しようね☆]U〜てりぶる?ショッピング☆(前編)〜
(1)
「〜♪〜☆」
調子っぱずれな鼻歌交じりに……。
へっへ〜☆
やや品がなく思えるほどにシャツの胸元を大きく開け―――、
俺は、とあるショッピングモールのエスカレーターに乗っていた。
誇らしげに胸を張り、白いシャツの襟から覗くその胸元には、燦然と輝く……白銀のペンダントトップ!
BSフレアーと呼ばれる、ユリの花をデザイニングしたフランスの紋章をモチ−フにした……いやいや、もぉそんなことわどーでもいいっ!とにかく…そう!男の憧れ!まさにいぶし銀!これぞ銀アクセの王様―――!
―――クロムハーツ!!
…………くぅぅぅ〜☆
またちなみに、先月の誕生日、らいかにプレゼントされたものである
もらった直後は、
をを〜っ☆あ…あの憧れのクロムハーツがついに…ついに俺の手に!くぅぅぅ〜☆
…などという思いから、しばらく胸に下げるのももったいなく、飾っておいたのだが、
『なんのために買ってあげたのかわかんない〜!』
と今日までリピートされ続けたらいかのセリフと、さめらやぬ興奮☆もよーやくひと段落したことから、
本日、そのお披露目も兼ねての初外出♪と相成った。
……いやでも、外気に触れてだいじょぶだろーな…?…今日、紫外線もつよそーだし……
まあ、そんな重要ではあるがとりとめもない俺の心配はさておき、
また、外出などといっても、むろんいつものよーに、らいかとのデート☆なのだが、
俺は珍しく、約束の時間よりかなり早く、待ち合わせ場所近くのこのショッピングセンターに来ていた。
なぜなら……
…いやほら…らいかの誕生日はまだだけど……なんつーか、その…この感動を形にして返しておきたい…っつ〜か……☆(^^ゞ
ま…そんなわけで、エスカレーターはやがて、急にもじもじし始めた俺を、女性洋品売り場へと持ち上げていった……。
そして、しばらく後―――
「え…えっ〜と……」
色とりどり…夏を先駆け、軽やかな服を着こなす様々なマネキンを眺めつつ、
「……う〜ん……」
いきなし俺は悩んでいた……。
そう…勢い込んで来たものの、GWにらいかと遊びまくっちゃったせいで、正直言って現在、俺の懐具合は季節を逆戻りしている…。
ましてこのあとはデートも控えてることだし………この予算で、なんとかなるものって言えば……
う…う〜ん……え〜っと〜……
な…な〜んで、女ものってこんなにするんだ?布地なんて、俺の服の半分くらいしか使ってねーのに〜っ。
などと、ともあれ、らいかに似あいそうな服の値段のタグを捲りつつ、驚いたり…目を点にしたり……。
そんなことをやっていると―――
「たけあき…?」
ふと、背後からの女性の声。だが、それはらいかの声ではない。
……え?……あれ?ここ最近、らいかとかーちゃん以外で、俺のことを呼び捨てにする女の知り合いは、
いねーはずだけど……
などと思いつつ振り返れば……
「へっへ〜☆ひさしぶり〜☆ん…?彼女へのプレゼント?」
「あ……な〜んだ。真紀姉か……」
上原真紀…3つ年上の俺の従姉である……。
シックなスーツに身を包み、メガネをかけた―――まあ、黙って立ってりゃ、いわゆる知的美人なのだが…
いや…よそう…今こんなとこで彼女の詳細説明なんぞしてるヒマはねーし……なにより、わざわざ命をちぢめることもないだろう……。
ともあれ…
「ん〜?彼女へのプレゼント選び?」
メガネの奥で好奇の瞳を輝かせつつ尋ねる真紀ねーちゃんに、
「あ…ああ、まーな…そんなとこ……」
比較的冷静に、正直に答える俺。
ちなみに、無意味にテレなんぞをみせて、むやみにツッコまれてるヒマもないからである。
と、そこで……俺はふと思いつく。
……あ。でも…そっか……コイツもいちおー女なんだよな……相談してみる価値はあるかも…。
「あ……あのさ、真紀ねーちゃん…?」
「ん…なーに?」
「いや…実は…その…かくかくしかじかで……」
「…ふんふん……へえ〜…☆…そっか……でも…あんたもけっこー気が利くコになったのね〜☆」
とりあえず、状況説明する俺を、品定めするような目で見つめつつ言う真紀姉。
「い…いや、それわいーから……なんかいいアイディア…ない…?」
「あるわよ。そーゆー事情(情けない経済状態)なら、あげるものは、ひとつしかないでしょ☆
ま…あたしにまっかせなさい☆」
メガネをキラリと輝かせ、自信満々…会心の笑みを浮かべつつ、真紀姉は俺の手を取る。
お…おいおい…ホントにだいじょぶなんだろーな…?
