甘い欧州旅行
第五章 |
激夜 |
(1)
スイスを発った俺たち。 一行を乗せたバスはその後ドイツの国境を越え、速度無制限の高速道路、アウ バーンを通り、ドイツ最初の宿泊地、『ローデンブルグ』に到着した。 「へぇーっ☆ いいなぁ…この感じ…」 『ローデンブルグ』は中世の町並みがそのまま残ったような小さな町で、この趣溢 れ 少々、躍り過ぎたようだ。 皆で繰り出したロールプレイングゲームに出てくるような酒場にて、俺はついつ い い、 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「……うーん…」 軽い頭痛とのどの渇きで、目を覚ました俺。サイドテーブルの時計に目をやれ ば、 一瞬、朝まで眠ってしまったかと驚いたが… ほっ。 窓の外、月明りを見て安堵の溜め息を漏らす。 …にしても、喉がカラカラだ……おっ。 喉のあたりを押さえつつ体を起こすと、ドレッサーの前の机に氷が解けて水滴を たくさんつけた一杯のグラスが目に入った。 俺はすぐさまそれを手に取ると、アルコールではないことを確かめ、一気に喉へ 流し込んだ。 う、美味い…! ほどよく冷えた氷水は渇き切った俺の喉を心地好く潤していく。まるで身体中の 細胞一つ一つに染みわたっていくようであった。 「ん…? 何だこりゃ…?」 喉の渇きもひと段落し、煙草に火でも点けようとしたとき、俺はグラスの脇に置か れた一枚のメモに気付いた。 《さやかさん達と町へ出る…どこへいくかはわかんないから、お前は部屋でおとな しく …ふーん、凌の奴、なかなか気が利くな。……にしても、凌のキャラに、 はあと マークはどうかと思うぞ。俺は………。 ともあれ、俺は手ぐしでさっと髪を直すと、部屋の出口へと向かった……
「激夜」(2)へつづく。 |