甘い欧州旅行

「甘美な光に包まれた女神(ヴィーナス)」

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 白いヴェールを被り、雄々しくも聳える巨峰群。また、その雪さえも積もらぬ厳しい

壁、アイガー北壁……

 それは、寝ぼけ眼の俺と凌の目を覚ますには十分すぎるほどの景観であった  俺

たちは、それぞれ熟女二人の前でさらした己の未熟さを反省しつつ、新たな決意を

胸に荘厳な山々を後にした。

「……何が『新たな決意』だよ? だいたい、基明…何でお前、俺が晒した醜態のこ

と知 ってんだよ…? 俺、言ってねえぞ。そんな自分の恥。」

 ……………。ま、いいじゃねえか。話には筋道ってもんがあんだから。

「ふん、そんなもんかね。」

 そうそう。ほら、今日の泊まるトコ、『モントルー』が見えてきたぜ。

 

第四章 甘美な光に包まれた女神(ヴィーナス)

(1)

 世界有数のリゾート地、レマン湖のほとりに佇む街、モントルー。また、その中でも

一際豪華なホテル、『モントルーパレス』が俺たちの泊まるホテルであった。

「すっげー! 今日、ここ泊まンの…洋子さん?」

「そうよ、シーズン中はとてもじゃないけど、今はシーズンオフで格安なの! 他の場

所もそうだけど、この時期のヨーロッパはいいところに泊まれるから、仕事とは言

え、あ たしも楽しみなの!」

 やや興奮ぎみに俺が尋ねると、半ばはずんだ調子で答える洋子さん。

……あは☆ いかにも洋子さんらしいよな。

 『モントルーパレス』ロビーにて。  俺たちはいつものように、部屋の割り当てをさ

れ、洋子さんから今後の説明を受けていた。

「はい、今日はこのあとすぐに食事になります、荷物を置いたらなるべく早くここに来

て下さい。それから…っと、七時半から表の通りでパレードがあるそうですから、興

味のある方は、御覧になると楽しいですよ。」

「へええ? おもしろそうじゃん…行くか、基明ィ? 」

「…え? オレいいよ…あんまそういうの興味ないもん。だいたい、お前、知ってんだ

ろ? 俺はナンパ以外で人ゴミん中行くのは、嫌いだって……」

 俺の性格を知ってて言う凌に、うんざりしながらいう俺。

 …ったく、やな奴だろ? ホントに……

 するとそこへ、

「あはは。基明クンと凌クンって、ホント、正反対の性格してるのね。」

 俺たちの背後から、割り込むように美恵さんが顔を出した。

 …ま、女に手が早いの以外はね……

 おそらく、凌も同じ事を考えたのだろう。そっぽをむいて、意味深な笑みを浮かべ

ていた。

*     *     *      *     *     *     *      *

 夕食後。

 めいめいにパレードを見に行く一行を尻目に、俺は一人湖畔へと足を向けていた。

 鼓笛隊の陽気なメロディーが徐々に遠ざかり、風が奏でる湖水の波音が耳に着く

ようになったころ、俺は歩みを停めた。

「・・・・・・」

 目の前には、月明りに照らされ、うっすらと輝くレマン湖の水面。

 ……………ぼっ

 一瞬、わずかな炎が俺の顔を照らし、その後、立ち上ぼった煙が闇に包まれた俺

の姿を ぼんやりと浮かび上がらせた。

 ポケットに手を突っ込んだまま手頃な岩の上に腰掛けると、ひんやりとした岩の地肌が伝わってくる。

 このままじっとしていると、自分も岩の一部となってしまいそうに思えた。

 そのとき……

「……モトアキクン……」

 突然聞こえた、自分の名を呼ぶ声に驚き、背後を振り返る俺。

だが、そこには押し黙る 闇の存在しかない。

「気のせい…か?」

 俺は首を傾げながら、再度湖面に向き直る。が、今度は隣に立つ人の気配を感じ

た。

「だ…誰…?」

 驚いてそう声を掛けると、そこには声を押し殺して、くすくすと笑う美恵さんの姿が

あった。

「…ち。何だよ、美恵さんか…」

 軽く舌を打ち、安堵の息を漏らす俺。

「アハハ…なーにカッコつけてんの? でも…ま、ちょっとはサマになってたカナ?」

 それに対し、美恵さんは悪戯っぽく笑い、例によって俺をからかう。

