?」

 そう言って、やはりにこやかに、勇樹に微笑みかける。

 ……まあ、それはそーだが、しかし……

 勇樹はしばし鼻白んだのち……

「……え?……い、いやあの……い…いーよっ…そ、ソコは自分でするから…っ…」

 再び慌てて、自らの股間に手を伸ばす……が、

「…あ!ちょ…だぁめ!」

 美沙は、取り上げられそうになったオモチャを守る子供のような仕草で、ソレを死守

して、勇樹の手を制し……

「あたしがするの〜ほらっ…勇樹くんはおとなしく寝てて☆」

 きびきびと言いつつ…伸ばされた手を逆に押し返しながら、再び勇樹を寝転がす。

「…えぇ?…あ…だ…だって……あ…ぅ…ちょ…あぅっ……」 

 一方勇樹は、なにやら言いつつも、起こしかけの不完全な体勢ゆえ、それに逆らえ

ず……

 ……どでんっ。

 再び仰向けに寝転がり………いたしかたなく、おとなしくなる……。

 ……が、

 しゅるしゅる……さわさわ……ふきふき……むにむに……

 その間、ティッシュと美沙の指が織り成す、そのなんとも言えぬやわらかで、緩慢な

刺激に――――――

 ……ぴくっ……ぴくん…っ………。

 やがて、次第に…ソコはおとなしくなくなっていき……

 そして……

「……へ…?」

 小さな驚きの声は、美沙の口から漏れた。

 手のひらの中…まさにむくむくと、その身をもたげていく、勇樹のソレを見つめながら

………。

「……へ……?……え……?な…なんで………?」

 ビジュアル的にも、そして触感的にも…美沙は二度驚き、勇樹を見上げて、懐疑の

声をあげる。

 対して勇樹は…

「い……いや…なんで…って…そんなん…あ、あたりまえでしょぉぉぉ〜。そんな風に

触られたら誰だってそーなっちゃうの!」

 まさに、恥ずかしさもここに極まれり…といった様相で、ほとほと困り果てた口調で

言い返す。

 だが一方、美沙は、そんな勇樹の心情を尻目に、

「へぇぇ〜〜?そーなんだぁ〜?」

 なにやらまたも、好奇と驚きの混じった感嘆の声を上げつつ……すでに雄々しく屹立

したソレを、まじまじと見つめながら………

「ふぅぅぅぅ〜ん?……」

 …つんつん……ぴこぴこ……☆

 興味深げに、ソレを指先でつついたり…弾いたり……つまんでみたり………

 そして……そんな、えんえん続きそうな美沙の『検証』に、勇樹は…

「……って、い…いやあの……河合さん?…あ、あの…マジ…オモチャぢゃないんだ

から……」

 なんだか本気で困ったように眉をひそめ―――

「……あ。あ…そ、そっか……」

 美沙もまた、そこで我に返ったように、ソレから手を離しつつ……

「……って、でも……。…ってことは、勇樹くん、またコーフンしちゃってるってコト…?」

「……え゜…っ…?」

 まったくの真顔で尋ねられ、勇樹はマトモに戸惑い、

「……あ…い、いやまあ…そ……そりゃ…その…一応……」

 なんだかマヌケな答えを、歯切れ悪く返す……。

 ――――と、そこで、美沙の表情が一変した。

「…ふぅぅぅぅぅぅん☆」

「……へ…?」

 そのあからさまな表情の変化に、勇樹が驚くいとまもあらばこそ。

「……んっ……」

 美沙はその表情を、例のイタズラっぽい笑みに輝かせ、勇樹の股間から這い出し、

「え…?あ…ちょ…か…河合さん……?」

「えへへへへへ☆」

 戸惑う勇樹を尻目に、自らの身をその広い胸板の上に重ねていき――――――

 また、わざとそこで、むにむに…と自分の胸を押し付けるようにしながら……

「にひひ じゃあ…もっかいしたい……?」

「……………え……っ…?」

 ……いやむろん、それは願ってもないことだが……そうストレートに来られると……

 勇樹は言葉に詰まり……だが、それでも…

「あ…い…いやあの……そ…そりゃ……あ。でも…ほら、河合さん、まだ……」

 なにやら口ごもりつつ…勇樹は、美沙の身体を気遣い――――

 だがしかし……、

「んふふふふ

 軽やかな笑みさえ浮かべて、迫り来る美沙の唇は、もう止められず……。

 そして―――――――

『んあああぁ……

 ――――――薄闇に、響く甘い喘ぎは、ますます熱く…………

 窓の外―――すっかり晴れた星空に、流れて浮かぶ雲の端切れが……

 ……やがていつしか、白み始めても………。

            

(22)ーーエピローグ--へつづく。

 

 

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