しようね☆]V〜てりぶる?ショッピング☆(後編)〜
(1)
そして、
当初の予定から完全におっぱずれた、俺の疲れた一日は………
「あ〜☆これもかーい〜っ♪」
………まだ終わっていなかった………。
まさに、水を得た魚…気まぐれな熱帯魚のようにフレアスカートをひらひらなびかせ、
「…ねーねー☆コレも買っていいよね〜?」
ランジェリーコーナー内を自由自在に泳ぎ回るらいか。
そして、その後に続くは、
「…………。」
もはや溺死寸前である…俺…。
いやもぉ…酸欠著しく、あまり良く覚えてないのだが―――、
この時点で、財布に突っ込まれたカード明細の総計は、あまりシャレのならないよーな金額になってるよーな気がする……。
また、あまりの恥ずかしさに、これもよく覚えてないのだが、
まさに死ヌ思いで、キレイにラッピングしてもらったパールホワイトの上下を真っ赤な顔で、らいかに手渡し、
「よしよし…えらいね〜☆よくできました〜☆」
などと、頭を撫でられたのが、遠い昔のよう―――いや…実際、あれから、かなり時間は経過している。
そう……『馬にニンジン』・『蟻にお砂糖』という言葉があるが、
『らいかに下着☆』もまた同義語だとゆーことを、俺はすっかり忘れていたのだ。
ともあれ、
「あ…ちょっとすいませ〜ん☆」
「はい…何か?」
「いや…ちょっと……コレなんですけど……このストラップのとこ……」
またも、お店のおねーさんを捕まえ、幾度目かの熱い下着談義を交わし始めたらいかを遠目で見つつ、
「……はぁ…。」
力なく……俺はがっくりと肩を落としていた。
うららかな初夏の…
もはや、午後の時間はとっくに過ぎ、夕方に差しかかろうとする、『聖域』…その中心部にて………。
かくして、
デートのほとんどをランジェリーコーナーで過ごした俺たち……。
…な、なんだったんだろう……今日わ……。
などと思いつつ、でっかい紙袋をぶら下げ、俺は疲れきった足取りを帰宅の途に向けていた。
「〜〜☆〜〜♪」
軽やかな足取りで、終始ゴキゲン☆のらいかを隣に……。
………まあ……もぉなんでもいーけど………。
そして、その後、
いつものよーに、俺の部屋に帰り着き―――、
「いただきま〜す☆」
「いただきます」
…ぱくぱく……
……かちゃかちゃ…
…むしゃむしゃ……
「はぁ〜、うまかった〜………ごちそーさま〜☆」
やはりいつもよーに、その夕食も終え……俺は、満腹感とともに、いつもよりややおーげさに、言葉を吐き出した。
そう…帰宅までのゴキゲンぶりとは、打って変わり、帰宅後…特に食事中いつもは、うるさいぐらいに元気にしゃべりまくるらいかが、なぜか……
「おいしかった……ごちそーさま」
終始言葉少なだったからである。
…といっても、キゲンが悪いとか落ち込んでいる…といった風ではなく……
さっきから幾度となく……、
「……たけあき……?」
「……ん…?あ、ああ…なに……?」
「……ふふ……なんでもない…☆」
なにやらどこか、艶っぽい瞳で俺を見つめては、意味ありげな笑みを浮かべてくる…。
「……な…なんだよぉ……さっきから……」
そのたびに、なんだか俺はテレくさくなって、視線を逸らしたりしてるのだが…
……う…う〜〜〜ん……な、なんだろ……妙にドキドキ☆する……。
「…んふふ……なんでもないの…☆……じゃあ…らいか着替えてくるね…☆」
「え…ああ……うん……」
言って席を立ち、俺の横を通り過ぎて寝室へ向かうらいかに、
俺は、ぎくしゃくしながら答える。
通り過ぎた際に残していった、いつもと変わらぬはずの、甘いらいかの香りに、なぜか激しくどぎまぎしつつ…。
そして……
…かちゃ……
着替えを終え、寝室から出てきたのは―――
『さ〜いつものよーに、TV見ながら寝るからあとでだっこして連れてってね☆』然としたパジャマ姿のらいか―――ではなく……
「………へ?」