そんな不安を胸に浮かべている間もなく。
俺はぐいぐいと、手を引く真紀姉の後についていった……。
―――で………。
「…え゛……?あ……こ……ココ…で…?」
「そーよ。あんたのそのナサケない経済状態で、かつカノジョへの誠意を見せられ、同時に最も身近に置いてもらえる、カレシからの贈りもの…つったら、やっぱこれっきゃないでしょ?」
いや…確かになんとなく的を得ているような気もするが…
ともあれ、よく分からない理屈をぶち上げ、辺りを見回す真紀ねーちゃんと、
「…………。」
目のやり場に困り、頬を赤らめ、顔を伏せ……ほとんど視界を得られない俺がいるのは、
「………。」
そー。言わずと知れた女性下着売り場……。
ある意味、男を寄せ付けない、女性だけの聖域とも呼べる―――その中心部である。
ちらり、目線を上に上げれば、
ココだけ照明のワット数がちがうんではなかろーか、と思えるほど、まばゆいほどに色鮮やかな…また形状様々な『華』の数々が展示され…………(汗)。
い…いや確かに、らいかと、こーゆー売り場の前を通って…「お〜☆これいーじゃん〜☆」などと、言ったりすることは、あるのだが……それもまたテレ隠し…だし……こんな思いっきり中心部に入ったのは生まれて初めて…で…。
むろん…男は俺ひとりだし……その…なんてゆーか………
と…とにかくっ!メチャクチャ恥ずかしーんですけど……これ…。
う〜、隣接する子供服売り場が、やけに遠く感じる……。
「さて……っと、あ…ほら〜、なに下向いてつったってんのよ?どんなのにすんの?」
そんな俺の心情を知ってか知らずか、きびきびとした口調で俺を促す真紀ねー。
……いや…そ、そんなこと言ったって……。
「あ…ああ、で…でもその……真紀ねーが見立ててくれんじゃねーの……?」
「ばぁか。何言ってんのよ?あ・ん・た・のお礼の気持ちを示すんでしょ?んなことしたら、ぜんぜんイミないじゃん!」
いかにもそれが愚問であるかのように、俺の言葉を一蹴する真紀ねー。
……い、いやまあ…確かにそのとーりなんだけど……
とてもじゃねーけど、いろいろ選んでられるジョーキョーぢゃねーぞ……っと、ん…?
……あ…!…アレ…なんかよさげかも……?
苦し紛れに視線を泳がせた俺の目に、輝く純白の上下を着こなすマネキンが目に留まった。
シンプルだが、要所要所にさりげなく凝ったデザインが縫いこまれ、可愛らしさとオトナの色っぽさを併せ持ったよーな……ブラ&ショーツ☆
そう、その横を、こちらに向かって歩いてくるらいかの姿と、ぴったりイメージが合致するよーな……。
……って。
…………………………………は………?
あたかも、想像の中から抜け出してきたような、そんならいかの登場に………
「………………」
しばし、俺の思考は、完全にフリーズした………。