甘い欧州旅行

第五章

激夜(バーニングナイト・イン・ローデンブルグ)

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「洋子さん、いる…?」

ノックと同時にドアの外から声を掛ける俺。

 酒場同様、RPG然としたレトロなホテルなので、部屋の中までも声が届く

はずである。

「…あら、基明クン? あ、今開けるわ…」

 ほらね。

「お邪魔しまーす」

「あはは。ずいぶん、酔っぱらったみたいね。もう大丈夫なの?」

「…うん、少し眠ったから…もう平気。でも、みんなに置いてかれちゃったよ

…」

 俺は後ろ手にドアを閉めつつ、少し困ったような顔をしながら言う。

「ははぁん? なるほど。それでヒマになったから、あたしンとこへ来たって

いうわけね?」

 ……さーすが洋子さんよくお分かりで……なんてことは、もちろん言えず、

「……え? ち、ちがうよ」

 やや意地悪い顔で言う洋子さんに、俺は少し慌てた様子で答えた。

「ふふーん? ま、いいわ。でも、ちょっとその辺に座ってて。今、明日の予

定の確認してるとこだから…」

 笑みを浮かべた軽い疑いのまなざしで俺の顔を覗き込み、洋子さんは、く

るりと背を向けると、なにやら書類のたくさん乗った机に戻った。

 えー? ……ま、いいか、しごとする気なくさせちゃえばいいんだし………

 それに、洋子さんもキライな方じゃなさそうだし、すぐにノってくるでしょ

…☆

 などと思いつつ、俺は、背後から洋子さんの肩を抱き、首筋に唇を寄せて

いった。

「あんっ!」

 刺すような刺激で、ピクリと身体を震わせる洋子さん。

 だが……

「ダーメ。仕事が終わるまで待って」

 直ぐに取り直し、振り向きざまに俺の鼻の頭を軽く撫で、その行為を制して

しまった。

 ちぇ、結構折り目筋目ははっきりしてんでやんの……

 出鼻をくじかれ、少し憮然とする俺。だがむろん、こんなもので引き下がん

ねーよ。

「いいよ。洋子さんがソノ気になるまで、こうしてるから……」

 と、再び、俺は洋子さんの首筋に唇を近付ける。

「……ふん。勝手になさい…」

 それでも、洋子さんはかまってられない、とばかりに軽い溜め息ひとつつ

き、俺を無視して、仕事をし始めた。

 ……あっそ。んじゃ、お言葉通り勝手にさせてもらいますか。

 ちゅ………ちゅ………ちゅ……………

 だが、首筋のキスくらいでは、洋子さんは動じる様子を見せない。

 ……ふ、ふーん、さ、さすが洋子さん。それじゃ……

 むぎゅ。

 俺のキスに動ぜず、仕事を続ける洋子さんに、俺は両手で洋子さんの乳房

をすくい上げるように掴んだ。

 ブラウス越しの俺の掌に豊かな弾力が伝わる。

「…ん…っ!」

 お……

 さすがに身体をぴくりっと震わせ、反応を見せる洋子さん……だが、直ぐに

取り直し、努めてそれを無視するように変わらず仕事を続けている。

 くそ……けど、いいよ。そういう気なら……

 俺はその感触を存分に楽しむかのように、十本の指を巧みに動かして弄ん

び……

「ん……ぁ………」

さらに中指と薬指を使って、突起し始めた先端を捜し出すと、少し力を込め

てそれを挟みこんだ。

「…アッ!? は…ぅ…ぁ…ぁ…」

 この刺激で、ようやく洋子さんは、小さな吐息を漏らす。

「あれっ? 洋子さん、もう感じてきたの? ダメじゃん。お仕事中でしょ?」

 とぼけた口調で、意地悪く言う俺。

 「ば…! な…何言ってンの…!! そんなイタズラで私…が感じるわけない

でしょ!」

 ………あ、そう? それなら……

「…ふーん、そうなんだ」

 意地になる洋子さんに、俺はさらに指先に気合いを入れた。

 そう、洋子さんの乳房がブラウスごと揉みくちゃになるほど。

「……んっ…ふ…ぁ…」

 書類をめくりつつ洋子さんは、わずかながら眉をひそめる。と同時に口元

からかすかな甘い息を漏らした。

 …おーし、もうヒトオシ…かな?

「…ねぇ、洋子さん…このままだとブラウスがぐしゃぐしゃになっちゃうからさ

………こうするよ」

 洋子さんの耳元で囁きながら、俺はなめらかな仕草でブラウスの裾から手

を中へ差し入れた。そして、お腹の辺りですぅーっと指先で円を描き、ゆっく

りと手のひらを登らせていく。

「…ん…ん…あ…あぁ…」

 ピクリと身を震わせ、洋子さんは一瞬そのままの体勢で固まった。

 そして、その間に俺は、指を滑らせるようにようにシルクのブラの上で走ら

せ、たゆんでできたその隙間からするりと五指を潜り込ませた。

「…んっ…ひぁっ……」

 地肌をつたう俺の指の感覚に、息を飲み、洋子さんはさらに大きくぴくんぴ

くんっと身体を震わせる。

 よし!

 俺は、このタイミングを逃さないよう、徐々に固くなりつつあるその突端を

中指と人差し指で強く挟み込み、やわやわと波打つようにその全体を揉みし

だいていった。

 やがて……

「んっ! はっ! ぁ…ぁ…ぁ…あふ…ぅっ!」

 単音節に、息を詰まらせるように声を上げ始めた洋子さん。

 すでに、仕事どころではなくなったようだ。

 その証拠に、今まで軽快なリズムで走っていたボールペンの動きが完全に

止まり、また、それを握り締める手が小刻みに震えている。

「ん…んくぅ……な…何? もとあ…きクン…。ど、どしたの?」

 だが、持ち前の負けん気がこのまま俺の思い通りになるのを食い止めよう

としているのか、それ以上乱れる事はなく、懸命に平静を取り繕おうとしてい

るようだった。

 ちっ、結構しぶといな……

 俺は、なかなか崩れない洋子さんに軽い苛立ちを覚え…

 しょうがない。んじゃ、一気に行きますかね。

 …ついに、スカートのベルトに手を掛けた。

 

 

「激夜」(3)へつづく。

 

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