思わず目をまるくする俺。
いや…コンタクトをメガネにしているところは、確かに寝姿なのだが、
「え…あの…ら…らいか……」
髪をアップにまとめ、真っ白なブラウスに短い黒のタイトスカート姿は、どー考えても寝苦しいと思うのだが……。
…い…いやしかし………
いつもは髪を下ろしているためあまり見ることのできない、らいかの白いうなじ…
数才歳が上がったよう…などと言ったら本気で殴られそうだが…そーゆー意味ではなく、
明らかに、オトナの色香を漂わせたメガネの奥の…『熱い氷』を感じさせる艶っぽい微笑。
そして、やや開け過ぎたシャツの襟元に浮び上がる真っ白な胸の谷間。及び…
黒いタイトスカートから抜き出した、らいかも俺も自慢の長く真っ白な両足…。
「…………。」
そんな、ビミョーにいつものらいからしからぬ、シックなそのいでたちは……なんとゆーか…妙にいつもとは違う色っぽさをかもし出しており……
「……え…?…あ……」
……がたっ。
思わず、持ちかけたタバコをぽろリと落とし、椅子から立ち上がる俺……。
「…………。」
また、どーゆーつもりか知らないが、ある意味、そんな興奮総攻撃と呼べるようならいかのいでたちに、むろん瞼の開きまくった俺の両目はクギヅケとなり、
「……ごく……」
期せずとも、鳴ってしまう俺のノド……。
一方、そんな俺の激しい動揺を知ってか知らずか、
「……くすくす…☆」
らいかは、嘲るような笑みを浮かべて、立ち尽くす俺の横を通り過ぎ、リビングのソファへ……
「……………」
その艶っぽい視線を俺に固定したまま、ゆるやかな物腰で、ソファに身を預け……
きしっ。
静まり返った部屋の中に、軽い軋み音が響く。
「………あふ…っ………」
そしてらいかは、ひと息……気だるいような甘い吐息を吐きつつ、
「………☆…」
ややうつむきかげんの上目づかいで、『熱い氷』と呼べるような冷笑を俺に向け、
……え………?……あ…☆
その長くすらりと伸びた足を、これ見よがしに組み替える。
お…おおおおおおおおお〜☆
……い、いや…なんとゆーか……。
なんとも堂に入った、一連のらいかの仕草に、思わず胸のうちで喝采を上げてしまう俺。
またさらに、らいかの……俺を見つめるその真紅の唇が、妖艶な笑みの形にゆがみ……
「……ふふ…………」
ど…どっき〜んっ!!
―――頭のてっぺんから足のつま先まで―――
強烈な電撃が俺の身体を駆け抜け、
「…………!………」
俺は完全に金縛り状態……直立不動の姿勢のまま、その場に硬直し―――また…
すすっ。
絶妙のタイミングで、再度組み替えられた真っ白な太もも…さらにその奥に覗く、やや陰りを帯びたパールホワイトに……
…う…っ…!…あ…。…や…やべ……!
言うまでもなく、また別のトコロも激しく硬直する。
ちなみに、今俺がはいてるのは柔らかなスゥエット地の短パン。
にわかに隆起したその変化は、あまりにも顕著で……むろんらいかは気付いたはずだが……、
「くすくす……☆どーしたの?」
あくまでオトナの笑みを崩さず、からかうような…それでいて優しい微笑を浮かべるらいか。
またそんならいかのリアクションに、俺の動揺にさらに拍車がかかり…
「え゛……あ…ああ……いやその……」
真っ赤な顔で言いよどみつつ…また、もはや隠すのはムダだとわかりつつも、
らいかに視線を固定したまま、身体を『く』の字に折り曲げ、背後の椅子に腰掛けよ―と……
だがしかし。
「……へ……?」
そう…俺は自分でも気付かぬうちに、2,3歩らいかに向かって歩み寄っていたらしい。
……俺の腰掛けようとしたところに、椅子はなく……
………すかっ………。
次いでにわかに、俺の視界の中で部屋の景色が空転し…。
ぐるんっ!
「え…あ……おわぁぁっ!!」
ずっで〜〜〜んっ!!
次の瞬間、俺は盛大にひっくり返り、激しくその背をフローリングの床に打ち付けていた。