メイプルウッド・ロード
                     
#2番外編

 〜ムーンライトヘブン☆〜

注:番外編…といっても、コレは言うまでもなく『ジャグジールームの甘い霧☆』の…抜け落ちたワンシーンです(^^;
まだお読みになってない方、そして二人の性格をお忘れになっちゃった方(^^;は、ぜひ
こちらから☆

(1)

 ヒーターが効き始めたばかりの部屋の中は、まだ肌寒く。

 だが―――いや、だからこそ…と言うべきか、

 肩に置かれた智也の手のぬくもりを心地よく感じつつ―――

 伏し目がちなメガネの奥の瞳を左右に……軽く室内を見回す葉月。

「………」

 といっても、多分に持ち主の性格を表すシンプルで小奇麗に片付けられた室内…。

 目新しいものは特になく……

 視線の行方は、おのずと窓際へ―――

 そして、そこには……

 窓から差し込む月明かりを浴び、ぼぅっ…と浮き上がるように照らされたベッド…。

(……あ……。)

 らしからぬ、かすかな動揺を胸に、肩を抱く智也の手に誘われるまま…

 …きしっ。 

 クイーンサイズのベッドは、二人分の体重に小さな悲鳴を上げた。

    

 ……そして……

「な…なんかやっぱり、ちょっと恥ずかしい…わね」

 ひんやりとした感触がつたわるベッドに腰掛けつつ、やや困ったように微笑む葉月。

 自分でも、らしくないな…と思う気持ちが、よけいに頬を染める。

 一瞬遅れて、隣に腰掛けた智也の表情を伺えば……

「ん…じゃあ、やめとこーか」

 絶対わかってるくせに、そ知らぬ顔で、そっけないひとこと。

 まあ…予想通りの彼らしいリアクション――と言えばそれまでなのだが、

「………。」

 なんとなく、妙な…覚えのない腹立ちが葉月の胸に生まれたこともまた事実。

 だがむろん、それを表には出さずに、

「…………言うと思った…」

 葉月は、いつものクールな表情に戻しつつ、呆れたような溜め息交じりに失笑を漏ら

す。

 その刹那。

「……っ!?」

 その瞬間を狙いすましたかのように、迫る智也の唇……。

「…ん…っ…」

 素早くも、だがゆるやかに、唇を奪われ………

「…ん………んんんっ………」

 落ち着きかけた鼓動がにわかに再燃し……また、こんな児戯に等しい智也の『策略』

に、こうもあっさりひっかかってしまった自分への焦りと悔しさが生まれる。

 ……だが、同時に。

 それに反して身体は、過剰な興奮と奇妙な期待に満ちていき……

「…あ…あふ…っ……」 

 期せずとも、甘いため息を漏らしてしまう葉月の唇。

(も…もう……しょうがないわね…)

 そんな、あきらめに似た感情で心の乱れを取り繕い…葉月は、ひとまず敗けを認め

て、智也の流れに乗っていくことにする……。

 そして……

「…ん………ぅ……」  

 あわせた唇の上下を食むように……なおも続く智也のキス。

 優しくも甘いくちづけに、とろけるような感覚に包まれる一方、

「…ん…ん……ぁ……」

 どことなくじれったさを感じ、葉月は自ら舌を差し入れ……

 だが、

「……?…」

 うっすらと開いた智也の片目が、『してやったり』の様相を示しており、

「……?んん…っ!」

 驚き半分悔しさ半分。慌てて舌を引っ込める葉月……だがむろん、智也はそれを逃さ

ず、

 ちゅくっ……。

 滑らかに吸い込まれた舌が、智也の口内に囚われる。

 同時に……その動きで葉月の唇は自然と大きく開かれ…

「……んぁ……ん……ん…」

 ここぞとばかりに、囚われた舌の上を滑るように、智也の舌が潜り込んでくる……。

 この時点で、よーやく葉月は舌が戻せるも、ときすでに遅し。

 差し込まれた舌に、歯の裏側から上あごを…つつぅ〜となぞられ、

「ん…っ!?」

 ぞくぞく…っ☆

 一瞬の痺れるような感覚に、全身の力が抜ける…。

(や…な……なんか…ホントに…くやし……)

 その思考が、すでにいつもの葉月ではないのだが、取り乱す思いにそれに気付かず。

 ともあれ、ペースを取り返そうと…舌で押し返すことを試みるも、

「ん…んむ…?ぅ…んっ…!」

 巧みにうごめく智也の舌に、文字通りあっさり絡め取られ……なおも口内をいいように

弄ばれる。

 やがて…

「ん…ぁ……んふ…ぅ…ん…………」

 ぼ〜っと、頭に霞がかかっていくような高揚感。

 身体の中心で何か熱いものが溢れいくような感覚。

(や…だ……キスだけで……こんな…に…なるの…?)

 むろん、智也のテクニックは及第点以上のなかなかのものだが、それだけではない。

 このくらいのこと…少なからず経験は、あったはず……。

 じゃあ、なぜ…?なにがこんなに…?

 驚きと焦燥に包まれつつ、努めて冷静に、葉月は自分自身に問い掛ける。

 だがその一方で、今まさに、燃え上がろうとする身と心を、とどめることは出来ず、

「ん…ぅっ……」

 結局、答えの見出せぬまま、

 また、いっそう甘さの濃度を増していく智也のキスに、葉月の熱い想いはさらに

制御できなくなり……

「ん……ぁ……ぁ…ふ……ぅ…ん……」

 求め訴える思いのままに…葉月は、無防備な唇をさらけ出し、智也の身体にしなだり

かかっていった……。 

 

(2)へつづく