「あ…あのねぇ、別に美恵さんに見せるためにこうしてたんじゃ……、」

「んふふ…テれない、テれない。ホント、カッコよかったんだから☆」

 …あーあ。せっかくのムードが台無しだよ。よーし、こりゃ、責任取ってもらわなき

ゃな………

「あ、そう…また子供扱い…? 言っときますけど…昨日ベッドで子供扱いされたの

は一体、誰でしたっけェ…?」

 意地悪い笑みを浮かべ、かたわらに寄って、俺は美恵さんの顔を覗き込む。

「……!? う…うるさいわね! 知らないわよ、そんなのっ!」

 一瞬の沈黙の後、美恵さんは踵を返して、俺に背を向けた。

 柔らかな髪がふわりと舞い、甘酸っぱい美恵さんの香りが俺の鼻をくすぐる。

 …へへ。ホント美恵さんって、かーわいい☆

 でも、こんな状況で俺に背中を見せるな んて……まだまだ甘いな。

 俺は迷うこと無く、美恵さんの肩に手を回し、抱き寄せた。

「アッ…!?」

 美恵さんの身体はくるりと半回転し、俺の腕の中に包まれる。

 湖水に反射する月明りをバックに、二つの影が一つになった。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 

……で、このままなら、ラブストーリーの美しいワンシーンが「引いて」く場面なんだろ

うが、あいにく俺はそんな物を演じるつもりはない。

 ま…あたりまえだわな。

「あ…? ちょ…ちょっと! や…やだ、こんなところで………」

 戸惑う美恵さん。俺の手がセーターの中に潜り込んできたからである。

「や…も…基明クン! あんっ…あ…は……ぁ…あ…たしの部屋で……しよう…よ」

 肌をつたう俺の指先から、昨日の興奮を思い出したか、早くも吐息を漏らす美恵さ

ん。

「ん…? いいよ。……でも、美恵さんがホントに我慢できなくなったらね…」

 さらに意地悪く言うと、俺は美恵さんのセーターをたくし上げ、両手を乳房に這わせ

た。

「や…、だ…ダメ……さ…寒い…でしょ。あ…あんっ…は…あぁ……」

「ん…? …のわりには、顔が赤いけど。美恵さん?」

「ば…ばかぁっ! こ…れは、キミのせい……あ…はあっ、く…っ!」

 からかいつつ、大胆にも的確に美恵さんの感じるポイントをまさぐる俺。

 一方、美恵さんは俺に掛ける非難の言葉に、喘ぎ声が混じってしまい、それを耐え

るために、口を手で押さえ、人差し指を噛んで、両目を堅く閉じる。

 …ふーん、でも、そういうの見ると、どうしても声上げさせたくなるんだよなあ……

 思い立ったら、即実行☆。俺は下着越しに美恵さんの乳房の突端を軽く摘み上げ

た。

「……ぅぁッ!? んふっ! はっ…あぁっ!」

 さすがに我慢し切れず、美恵さんは可愛い悲鳴を上げる。

「あ、駄目だよ! 美恵さん、誰かに聞かれちゃうよぉ……」

 わざとらしく、慌てた様子で周囲を見回す俺。

「あぁぁっ…ん、だ、だって…アアッ! あふっ、も…もう、いじわ…る……」

 とぼけた俺の態度に業を煮やしたか、美恵さんはしなだれかかるように俺へ身体

をあずけてきた。

 潤んだ瞳、上目使いですがるように訴える仕草がとても可愛い。

 ……っと、見とれてる場合じゃない。

 俺は自分からも美恵さんを抱き締め、しっかりとその身体を支えながら、右手で美

恵さんの背中から滑らかな曲線を描く腰のラインを辿った。

 丸みを帯びた柔らかな弾力を楽しみつつ、さらに手を下へと這わせ、閉じた脚の隙

間から指を差し入れた。

「んん…っ!? くぅぅぅ…ん…」

 ジーンズ越しに刺すような刺激が走ったのだろう、美恵さんはくぐもった声で鳴く。

 そして、背後から股間をまさぐる俺の手をつかみ、すっかり上気した顔を俺に向け

た。

「や…っ…ああっ! はっ…はずか…しい、お…お願い…、も…もう…ダ…メ…」

 熱い吐息が幾度も漏れ、美恵さんの顔の周りの空気が白く染まる。

 …ま、こんなとこかな……

 俺は満足げに微笑み、美恵さんの要求を飲むこととした。

「しょうがないなぁ…じゃ、戻ろ…」

 

「甘美な光に包まれた女神」(2)へつづく。

 

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